不十分な2型糖尿病患者を対象に,テネリグリプチンとして20mg又はプラセボを1日1回12週間投与した.テネリグリプチン併用投与はグリメピリド単独投与又はピオグリタゾン単独投与に比べ,HbA1c値(NGSP値)を有意に低下させ,血糖コントロールを改善させた21,22).
(2) スルホニルウレア系薬剤又はチアゾリジン系薬剤との長期投与試験
上記(1)の二重盲検比較試験に参加した患者を対象に,テネリグリプチンとして20mg又は40mg(増量時)を継続投与したとき,52週時における投与開始からのHbA1c値(NGSP値)の変化量(平均値±標準偏差)はグリメピリドを併用しテネリグリプチンを40週間投与した群で-0.93±0.76%,52週間投与した群で-0.56±0.87%,ピオグリタゾンを併用しテネリグリプチンを40週間投与した群で-0.72±0.67%,52週間投与した群で-0.86±0.66%であり,52週にわたって安定した血糖コントロールが得られた.52週までの併用投与時における低血糖症の副作用発現率は,グリメピリド併用時8.9%(17例/191例),ピオグリタゾン併用時1.5%(3例/201例)であった21,22).
また,食事療法及び運動療法に加えてグリメピリドで血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者(89例)を対象に,テネリグリプチンとして20mg又は40mg(増量時)を1日1回52週間投与した.テネリグリプチンは投与開始初期よりHbA1c値(NGSP値)を有意に低下させ,52週時における投与開始からのHbA1c値(NGSP値)の変化量(平均値±標準偏差)は-0.81±0.76%であり,52週にわたって安定した血糖コントロールが得られた.52週までの併用投与時における低血糖症の副作用発現率は,9.0%(8例/89例)であった19).
(3) **グリニド系薬剤, ビグアナイド系薬剤あるいはα-グルコシダーゼ阻害剤との長期投与試験
食事療法及び運動療法に加えてグリニド系薬剤, ビグアナイド系薬剤あるいはα-グルコシダーゼ阻害剤で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者(80, 95, 75例)を対象に, テネリグリプチンとして20mg又は40mg(増量時)を1日1回52週間投与した.テネリグリプチンは投与開始初期よりHbA1c値(NGSP値)を有意に低下させ, 52週時における投与開始からのHbA1c値(NGSP値)の変化量(平均値±標準偏差)はそれぞれ-0.76±0.70%, -0.78±0.75%及び-0.89±0.64%であり, 52週にわたって安定した血糖コントロールが得られた. 52週までの併用投与時における低血糖症の副作用発現率は, それぞれ3.8%(3例/80例), 1.1%(1例/95例)及び1.3%(1例/75例)であった20).
薬効薬理
1. 作用機序
グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は,食事に応答して消化管から分泌され,膵臓からのインスリン分泌を促進し,グルカゴン分泌を抑制することで,食後血糖を調節している23).テネリグリプチンは,ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)活性の阻害によりGLP-1の分解を抑制し,活性型GLP-1の血中濃度を増加させることにより,血糖低下作用を発揮する24,25).
2. DPP-4阻害作用及びGLP-1分解抑制作用
(1)
テネリグリプチンはヒト血漿中DPP-4活性を濃度依存的に阻害し,そのIC50値(95%信頼区間)は1.75(1.62‐1.89)nmol/Lであった(in vitro)24).
(2)
テネリグリプチンはラット血漿中の活性型GLP-1の分解を濃度依存的に抑制した(in vitro)24).
(3)
インスリン抵抗性及び耐糖能異常を示す肥満モデルであるZucker Fattyラットを用いた糖負荷試験において,テネリグリプチンは単回投与により血漿中活性型GLP-1濃度及び血漿中インスリン濃度を増加させた25).
(4)
2型糖尿病患者において,テネリグリプチン20mgの1日1回投与は血漿中DPP-4活性を阻害し,血漿中活性型GLP-1濃度を増加させた26).
3. 耐糖能改善作用
(1)
インスリン抵抗性及び耐糖能異常を示す肥満モデルであるZucker Fattyラットを用いた糖負荷試験において,テネリグリプチンは単回投与により血糖値上昇を抑制した25).
(2)
2型糖尿病患者において,テネリグリプチン20mgの1日1回投与は,朝食,昼食及び夕食後血糖並びに空腹時血糖を改善した26).
有効成分に関する理化学的知見
一般名
テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物
(Teneligliptin Hydrobromide Hydrate)
化学名
{(2S, 4S )-4-[4-(3-Methyl-1-phenyl-1H -pyrazol-5-yl)piperazin-1-yl] pyrrolidin-2-yl} (1,3-thiazolidin-3-yl)methanone hemipentahydrobromide hydrate
分子式
分子量
628.86(無水物)
構造式
性状
白色の粉末である.
水に溶けやすく,メタノールにやや溶けやすく,エタノール(99.5)にやや溶けにくく,アセトニトリルに溶けにくい.
融点
約201℃(分解)
包装
テネリア錠20mg:100錠(10錠×10)
テネリア錠20mg:140錠(14錠×10)
テネリア錠20mg:500錠(10錠×50)
テネリア錠20mg:500錠(バラ)
主要文献及び文献請求先
主要文献
1)
田辺三菱製薬(株):健康成人を対象とした単回投与試験(社内資料)
2)
田辺三菱製薬(株):健康成人を対象とした反復投与試験(社内資料)
3)
田辺三菱製薬(株):健康成人を対象とした食事の影響試験(社内資料)
4)
田辺三菱製薬(株):蛋白結合に関する検討(社内資料)
5)
田辺三菱製薬(株):マスバランス試験(社内資料)
6)
田辺三菱製薬(株):代謝に関する検討(社内資料)
7)
田辺三菱製薬(株):P-糖蛋白に関する検討(社内資料)
8)
田辺三菱製薬(株):トランスポーターに関する検討(社内資料)
9)
田辺三菱製薬(株):腎機能障害