既往を有する患者及び上部消化管の潰瘍の既往のある患者
[出血の危険性が増大するおそれがある。]
5.
出血の危険性が高い患者
[「禁忌」、「重要な基本的注意」の項参照]
重要な基本的注意
1.
*本剤の使用にあたっては、患者の状態(腎機能、高齢者、消化管出血の既往等)による出血の危険性を考慮し、本剤の投与の適否を慎重に判断すること。
2.
*本剤は主に腎臓を介して排泄されるため、腎障害のある患者では、本剤の血中濃度が上昇し、出血の危険性が増大するおそれがある。本剤を投与する前に、必ず腎機能を確認すること。また、本剤投与中は適宜、腎機能検査を行い、腎機能の悪化が認められた場合には、投与の中止や減量を考慮すること。
[「禁忌」、「用法・用量に関連する使用上の注意」、「慎重投与」、「高齢者への投与」、「薬物動態」の項参照]
3.
*本剤による出血リスクを正確に評価できる指標は確立されていないため、本剤投与中は、血液凝固に関する検査値のみならず、出血や貧血等の徴候を十分に観察すること。これらの徴候が認められた場合には、直ちに投与の中止や止血など適切な処置を行うこと。特に「慎重投与」の項に掲げられた患者には注意すること。
本剤投与中の出血はどの部位にも発現する可能性があることに留意し、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血圧の低下あるいは血尿などの出血の徴候に注意すること。特に消化管出血には注意が必要であり、吐血、血便などの症状が認められた場合は投与を中止すること。
[「過量投与」の項参照]
4.
*患者には出血しやすくなることを説明し、鼻出血、歯肉出血、皮下出血、血尿、血便等の異常な出血が認められた場合には、直ちに医師に連絡するよう指導すること。
5.
本剤と併用することにより、本剤の抗凝固作用が増強あるいは減弱する薬剤があるので、併用する薬剤に十分注意すること。
[「相互作用」の項参照]
6.
アスピリン、クロピドグレル硫酸塩等の血小板凝集抑制作用を有する薬剤との併用により、ヘモグロビン2g/dL以上の減少を示すような大出血の危険性が増大することがあるので、注意すること。これらの薬剤と本剤の併用については、治療上の有益性と危険性を考慮して慎重に判断すること。
[「相互作用」の項参照]
7.
出血の危険性が増大する可能性があるので、抗凝固剤や血栓溶解剤との併用は注意すること。
[「相互作用」の項参照]
8.
本剤から他の抗凝固剤(注射剤)へ切り替える際には、本剤投与後12時間の間隔を空けること。
9.
他の抗凝固剤(注射剤)から本剤へ切り替える際には、他の抗凝固剤(注射剤)の次回投与予定時間の2時間前から、あるいは持続静注(例えば、未分画ヘパリン)中止時に本剤を投与すること。
10.
ビタミンK拮抗薬(ワルファリン)から本剤へ切り替える際には、ビタミンK拮抗薬を投与中止し、INRが2.0未満になれば投与可能である。
11.
ベラパミル塩酸塩(経口剤)との併用によりダビガトランの血中濃度が上昇することがあるため、本剤1回110mg1日2回投与を考慮すること。また、本剤服用中に新たにベラパミル塩酸塩(経口剤)の併用を開始する患者では、併用開始から3日間はベラパミル塩酸塩服用の2時間以上前に本剤を服用させること。
[「相互作用」の項参照]
12.
aPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)は、出血している患者では過度の抗凝固作用を判断する目安となる可能性がある。日本人を含む第III相国際共同試験においては、トラフ時aPTTが80秒を超える場合は大出血が多かった。
13.
生体組織検査、大きな外傷、細菌性心内膜炎など出血の危険性が増大する場合、出血や貧血の徴候に十分注意すること。
14.
手術や侵襲的手技を実施する患者では、出血の危険性が増大するため危険性に応じて本剤の投与を一時中止すること。可能であれば、手術や侵襲的手技の24時間前までに投与中止すること。完全な止血機能を要する大手術を実施する場合や出血の危険性が高い患者を対象とする場合には、手術の2日以上前までの投与中止を考慮し、従来の抗凝固療法と同様に代替療法(ヘパリン等)の使用を考慮すること。また、手術後は止血を確認した後に、本剤の投与を再開すること。
15.
患者の判断で本剤の服用を中止することのないよう十分な服薬指導をすること。本剤を服用し忘れた場合、同日中にできるだけ早く1回量を服用するとともに次の服用まで6時間以上空けさせること。服用し忘れた場合でも決して2回量を服用しないよう指導すること。
相互作用
本剤はP-糖蛋白の基質である。本剤は肝薬物代謝酵素P-450による代謝を受けない。
[「薬物動態」の項参照]
併用禁忌
(併用しないこと)
薬剤名等
P-糖蛋白阻害剤(経口剤)(イトラコナゾール(経口剤))
臨床症状・措置方法
併用によりダビガトランの血中濃度が上昇し、出血の危険性が増大することがあるので、併用しないこと。
機序・危険因子
本剤による抗凝固作用が増強することがある。
併用注意
(併用に注意すること)
薬剤名等
血小板凝集抑制作用を有する薬剤(アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン塩酸塩、クロピドグレル硫酸塩等)
臨床症状・措置方法
これらの薬剤との併用により、ヘモグロビン2g/dL以上の減少を示すような大出血の危険性が増大することがあるので注意すること。やむを得ず併用する場合には治療上の有益性と危険性を十分に考慮し、本剤の投与が適切と判断される患者にのみ併用投与すること。また、投与中は観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
機序・危険因子
本剤は抗凝固作用を有するため、これら薬剤と併用すると出血を助長するおそれがある。
薬剤名等
抗凝固剤(ワルファリンカリウム、未分画ヘパリン、ヘパリン誘導体、低分子ヘパリン、フォンダパリヌクスナトリウム等)
血栓溶解剤(ウロキナーゼ、t-PA製剤等)
非ステロイド性消炎鎮痛剤(ジクロフェナクナトリウム等)
臨床症状・措置方法
これらの薬剤との併用により、出血の危険性が増大する可能性がある。このような場合には、患者の状態を十分に観察するなど注意すること。
機序・危険因子
本剤は抗凝固作用を有するため、これら薬剤と併用すると出血を助長するおそれがある。
薬剤名等
P-糖蛋白阻害剤(経口剤)(ベラパミル塩酸塩)
臨床症状・措置方法
併用によりダビガトランの血中濃度が上昇することがあるため、本剤1回110mg1日2回投与を考慮すること。また、本剤と同時にベラパミル塩酸塩の併用を開始、もしくは本剤服用中に新たにベラパミル塩酸塩の併用を開始する場合は、併用