1. 単回投与時の薬物動態1)
健康成人男子を対象に20mgを絶食下及び食後に単回投与した時のボノプラザンの薬物動態学的パラメータは下図及び表1のとおりである。
2. 反復投与時の薬物動態2)
健康成人男子を対象に10mg又は20mgを1日1回7日間反復投与した時、投与7日目のボノプラザンのAUC(0-tau)及びCmaxは投与量の増加に伴い増加し、これらの増加の程度は投与量比をわずかに上まわる。また、ボノプラザンの血中濃度のトラフ値は、投与3日目から7日目まで一定であり、投与3日目までに定常状態に達していると考えられる。さらに、ボノプラザンのAUC(0-tau)及びT1/2に関する蓄積性評価の結果から、反復投与時のボノプラザンの薬物動態に時間依存性はないと考えられる。投与7日目のボノプラザンの薬物動態学的パラメータは表2のとおりである。
3. 蛋白結合率3)
[14C]ボノプラザンを0.1~10μg/mLの範囲でヒト血漿に添加した時の蛋白結合率は、85.2~88.0%である(in vitro)。
4. 代謝4~7)
(1)
ボノプラザンは主としてCYP3A4で代謝され、一部CYP2B6、CYP2C19及びCYP2D6で代謝される。また、硫酸転移酵素SULT2A1でも代謝される(in vitro)。
(2)
ボノプラザンは、CYP2B6、CYP2C19及びCYP3A4/5に対して時間依存的な阻害作用を示す(in vitro)。また、ボノプラザンは、濃度依存的なCYP1A2誘導作用をわずかに示すが、CYP2B6及びCYP3A4/5誘導作用はほとんど示さない(in vitro)。
5. 排泄8)
外国人健康成人男子を対象に放射性標識体(ボノプラザンとして15mg)を経口投与したとき、投与168時間後までに、投与された放射能の98.5%が尿及び糞便中に排泄される。このうち、67.4%が尿中へ、31.1%が糞便中へ排泄される。
6. 肝機能障害のある患者における薬物動態9)
肝機能正常者、並びに軽度、中等度及び高度肝機能障害のある患者を対象にボノプラザンとして20mgを投与した時の薬物動態に及ぼす肝機能障害の影響を検討した外国で実施した臨床試験において、ボノプラザンのAUC(0-inf)及びCmaxは、軽度、中等度及び高度肝機能障害のある患者では肝機能正常者と比較してそれぞれ1.2~2.6倍及び1.2~1.8倍高い。
7. 腎機能障害のある患者における薬物動態10)
腎機能正常者、軽度、中等度及び高度腎機能障害のある患者、並びに末期腎不全(ESRD)患者を対象にボノプラザンとして20mgを投与した時の薬物動態に及ぼす腎機能障害の影響を検討した外国で実施した臨床試験において、ボノプラザンのAUC(0-inf)及びCmaxは、軽度、中等度及び高度腎機能障害のある患者では腎機能正常者と比較してそれぞれ1.3~2.4倍及び1.2~1.8倍高く、腎機能の低下に伴い増加し、また、ESRD患者におけるAUC(0-inf)及びCmaxは、腎機能正常者と比較してそれぞれ1.3倍及び1.2倍高い。
8. 薬物間相互作用
(1)
ボノプラザン、クラリスロマイシン併用時の薬物動態11)
外国健康成人男子を対象に1日目及び8日目にボノプラザンとして40mgを朝食30分後に単回投与し、3~9日目にクラリスロマイシンとして500mg(力価)を1日2回、朝夕食30分前に反復投与した試験の結果、ボノプラザンのAUC(0-inf)及びCmaxは、単独投与時と比較してクラリスロマイシンとの併用投与時に1.6倍及び1.4倍増加する。
(2)
ボノプラザン、アモキシシリン水和物及びクラリスロマイシン併用時の薬物動態12)
健康成人男子を対象にボノプラザンとして20mg、アモキシシリン水和物として750mg(力価)及びクラリスロマイシンとして400mg(力価)の3剤を同時に1日2回、7日間併用投与した試験の結果、アモキシシリン未変化体の薬物動態に及ぼす影響は見られないものの、3剤併用投与によりボノプラザンのAUC(0-12)及びCmaxはそれぞれ1.8倍及び1.9倍増加し、クラリスロマイシン未変化体のAUC(0-12)及びCmaxはそれぞれ1.5倍及び1.6倍増加する。
(3)
ボノプラザン、低用量アスピリン又はボノプラザン、非ステロイド性抗炎症薬併用時の薬物動態13)
健康成人男子を対象にボノプラザン40mg、アスピリン100mg又は非ステロイド性抗炎症薬(ロキソプロフェンナトリウム60mg、ジクロフェナクナトリウム25mg又はメロキシカム10mg)を併用投与した試験の結果、ボノプラザンの薬物動態に及ぼす低用量アスピリン又は非ステロイド性抗炎症薬の影響、及び低用量アスピリン又は非ステロイド性抗炎症薬の薬物動態に及ぼすボノプラザンの影響について、いずれも明らかな影響は見られなかった。
表1
投与条件 |
絶食下 |
食後 |
Tmax(h) |
1.5(1.0,3.0) |
3.0(1.0,4.0) |
Cmax(ng/mL) |
24.3±6.6 |
26.8±9.6 |
T1/2(h) |
7.7±1.0 |
7.7±1.2 |
AUC0-48(ng・h/mL) |
222.1±69.7 |
238.3±71.1 |
12例の平均値±標準偏差(ただし、Tmaxは中央値(最小値,最大値))
表2
投与量 |
10mg |
20mg |
Tmax(h) |
1.5(0.75,3.0) |
1.5(0.75,3.0) |
Cmax(ng/mL) |
12.0±1.8 |
23.3±6.6 |
T1/2(h) |