与しないこと。〔動物実験(ラット)で催奇形作用、また、難産及び周産期死亡が報告されている。〕
2.
本剤投与中は授乳を避けさせること。〔母乳中へ移行するとの報告がある。〕
小児等への投与
低出生体重児、新生児又は乳児に対する安全性は確立していない(使用経験が少ない)ので、適応患者の選択を慎重に行い、投与する際には患者の状態を十分に観察すること。
過量投与
徴候、症状
悪心・嘔吐、傾眠、頭痛、頻脈、血圧上昇、腎機能低下等
処置
シクロスポリンの血中濃度と症状の程度に相関性がみられるので、血中濃度をモニターし、必要により対症療法を行う。シクロスポリンは透析によりほとんど除去されない。
適用上の注意
1. アンプルカット時
本品はワンポイントカットアンプルであるが、アンプルのカット部分をエタノール綿等で清拭してから、カットすることが望ましい。
2. 輸液容器・輸液セットの使用時
(1)
ポリ塩化ビニル(PVC)製の輸液容器・輸液セットの使用は避けること。〔シクロスポリンはポリ塩化ビニル製の容器・器具に吸着し、また、本剤に含まれるポリオキシエチレンヒマシ油によってポリ塩化ビニルの可塑剤であるジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が溶出する。〕
(2)
ポリカーボネート製の輸液セットの使用はできるだけ避けること。使用する場合には、三方活栓や延長チューブ等のコネクター部の監視を十分に行い、ひび割れが確認された場合は、直ちに新しい製品と交換すること。〔本剤はポリオキシエチレンヒマシ油及びエタノールを含有しているため、ポリカーボネート製の三方活栓や延長チューブ等を使用した場合、通常の100倍希釈で、1日目よりそのコネクター部にひび割れが生じるおそれがある。これにより液漏れ等が発生し、必要な投与量が確保されない可能性がある。なお、濃度が高いほどひび割れは発生しやすく、また過度な締め付け及び増し締め等は、ひび割れの発生を助長する要因となる。〕
3. シリンジポンプ使用時
本剤をシリコンオイルが塗布されたシリンジ内で希釈しないこと。〔本剤の希釈液がシリコンオイルと接することで浮遊物がみられたとの報告がある。〕
4. 滴下制御方式の輸液ポンプ使用時
滴下制御方式の輸液ポンプを使用すると、ポンプの設定値より実際の液量が少なくなるので、正確な投与を行うには、適正な流量に補正する必要がある。〔本剤の添加物であるポリオキシエチレンヒマシ油の界面活性作用により、点滴筒内の一滴の大きさが小さくなると考えられる。〕
その他の注意
1. 循環器障害
本剤との因果関係は確立されていないが、心不全等の重篤な循環器障害があらわれたとの報告がある。
2. 血中濃度測定用採血
血中濃度測定のための血液採取は末梢血を用いること。〔骨髄移植で中心静脈カテーテルによるルート採血を行った場合、その全血中シクロスポリン濃度は、末梢血中の濃度に比べて高いとの報告がある。〕
3.
ラットで、精細管障害を示す組織像(40mg/kg、経口投与)、精子運動能の低下(20mg/kg、経口投与)、精子数減少、精子運動能及び妊孕性の低下(1mg/kg、皮下投与)が認められたとの報告がある。
薬物動態
1. 血中濃度1)
重症腎不全患者4例にシクロスポリンを1回点滴静注し、高速液体クロマトグラフ(HPLC)法により測定した結果、全血中濃度は注入終了時に最高値に達し、その値は769~2,331ng/mL〔3.5mg/kgを投与した3例の平均は1,801ng/mL〕であった。平均全血中半減期は、0.10(α相)、1.08(β相)、15.8(γ相)時間であった。(外国人のデータ)
2. 代謝2~4)
シクロスポリンは主としてチトクロームP450 3A4(CYP3A4)で代謝され、主要代謝物はモノヒドロキシ体、ジヒドロキシ体、N-脱メチル体であった。(外国人のデータ)
臨床成績
1. 腎移植における拒絶反応の抑制5)
腎移植患者において本剤投与群238例(生体腎145例、死体腎93例・94移植腎)に対し、他の免疫抑制剤の投与を受けた既存対照群283例(生体腎199例、死体腎84例)と比較検討した結果、本剤投与群の1年生着率は死体腎(79.2%)、生体腎(93.2%)共に既存対照群に比し有意に高い成績が得られた。また、本剤投与により副腎皮質ホルモン剤の減量及び入院日数の短縮等がみられ本剤の有用性が示された。
2. 肝移植における拒絶反応の抑制
海外で肝移植を受け帰国した患者24例に対し有効性と安全性について評価を行った結果、1年及び2年生存率は共に95.7%、3年生存率は82.0%であった。
3. 心移植における拒絶反応の抑制6,7)
(1)
ネオーラルとサンディミュンの新規心移植患者を対象とした多施設二重盲検群間比較試験における移植後6ヵ月までの成績では、国際心肺移植学会(ISHLT)の重症度基準でグレード3A以上の拒絶反応発現率は、ネオーラル群42.6%(80例/188例)、サンディミュン群41.7%(80例/192例)であった。また、生存率はネオーラル群93.1%(175例/188例)、サンディミュン群92.7%(178例/192例)であった。移植後6ヵ月までに7.1%(27例/380例)の患者が死亡したが、その主な原因は移植臓器廃絶(12例)、敗血症(4例)、悪性腫瘍(2例)であった。
(外国人のデータ)
(2)
心移植患者139例の3剤併用療法(シクロスポリン+アザチオプリン+ステロイド)による長期成績では、急性拒絶反応は21例に25回(患者当たり0.18回)と従来の治療法(シクロスポリン+ステロイド、患者当たり0.84回)に比べ発現頻度の減少がみられた。また、1年生存率は92%、3年生存率は85%、5年生存率は78%であった。一方、長期の安全性については従来の治療法に比べ、感染症、悪性腫瘍の発現率の低下を認めた。
(外国人のデータ)
4. 肺移植における拒絶反応の抑制8,9)
(1)
片肺移植患者73例及び両肺移植患者58例の計131例における1年生存率は、それぞれ87%及び76%、2年生存率はそれぞれ87%及び73%であった。入院中に8%(11例/131例)の患者が死亡したが、その原因は敗血症(3例)、心臓病(3例)、アスペルギルス感染(2例)、原因不明の成人呼吸窮迫症候群(2例)、気道合併症(1例)であった。
(外国人のデータ)
(2)
片肺又は両肺移植患者44例をATG(抗胸腺細胞グロブリン)群(シクロスポリン+アザチオプリン+ステロイド+ATG)と非ATG群(シクロスポリン+アザチオプリン+ステロイド)に無作為に割り付け比較検討した結果、肺生検によるグレードII以上の急性拒絶反応