細胞肺癌、非小細胞肺癌、乳癌(手術不能又は再発)及び有棘細胞癌はA法を、子宮頸癌、卵巣癌、胃癌(手術不能又は再発)及び結腸・直腸癌(手術不能又は再発)はA法又はB法を使用する。
また、悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)はC法を使用する。
A法:
イリノテカン塩酸塩水和物として、通常、成人に1日1回、100mg/m2を1週間間隔で3~4回点滴静注し、少なくとも2週間休薬する。これを1クールとして、投与を繰り返す。
B法:
イリノテカン塩酸塩水和物として、通常、成人に1日1回、150mg/m2を2週間間隔で2~3回点滴静注し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとして、投与を繰り返す。
C法:
イリノテカン塩酸塩水和物として、通常、成人に1日1回、40mg/m2を3日間連日点滴静注する。これを1週毎に2~3回繰り返し、少なくとも2週間休薬する。これを1クールとして、投与を繰り返す。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
2.
A法・B法では、本剤投与時、投与量に応じて500mL以上の生理食塩液、ブドウ糖液又は電解質維持液に混和し、90分以上かけて点滴静注する。
C法では、本剤投与時、投与量に応じて250mL以上の生理食塩液、ブドウ糖液又は電解質維持液に混和し、60分以上かけて点滴静注する。
使用上の注意
慎重投与
(次の患者には慎重に投与すること)
1.
肝障害のある患者
[肝障害が悪化及び副作用が強く発現するおそれがある。]
2.
腎障害のある患者
[腎障害が悪化及び副作用が強く発現するおそれがある。]
3.
糖尿病の患者(十分な管理を行いながら投与すること)
[高度な下痢の持続により脱水、電解質異常を起こして糖尿病が増悪し、致命的となるおそれがある。]
4.
全身衰弱が著しい患者
[副作用が強く発現するおそれがある。]
5.
高齢者
[「高齢者への投与」の項参照]
重要な基本的注意
1.
本剤は点滴静注により使用すること。
2.
本剤による手術後の補助療法については有効性、安全性は確立していない。
3.
重篤な過敏反応があらわれることがあるので、観察を十分に行い、過敏症状(呼吸困難、血圧低下等)が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
4.
骨髄機能抑制、高度な下痢等の重篤な副作用が起こることがあり、ときに致命的な経過をたどることがあるので、頻回に臨床検査(血液検査、肝機能検査、腎機能検査等)を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。異常が認められた場合には減量、休薬等の適切な処置を行うこと。投与後2週間は特に頻回に末梢血液検査を行うなど、極めて注意深く観察すること。また、使用が長期間にわたると副作用が強くあらわれ、遷延することがあるので、投与は慎重に行うこと。
(1) 骨髄機能抑制
本剤の投与にあたっては、白血球の変動に十分留意し、投与予定日の白血球数が3,000/mm3未満又は血小板数が10万/mm3未満の場合には、本剤の投与を中止又は延期すること。投与予定日の白血球数が3,000/mm3以上かつ血小板数が10万/mm3以上であっても、白血球数又は血小板数が急激な減少傾向にあるなど、骨髄機能抑制が疑われる場合には、本剤の投与を中止又は延期すること。また、白血球数が異常な高値を示す患者及びCRPが異常値を示すなど感染症が疑われる患者では、投与後に白血球の急激な減少が起こることがある。このような場合には、投与予定日の白血球数が3,000/mm3以上かつ血小板数が10万/mm3以上であっても、骨髄機能の回復を十分に確認してから投与を行うこと。
白血球減少(好中球減少)を認めた場合には、観察を十分に行い、減少の程度に応じてG-CSF等の白血球増多薬の投与、発熱を伴う場合には適切な抗生剤の投与、その他必要に応じて適切な感染症対策を行うこと。
(2) 下痢
本剤の投与により排便回数の増加、水様便又は腹痛を伴うような場合は、継続投与により下痢が強く発現することがある。また、腹痛を有する患者に本剤を投与した場合、高度な下痢があらわれることがある。したがって、このような場合には症状の回復を待って投与を行うこと。
下痢が発現した場合には、以下の事項に留意すること。
○高度な下痢の持続により、脱水及び電解質異常等をきたし、特に重篤な白血球・好中球減少を伴った場合には、致命的な経過をたどることがあるので、次のような処置を行うこと。
・ ロペラミド塩酸塩等の止瀉薬の投与を行うこと(ただし、腸管麻痺を引き起こすことがあるので、ロペラミド塩酸塩等の予防的投与や、漫然とした投与は行わないこと)。
・ 脱水を認めた場合には、輸液、電解質補充を行うこと。
・ 重篤な白血球・好中球減少を伴った場合には、適切な抗生剤の投与を考慮すること。
○高度な下痢や嘔吐に伴いショック(循環不全)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、呼吸困難、血圧低下等が認められた場合には、投与を中止し適切な処置を行うこと。
なお、本剤による下痢に関しては、以下の2つの機序が考えられている。
早発型:
本剤投与中あるいは投与直後に発現する。コリン作動性と考えられ、高度である場合もあるが多くは一過性であり、副交感神経遮断剤の投与により緩和することがある。
遅発型:
本剤投与後24時間以降に発現する。主に本剤の活性代謝物(SN-38)による腸管粘膜傷害に基づくものと考えられ、持続することがある。
5.
重症感染症、播種性血管内凝固症候群(DIC)、出血傾向、腸管穿孔、消化管出血、腸閉塞、腸炎及び間質性肺炎の発現又は増悪に十分注意すること。
6.
悪心・嘔吐、食欲不振等の消化器症状が高頻度にあらわれるので、観察を十分に行い、適切な処置を行うこと。
7.
投与初期又は比較的低用量の投与でも副作用があらわれることがあるので、使用上の注意に十分注意すること。
8.
生殖可能な年齢の患者に投与する必要がある場合には性腺に対する影響を考慮すること。
9.
Gilbert症候群のようなグルクロン酸抱合異常の患者においては、本剤の代謝が遅延することにより骨髄機能抑制等の重篤な副作用が発現する可能性が高いため、十分注意すること。
10.
※※本剤の活性代謝物(SN-38)の主な代謝酵素であるUDP-グルクロン酸転移酵素(UDP-glucuronosyltransferase, UGT) の2つの遺伝子多型 (UGT1A1*6、UGT1A1*28 ) について、いずれかをホモ接合体 (UGT1A1*6/*6、UGT1A1*28/*28 ) 又