*2013年3月29日改訂
承認・届出等
販売名
セプラフィルム
添付文書管理コード
20900BZY00790000_A_01
承認番号
20900BZY00790000
承認年月
平成9年8月26日
一般的名称
一般的名称
禁忌・禁止
1.
再使用禁止
本材は滅菌済み製品であり、1回限りの使用であるので、再使用しないこと。
適用対象
1.
貼付部位に感染が認められる患者に使用しないこと。[膿瘍、腹膜炎等が発現するおそれがある。]
2.
本材の成分に対し過敏症の既往歴のある患者に使用しないこと。
3.
本材の腸吻合部縫合線上へのラッピングは行わないこと。[本材を吻合部にラッピングした患者群で吻合部縫合不全、膿瘍、瘻孔、腹膜炎、敗血症の発生率が高かったとの報告がある。]
|
形状・構造及び原理等
1.
形状・構造
本材は生体吸収性材料であり、原材料としてヒアルロン酸ナトリウム及びカルボキシメチルセルロースを2:1の割合(重量比)で含有する。本材は、半透明のフィルム状である。
2.
原理
(1)
本材は、物理的バリアとして癒着防止効果を発揮する。
(2)
ラットを用いた試験では、本材は、適用後およそ24~48時間以内で水和したゲル状になり、およそ7日間貼付した組織に留まり、体内に吸収された後は、28日以内に体外へ排出される。
使用目的、効能又は効果
術後の癒着の軽減[腹部又は骨盤腔の手術患者に対して、腹部切開創下、腹膜損傷部位、または子宮及び付属器損傷部位に貼付し、術後癒着の頻度、範囲、程度を軽減する。]
品目仕様等
線膨潤率 30%以下
ヒアルロン酸ナトリウム含有
カルボキシメチルセルロース含有
*操作方法又は使用方法等
1.
本材は、腹部又は骨盤腔の手術が終了し、腹部又は骨盤腔を閉じる直前に適用すること。
2.
本材は、必要に応じてフィルムをカットし、使用前、乾いた状態にしておくこと。[本材は、湿性組織への付着性が高いため、使用前に湿らすと貼付できなくなる。]また、本材適用に使用する器具は出来るだけ乾いた状態にしておくこと。
3.
余分な水分は、本材が組織と付着するのを妨げるので、使用部位をできるだけ乾いた状態にしてから使用すること。
4.
切開部及び関連する外科的損傷部が、充分に覆われるよう貼付すること。
5.
本材を適用する際、他の組織に付着しないよう適用部位に直接貼付すること。適用部位以外の組織に付着した場合は、生理食塩液等を用いて穏やかに剥がすこともできる。
6.
2枚以上使用する場合は、損傷部が完全にそして連続して覆われるように充分重ねて使用すること。
7.
本材は、縫合して使用しないこと。
*使用方法に関連する使用上の注意
1.
本材は、水分に接触すると著しく操作性が低下し、適切に貼付を行うことができなくなるため、特に腹腔鏡下手術で使用する場合は、腹腔鏡下手術及び本材使用の十分な経験を有する医師が使用すること。
2.
ビニル(内包の透明部分)は、患者体内への接触適用を意図していないので、生体には接触しないよう注意すること。
3.
以下のような手順で使用する。
(1)
適用直前にポリエステルホイルを開封し、滅菌済の内包を、清潔区域に取り出す。
(2)
内包から、本材の入ったホルダーを取り出す。
(3)
本材をホルダーから取り出す前に、乾いたハサミで貼付する適用部の大きさと形に切断する。
(4)
ホルダーから本材を1~2cm引き出し、それをリードとして適用組織に貼付する。
(5)
必要に応じ、本材の入ったホルダーを少し折り曲げ弧状にし、腹部・骨盤腔に挿入し易くする。
(6)
組織又は臓器の所定の部位にしっかり接着するように乾いた手袋又は、ガーゼを用いて本材を穏やかに押さえながら、ホルダーより本材を少しずつ取り出す。
(7)
適用後は、ホルダーを廃棄する。
(8)
貼付が終了したら、通常の手法により閉腹する。
使用上の注意
使用注意
(次の患者には慎重に適用すること)
腹腔内に感染が認められる患者[腹腔内に感染または穿孔のある患者において膿瘍、腹膜炎等の報告がある。]
重要な基本的注意
1.
重度の薬物アレルギーの患者に本材を使用した場合の安全性及び有効性については臨床上確立されていないので、重度の薬物アレルギーの患者には本材を使用しないこと。
2.
本材使用後に、疼痛、腹部膨満、及び発熱の臨床症状を伴う異物反応が報告されている。このような症状を起こした場合には、適切な措置を施すこと。
3.
本材の使用後に炎症性反応、膿瘍等が報告されているので、治療上の有益性を勘案した上で使用すること。
4.
他の癒着防止材との併用、腹部・骨盤腔以外の部位の手術で、本材を適用した場合の安全性及び有効性については、臨床上確立されていない。
不具合・有害事象
使用成績調査終了時(実施期間:1998年4月1日~2000年8月25日)
収集総症例数724例中、有害事象報告は8例(1.1%)10件であった。その主なものは、発熱4件(0.6%)、めまい、嘔気、頭痛、便秘症、心窩部痛及び腹腔内出血が各1件(0.1%)であった。
(1)
重大な有害事象
1)
創感染、膿瘍、腹膜炎、敗血症
創感染、膿瘍、腹膜炎、敗血症(いずれも頻度不明注))があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合は適切な処置を行うこと。
2)
ショック
ショック(頻度不明注))があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合は適切な処置を行うこと。
(2)
その他の有害事象
下記のような症状があらわれることがあるので、異常が認められた場合は適切な処置を行うこと。
|
0.2~1%未満 |
0.2%未満 |
頻度不明注) |
腹部事象 |
|
腹腔内出血 |
イレウス、浮腫、癒着、創し開 |
その他 |
発熱 |
めまい、嘔気、頭痛、便秘症、心窩部痛 |
アレルギー反応、肝機能検査値異常、皮疹、腹痛、下痢 |
注)自発報告により認められている有害事象のため、頻度不明。
(3)
参考:海外での有害事象
1)
海外の臨床試験
米国における潰瘍性大腸炎または家族性大腸ポリポーシスの患者で、大腸全摘術(回腸嚢肛門吻合)+回腸人工肛門造設術が施行された患者を対象とした臨床試験1)並びに、子宮筋腫患者を対象とした臨床試験2)では、初回手術後最高53週間にわたって、セプラフィルム群150例と対照群160例を比較した結果、両群間の重篤な有害事象の発生率に有意差は認められなかった。すべての重篤な有害事象例について、その概要を表に示す。
■大腸全摘術(回腸嚢肛門吻合)+回腸人工肛門造設術患者を対象とした臨床試験における重篤な有害事象
発生率
重篤な有害事象 |
セプラフィルム群
(n=91) |
対 照 群
(n=92) |
小腸閉塞 |
9% |
10% |
膿 瘍 |
8% |
2% |
全身性の兆候及び症状
悪心/嘔吐/下痢 |
4% |
5% |
肺塞栓 |
4% |
0% |
深在静脈血栓症 |
2% |
1% |
イレウス |
2% |
1% |
発 熱 |
2% |
0% |
副腎機能不全 |
2% |
0% |
敗血症 |
1% |
1% |
心筋梗塞/死亡 |
1% |
0% |
膵 炎 |
1% |
0% |
腸間膜血栓症 |
1% |
0% |
肝毒性 |
1% |
0% |
心室性不整脈 |
1% |
0% |
直腸凝血 |
0% |
1% |
尿 閉 |
1% |
0% |
脱水症 |
0% |
1% |
回腸嚢炎 |
1% |
0% |
直腸腟瘻 |
0% |
1% |
個々の有害事象の群間の統計学的有意差なし(Fisherの直接法)
■子宮筋腫核摘出患者を対象とした臨床試験における重篤な有害事象
発生率
重篤な有害事象 |
セプラフィルム群
(n=59) |
対 照 群
(n=68) |
イレウス及び発熱 |
2% |
0% |
発熱-血液型ミス |
2% |
0% |
腹腔鏡検査後開腹に移行 |
0% |
1% |
腹腔内出血 |
0% |
1% |
無気肺及びイレウス |
0% |
1% |
術後発熱 |
0% |
1% |
個々の有害事象の群間の統計学的有意差なし(Fisherの直接法)
2)
海外の市販後臨床試験
米国、カナダ及び欧州で実施された結腸直腸切除術又は癒着剥離術を受けた患者1791例(セプラフィルム群:882例、対照群:909例)を対象とした市販後臨床試験において、重篤な有害事象の発生した総例数に両群間で差は認められなかったが、吻合部縫合不全に関連した有害事象の発生率は、吻合部縫合線上のラッピングをした群では有意に高かった。しかしながら、セプラフィルムを腹壁創直下に貼付しても、創傷治癒又は手術部位感染の発生率に影響を与えなかった。また、腹部・骨盤膿瘍又は肺塞栓症の発生率に両群間で統計学的有意差は認められなかった。セプラフィルム群において異物反応は認められなかった。
表1.術後30日及び6ヶ月に1%以上の頻度で発現した重篤な有害事象
症例数(発生率%)
重篤な有害事象 |
術後30日 |
術後6ヶ月 |
セプラフィルム群
(n=882) |
対照群
(n=909) |
セプラフィルム群
(n=882) |
対照群
(n=909) |
麻痺性イレウス |
40(5) |
40(4) |
51(6) |
46(5) |
その他のイレウス |
38(4) |
33(4) |
65(7) |
68(8) |
吻合部縫合不全 |
33(4)※ |
16(2) |
41(5) |
28(3) |
脱水 |
26(3) |
32(4) |
44(5) |
47(5) |
腹部・骨盤膿瘍 |
30(3) |
27(3) |
48(5) |
43(5) |
腹膜炎 |
26(3)※ |
12(1) |
31(4) |
18(2) |
術後創感染注1) |
30(3) |
27(3) |
37(4) |
30(3) |
腹痛 |
18(2) |
15(2) |
28(3) |
26(3) |
発熱 |
15(2) |
24(3) |
22(3) |
32(4) |
瘻孔注2) |
16(2)※ |
2(<1) |
26(3)※ |
7(1) |
嘔吐 |
13(2) |
13(1) |
22(3) |
20(2) |
敗血症 |
17(2) |
9(1) |
21(2) |
13(1) |
創し開注3) |
12(1) |
9(1) |
16(2) |
10(1) |
消化管障害 |
7(1) |
8(1) |
13(2) |
13(1) |
胃腸出血 |
9(1) |
3(<1) |
13(2) |
8(1) |
嘔気 |
6(1) |
5(<1) |
12(1) |
11(1) |
腹腔内液貯留 |
9(1) |
6(1) |
11(1) |
6(1) |
尿路感染 |
8(1) |
7(1) |
11(1) |
10(1) |
ライン感染注4) |
7(1)※ |
1(<1) |
10(1) |
5(1) |
下肢深部血栓性静脈炎 |
3(<1) |
4(<1) |
9(1) |
7(1) |
発現症例合計 |
264例534件
(30) |
237例470件
(26) |
350例862件
(40) |
324例765件
(36) |
※対照群との統計学的有意差(p<0.05:Fisherの直接法、両側)
注1)術後創感染は、術後創感染及び創部膿瘍を含む。
注2)瘻孔は、瘻孔及び腸管瘻を含む。
注3)創
し開は、筋膜創
し開、表層創
し開及び創
し開を含む。
注4)ライン感染は、点滴静注部位に関連した感染性及び炎症性の有害事象を含む。
表2.吻合部縫合線上のラッピングの有無による術後30日に発現した重篤な有害事象の比較
症例数(発生率%)
重篤な有害事象 |
セプラフィルム群 |
対 照 群
(n=909) |
吻合部縫合線上のラッピングをした群
(n=289) |
吻合部縫合線上のラッピングをしなかった群
(n=593) |
吻合部縫合不全 |
20(6.9)※ |
13(2.2) |
16(1.8) |
腹部・骨盤膿瘍 |
16(5.5)※ |
14(2.4) |
27(3.0) |
腹膜炎 |
14(4.8)※ |
12(2.0) |
12(1.3) |
瘻孔注) |
11(3.8)※ |
5(0.8) |
2(0.2) |
敗血症 |
10(3.5)※ |
7(1.2) |
9(1.0) |
発現症例合計 |
37(12.8) |
31(5.2) |
45(5.0) |
※対照群との統計学的有意差(p<0.05:Fisherの直接法、両側)
注)瘻孔は、瘻孔及び腸管瘻を含む。
妊婦、産婦、授乳婦及び小児等への適用
妊娠中の使用に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には使用しないことが望ましい。
臨床成績
外国(アメリカ合衆国)で実施
1.
腹部外科1)
潰瘍性大腸炎または家族性大腸ポリポーシスの患者で、大腸全摘術(回腸嚢肛門吻合)+回腸人工肛門造設術が施行された183例を対象とし、開腹創直下に本材を貼付し、術後8~12週の人工肛門閉鎖術時に、腹腔鏡による観察で、開腹創直下の術後癒着を評価した。
開腹創直下の術後癒着
項目 |
セプラフィルム群
(n=85注1)) |
対 照 群
(n=90注1)) |
p値 |
発 生 |
癒着なし
癒着あり |
43(51%)
42(49%) |
5(6%)
85(94%) |
p<0.0001注4) |
程 度注2) |
癒着なし
グレード1
グレード2
グレード3 |
43(51%)
12(14%)
17(20%)
13(15%) |
5(6%)
4(4%)
29(32%)
52(58%) |
p<0.0001注5) |
範 囲注3) |
23±34% |
63±34% |
p<0.0001注6) |
注1)有効性評価可能症例は、183例中、セプラフィルム群が85例、対照群が90例であった。
注2)癒着の程度:
グレード1(膜状癒着、血管新生がない)
グレード2(中等度の厚さの癒着、部分的に血管新生を認める)
グレード3(密着した癒着、著明な血管新生を認める)
注3)癒着の範囲(正中切開部のうち癒着の長さの割合):
癒着の部分の長さ(cm)/正中切開部の長さ(cm)(%)
注4)Fisherの直接法
注5)Wilcoxonの順位和検定
注6)t検定
2.
産婦人科2)
子宮筋腫摘出術患者127例を対象とし、子宮前壁及び子宮後壁表面に本材を貼付し、術後平均23日目の腹腔鏡による観察で術後癒着を評価した。
子宮表面の術後癒着
項目/群 |
セプラフィルム群
(n=54注1)) |
対照群
(n=65注1)) |
p値注6) |
癒着付着部位数注2) |
4.98 |
7.88 |
p<0.0001 |
程 度注3) |
1.94 |
2.43 |
p<0.01 |
範 囲注4) |
1.23 |
1.68 |
p<0.01 |
面 積注5) |
13.23 |
18.72 |
p<0.02 |
注1)有効性評価可能症例は、127例中、セプラフィルム群が54例、対照群が65例であった。但し、癒着付着部位数については、セプラフィルム群が49例、対照群が48例であった。
注2)癒着付着部位数(平均値):子宮前後壁両側への癒着の総数
注3)癒着の程度(平均値):0(癒着なし)、1(膜状で血管新生がない)、2(部分的に血管新生を認める)、3(密着した癒着)
注4)癒着の範囲(切開部全長またはその全体面積に対する癒着の割合%)(平均値):0(癒着なし)、1(切開の全長または当該箇所の全面積の25%以下を覆っている)、2(同じく26~50%)、3(同じく51%以上)
注5)癒着の面積(平均値):cm
2
注6)t検定
貯蔵・保管方法及び使用期間等
貯蔵・保管方法
有効期間・使用の期限(耐用期間)
3年
取扱い上の注意
1.
再滅菌して使用しないこと。また、使用前に本材の包装が開封されたり、破損している際は使用しないこと。
2.
本材の取り扱いは、乾いた器具や手袋を用いるなど慎重に行うこと。
3.
いったん本材を組織に貼付した後は、本材を動かさないこと。
**包装
本材はガンマ線滅菌されている。
1枚入り×1袋(1枚あたりのフィルム寸法:12.7cm×14.7cm 面積186.69cm2)
2枚入り×1袋(1枚あたりのフィルム寸法:12.7cm×7.35cm 面積93.35cm2、2枚合計のフィルム寸法:12.7cm×14.7cm 面積186.69cm2)
4枚入り×1袋(1枚あたりのフィルム寸法:12.7cm×7.35cm 面積93.35cm2、4枚合計のフィルム寸法:25.4cm×14.7cm 面積373.38cm2)
4枚入り×1袋(1枚あたりのフィルム寸法:7.35cm×6.35cm 面積46.67cm2、4枚合計のフィルム寸法:14.7cm×12.7cm 面積186.69cm2)
主要文献及び文献請求先
主要文献
1.
Becker JM, Dayton MT, Fazio VW, et al : J. Am. Coll. Surg., 183 : 297-306, 1996
2.
Diamond MP, The Seprafilm adhesion study group : Fertil. Steril., 66 : 904-910, 1996
文献請求先
科研製薬株式会社 医薬品情報サービス室
〒113-8650 東京都文京区本駒込2丁目28-8
TEL:0120-519-874
製造販売業者及び製造業者の氏名又は名称及び住所等
製造販売元(輸入)
氏名又は名称
サノフィ株式会社
第一種医療機器製造販売業
住所等
〒163-1488 東京都新宿区西新宿三丁目20番2号
電話番号
03-6301-3931
その他の安全性情報
備考
発売元
科研製薬株式会社
東京都文京区本駒込2丁目28-8