Femara Tablets(Letrozole)フェマーラ錠2.5mg
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作成又は改訂年月
** 2015年3月改訂(第5版)
* 2010年1月改訂
日本標準商品分類番号
874291
日本標準商品分類番号等
国際誕生年月
1996年7月
薬効分類名
アロマターゼ阻害剤/閉経後乳癌治療剤
承認等
販売名
フェマーラ錠2.5mg
販売名コード
4291015F1026
承認・許可番号
承認番号
21800AMY10006000
商標名
FEMARA
薬価基準収載年月
2006年4月
販売開始年月
2006年5月
貯法・使用期限等
貯法
室温保存
使用期限
包装に表示の使用期限内に使用すること
使用期限内であっても、開封後はなるべく速やかに使用すること
規制区分
**,*
劇薬
処方箋医薬品
(注意-医師等の処方箋により使用すること)
組成
成分・含有量
1錠中レトロゾールとして2.5mg
添加物
乳糖、トウモロコシデンプン、セルロース、無水ケイ酸、デンプングリコール酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、マクロゴール、タルク、酸化チタン、三二酸化鉄
性状
色・剤形
帯赤黄色のフィルムコート錠
外形
識別コード
CG FV
大きさ(約)
直径:6.2mm 厚さ:3.2mm 質量:0.10g
一般的名称
レトロゾール錠
禁忌
(次の患者には投与しないこと)
1.
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人〔動物実験(ラット)において胎児死亡及び催奇形性(胎児のドーム状頭部及び椎体癒合)が観察されている。〕(「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照)
2.
授乳婦〔動物実験(ラット)において乳汁移行が認められている。また、授乳期に本剤を母動物に投与した場合、雄の出生児の生殖能の低下が認められている。〕(「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照)
3.
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
効能又は効果
効能又は効果/用法及び用量
閉経後乳癌
用法及び用量
通常、成人にはレトロゾールとして1日1回2.5mgを経口投与する。
使用上の注意
慎重投与
(次の患者には慎重に投与すること)
1.
重度の肝機能障害を有する患者〔本剤の重度の肝機能障害患者における安全性は確立していない。〕(【薬物動態】の「6.肝機能障害者における体内動態」の項参照)
2.
重度の腎障害を有する患者〔本剤の重度の腎障害患者における安全性は確立していない。〕
重要な基本的注意
1.
本剤は内分泌療法剤であり、がんに対する薬物療法について十分な知識・経験を持つ医師の下で、本剤による治療が適切と判断される患者についてのみ使用すること。
2.
本剤はアロマターゼを阻害することにより治療効果を発揮するものであり、活発な卵巣機能を有する閉経前の患者ではアロマターゼを阻害する効果は不十分であると予想されること、並びに閉経前の患者では使用経験がないことを考慮して、閉経前患者に対し使用しないこと。
3.
疲労、めまい、まれに傾眠が起こることがあるので、本剤投与中の患者には、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には注意させること。
4.
本剤の投与によって、骨粗鬆症、骨折が起こりやすくなるので、骨密度等の骨状態を定期的に観察することが望ましい。
相互作用
本剤は、肝代謝酵素CYP3A4及びCYP2A6で代謝されるので、本酵素の活性に影響を及ぼす薬剤と併用する場合には注意して投与すること。CYP3A4及びCYP2A6活性を阻害する薬剤、又はCYP3A4及びCYP2A6によって代謝される薬剤との併用により、本剤の代謝が阻害され血中濃度が上昇する可能性がある。また、CYP3A4を誘導する薬剤との併用により、本剤の代謝が促進され血中濃度が低下する可能性がある。一方、本剤は、CYP2A6の阻害作用を有することから、本酵素で代謝される他の薬剤の血中濃度を上昇させる可能性がある。
併用注意
(併用に注意すること)
1. 薬剤名等
CYP2A6を阻害する薬剤(メトキサレン等)
臨床症状・措置方法
本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。
機序・危険因子
メトキサレン等の薬剤はCYP2A6活性を阻害することより、本剤の代謝を阻害し、血中濃度を上昇させる可能性がある。
2. 薬剤名等
CYP3A4を阻害する薬剤(アゾール系抗真菌剤等)
臨床症状・措置方法
本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。
機序・危険因子
アゾール系抗真菌剤等の薬剤はCYP3A4活性を阻害することより、本剤の代謝を阻害し、血中濃度を上昇させる可能性がある。
3. 薬剤名等
CYP3A4を誘導する薬剤(タモキシフェン、リファンピシン等)
臨床症状・措置方法
本剤の血中濃度が低下する可能性がある。
本剤とタモキシフェンの反復併用投与により、本剤のAUCが約40%低下したとの報告がある。1)
ただし、相互作用に起因する効果の減弱及び副作用の報告はない。
機序・危険因子
これらの薬剤はCYP3A4を誘導することにより、本剤の代謝を促進し、血中濃度を低下させる可能性がある。
副作用
副作用等発現状況の概要
国内臨床試験における安全性評価対象症例290例中119例(41.0%)に副作用(臨床検査値の異常を含む)が認められた。そのうち臨床症状が25.9%(75例)、臨床検査値異常が25.2%(73例)であった。主な臨床症状は、ほてり6.6%(19件)、頭痛3.1%(9件)、関節痛2.8%(8件)、悪心2.4%(7件)、発疹2.1%(6件)、そう痒症2.1%(6件)、浮動性めまい1.7%(5件)等であった。また、臨床検査値異常の主なものは、血中コレステロール増加8.7%(23件/265例中)、ALT(GPT)増加7.9%(22件/278例中)、ALP増加7.3%(20件/275例中)、γ-GTP増加6.6%(17件/258例中)、AST(GOT)増加6.4%(18件/280例中)等であった。 (承認時までの集計)2~7)
重大な副作用
1. 血栓症、塞栓症
(頻度不明)
肺塞栓症、脳梗塞、動脈血栓症、血栓性静脈炎、心筋梗塞があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
2. *心不全、狭心症
(頻度不明)
心不全、狭心症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
3. *肝機能障害、黄疸
(頻度不明)
AST(GOT)、ALT(GPT)の著しい上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
4. *中毒性表皮壊死症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、多形紅斑
(頻度不明)
中毒性表皮壊死症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、多形紅斑があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
その他の副作用
1. 血液系障害
(1%~5%未満)
白血球数減少
2. 血液系障害
(1%未満)
血小板増加、白血球分画異常、単球数減少、好塩基球数増加、リンパ球数減少
3. 代謝及び栄養障害
(頻度不明)
食欲亢進、体重減少
4. 代謝及び栄養障害
(5%以上)
血中コレステロール増加
5. 代謝及び栄養障害
(1%~5%未満)
高カルシウム血症、食欲不振、体重増加
6. 代謝及び栄養障害
(1%未満)
血中クロール増加、血中コレステロール減少、血中カリウム減少、低蛋白血症、アルブミン・グロブリン比減少
7. 精神障害
(頻度不明)
うつ病、不安、不眠症
8. 精神障害
(1%未満)
易興奮性
9. 神経系障害
(頻度不明)
記憶障害、異常感覚
10. 神経系障害
(1%~5%未満)
頭痛、浮動性めまい
11. 神経系障害
(1%未満)
注意力障害、傾眠、しびれ感、味覚障害
12. 眼障害
(頻度不明)
白内障、眼刺激、霧視
13. 耳及び迷路障害
(1%未満)
耳鳴
14. 心臓障害
(頻度不明)
頻脈
15. 心臓障害
(1%未満)
動悸
16. 血管障害
(5%以上)
ほてり
17. 血管障害
(1%~5%未満)
高血圧
18. 血管障害
(1%未満)
低血圧、潮紅
19. 呼吸器系障害
(頻度不明)
呼吸困難
20. 呼吸器系障害
(1%未満)
喉頭痛
21. 胃腸障害
(頻度不明)
下痢
22. 胃腸障害
(1%~5%未満)
悪心、嘔吐
23. 胃腸障害
(1%未満)
消化不良、腹痛、便秘、腹部膨満、上腹部痛、軟便、歯痛、口内炎
24. 肝・胆道系障害
(5%以上)
AST(GOT)増加、ALT(GPT)増加、ALP増加、γ-GTP増加
25. 肝・胆道系障害
(1%~5%未満)
LDH増加
26. 肝・胆道系障害
(1%未満)
血中ビリルビン増加
27. 皮膚障害
(頻度不明)
皮膚乾燥、蕁麻疹
28. 皮膚障害
(1%~5%未満)
そう痒症、発疹、多汗
29. 皮膚障害
(1%未満)
冷汗、局所性表皮剥脱、湿疹、脱毛症
30. 筋骨格系障害
(頻度不明)
骨痛、骨折、骨粗鬆症
31. 筋骨格系障害
(1%~5%未満)
関節痛、筋痛
32. 筋骨格系障害
(1%未満)
関節硬直、背部痛、関節炎
33. 腎及び尿路障害
(頻度不明)
頻尿、尿路感染
34. 腎及び尿路障害
(1%~5%未満)
尿蛋白陽性
35. 腎及び尿路障害
(1%未満)
BUN増加
36. 生殖系及び乳房障害
(頻度不明)
膣乾燥
37. 生殖系及び乳房障害
(1%未満)
乳房痛、膣出血、膣分泌物
38. 全身障害
(頻度不明)
発熱、粘膜乾燥、腫瘍疼痛
39. 全身障害
(1%~5%未満)
疲労、けん怠感、口渇
40. 全身障害
(1%未満)
熱感、脱力、上肢浮腫、全身浮腫
高齢者への投与
一般に高齢者では生理機能が低下しており、副作用があらわれやすいので慎重に投与すること。
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
本剤は、閉経後患者を対象とするものであることから、妊婦、授乳婦に対する投与は想定していないが、妊婦、授乳婦への投与の安全性については次の知見がある。
(1)
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。〔適応外ではあるが、海外において、妊娠前及び妊娠中に本剤を投与された患者で奇形を有する児を出産したとの報告がある。動物実験(ラット)においては、胎児死亡及び催奇形性(ドーム状頭部及び椎体癒合)並びに分娩障害が観察されている。また、動物実験(ラット)で胎児への移行が認められている。〕
(2)
授乳中の婦人へは投与しないこと。やむを得ず投与する場合は授乳を避けさせること。〔動物実験(ラット)で乳汁移行が認められている。また、動物実験(ラット)で授乳期に本剤を母動物に投与した場合、雄の出生児の生殖能の低下が観察されている。〕
過量投与
海外において最高62.5mgを単回服用した症例の報告があるが、本症例では重篤な有害事象の発現はみられていない。
処置
患者に意識がある場合はまず嘔吐させることが適切であるが、通常は支持療法を行い、頻繁にバイタルサインをモニターすること。
適用上の注意
薬剤交付時
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔を起こして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている)
薬物動態
1. 血漿中濃度
(1) 単回投与試験8)
閉経後健康女性(12例)にレトロゾール2.5mgを空腹時に単回経口投与したとき、血漿中濃度は以下のように推移した。
Tmax(h)
1.5±0.6
Cmax(ng/mL)
43.2±16.1
AUC0-inf(ng・h/mL)
2,066±1,147
t1/2(h)
68.6±36.7
平均値±標準偏差

(2) 反復投与試験
閉経後健康女性(10例)に、レトロゾール2.5mgを1日1回、反復投与したときの血漿中薬物濃度は、投与回数が増えるにしたがって徐々に上昇し、投与4週間でほぼ一定値に近づいた。初回投与に対する4週後投与のAUC0-24比(累積係数)は7.2であった。9)
また、閉経後乳癌女性患者(31例)にレトロゾール2.5mgを1日1回反復経口投与した時の血漿中トラフ濃度は、投与4週目以降ほぼ一定値で推移し、定常状態であると考えられた。2)

閉経後健康女性(10例)にレトロゾール2.5mgを4週間反復経口投与したときの血漿中薬物濃度の推移(平均値+標準偏差)

閉経後乳癌患者(31例)にレトロゾール2.5mgを反復投与したときの血漿中トラフ濃度の推移(平均値+標準偏差、例数は図中に表示)
2. 吸収10)
閉経後健康女性(12例)にレトロゾール2.5mgを単回経口投与したときの絶対バイオアベイラビリティーは約100%であった。 (外国人のデータ)
3. 蛋白結合11)
ヒトにおけるレトロゾールの血清蛋白結合率は約60%であり(in vitro)、主な結合蛋白はアルブミンである。
4. 代謝12,13)
レトロゾールは薬理学的に不活性のカルビノール体に代謝された後に、グルクロン酸抱合体として主に腎臓から排泄される。
ヒト肝ミクロソームを用いたin vitro試験において、レトロゾールは薬物代謝酵素CYP3A4、CYP2A6によって代謝されることが示唆されている。また、各CYP分子種に対するレトロゾールの阻害効果を検討した結果、CYP2A6及びCYP2C19に対するKi値はそれぞれ0.12μmol/L及び8.5μmol/Lであった。
5. 排泄14)
閉経後健康女性(6例)に〔14C〕レトロゾール2.5mgを単回経口投与したとき、投与後336時間までに投与量の88.2%が尿中に、3.8%が糞中に排泄された。また、尿中から回収された放射能のうち、約6%が未変化体、約75%がカルビノール体のβ-0-グルクロン酸抱合体であった。 (外国人のデータ)
6. 肝機能障害者における体内動態15,16)
軽度及び中等度の肝機能障害者(閉経後女性(7例)、Child-Pugh分類でグレードA及びB)にレトロゾール2.5mgを単回経口投与した時のAUCは、健康者(4例)と比較していずれも有意な増加はみられなかった。一方、重度の肝機能障害者(同(8例)グレードC)でのAUCは、健康者(8例)に比較して約2倍であった。 (外国人のデータ)
7. CYP2A6遺伝多型の薬物動態に及ぼす影響17)
閉経後乳癌患者にレトロゾール2.5mgを1日1回反復経口投与したとき、薬物代謝酵素CYP2A6の欠損あるいは活性低下を引き起こす遺伝子型(CYP2A6*4、CYP2A6*7、CYP2A6*9、CYP2A6*10)同士の組み合わせを有する群(SM群)、野生型遺伝子であるCYP2A6*1AあるいはCYP2A6*1Bを有する群(EM群)ともに、血漿中トラフ濃度は投与開始4~8週で定常状態に達したものの、平均血漿中トラフ濃度はEM群に比較してSM群で約2倍高かった。
臨床成績
1. 国内臨床試験
(1) 一般臨床試験2)
抗エストロゲン剤による治療歴のある閉経後乳癌(進行・再発)患者を対象とした一般臨床試験において、「進行・再発乳癌患者における治療効果の判定基準」に基づき効果判定をした結果、本剤1日1回2.5mg投与の奏効率は29.0%(9/31例)で、奏効例に24週間以上不変が継続した例を加えた割合は54.8%(17/31例)であった。
(2004年7月までの集計;投与期間の中央値:240日、最長:1120日、試験継続中)
(2) 後期第II相試験:第2次治療4)
抗エストロゲン剤に対して無効となった閉経後乳癌(進行・再発)患者を対象とした後期第II相試験において、「進行・再発乳癌患者における治療効果の判定基準」に基づき効果判定をした結果、本剤1日1回2.5mg投与の奏効率は21.1%(12/57例)であった。
(2005年4月までの集計;観察期間の中央値:168日、最長:364日、試験継続中)
2. 海外大規模比較試験
(1) タモキシフェンとの比較試験:第1次治療18)
世界29ヵ国で実施した閉経後の進行性乳癌患者の大規模比較試験において、主要評価項目である病状が悪化するまでの期間(Time to progression:TTP)の中央値はレトロゾール群(1日1回2.5mg投与)で9.4ヵ月、タモキシフェン群(1日1回20mg投与)で6.0ヵ月であった。TTPのハザード比は0.72(95%信頼区間:0.62~0.83、p<0.0001)であり、レトロゾール群はタモキシフェン群と比較して病状が悪化するリスクを約30%低下させた。また、副次的評価項目である奏効率はレトロゾール群で32%(145/453例)、タモキシフェン群で21%(95/454例)であった。奏効率のオッズ比は、タモキシフェン群に対して1.78倍(95%信頼区間:1.32~2.40、p=0.0002)でありレトロゾール群が有意に優れていた。なお、第1次治療が適さなくなった時点でクロスオーバーを可とし6ヵ月毎に生存率を検討したところ、24ヵ月までの生存率ではレトロゾール群はタモキシフェン群に比べ有意に高かった(p=0.0010~0.0246)。
(2) タモキシフェンとの比較試験:術後補助療法(初期治療)19)
Breast International Group主導によりホルモン受容体陽性の閉経後早期乳癌女性における術後補助療法の初期治療として実施した大規模比較試験において(観察期間の中央値;25.8ヵ月、最大値;77ヵ月)、主要評価項目である無病生存率(Disease Free Survival:DFS)に関してレトロゾール群(1日1回2.5mg投与)は4,003例中351例が再発したのに対して、タモキシフェン群(1日1回20mg投与)では4,007例中428例が再発し、レトロゾール群はタモキシフェン群と比較して再発のリスクを相対的に19%低下させ(ハザード比0.81、95%信頼区間:0.70~0.93、p=0.003)、5年時点でのDFSはレトロゾール群で84.0%、タモキシフェン群で81.4%であった(絶対差2.6%)。また、乳癌の重要な予後因子である腋窩リンパ節転移陽性例において、レトロゾール群はタモキシフェン群と比較して再発のリスクを相対的に29%低下させ(ハザード比0.71、95%信頼区間:0.59~0.85、p<0.001)、5年時点でのリンパ節転移陽性例におけるDFSはレトロゾール群で77.9%、タモキシフェン群で71.4%であった(絶対差6.5%)。副次的評価項目である全生存率において両群間に統計学的有意差は認められなかったものの(ハザード比0.86、95%信頼区間:0.70~1.06、p=0.15)、遠隔転移の発生のリスクを相対的に27%低下させた(ハザード比0.73、95%信頼区間:0.60~0.88、p=0.001)。
(3) プラセボとの比較試験:術後補助療法(逐次治療)20,21)
National Cancer Institute of Canada主導によりホルモン受容体陽性の閉経後早期乳癌女性におけるタモキシフェンによる術後補助療法後の逐次治療として実施した大規模比較試験において(観察期間の中央値;30ヵ月、範囲;1.5~61.4ヵ月)、主要評価項目であるDFSに関して、レトロゾール群(1日1回2.5mg投与)は2,583例中92例が再発したのに対して、プラセボ群では2,587例中155例が再発し、レトロゾール群はプラセボ群と比較して再発のリスクを相対的に42%低下させ(ハザード比0.58、95%信頼区間:0.45~0.76、p<0.001)、4年時点でのDFSはレトロゾール群で94.4%、プラセボ群で89.8%であった(絶対差4.6%)。また、副次的評価項目である全生存率については、レトロゾール群は2,583例中51例が死亡したのに対して、プラセボ群では2,587例中62例が死亡し、両群間に統計学的有意差は認められず(ハザード比0.82、95%信頼区間:0.57~1.19、p=0.3)、4年時点での全生存率はレトロゾール群で95.4%、プラセボ群で95.0%であった(絶対差0.4%)。しかしながら、腋窩リンパ節転移陽性例においてレトロゾール群はプラセボ群と比較して死亡のリスクを相対的に39%低下させた(ハザード比0.61、95%信頼区間:0.38~0.98、p=0.04)。更に、遠隔転移発生のリスクを相対的に40%低下させ(ハザード比0.60、95%信頼区間:0.43~0.84、p=0.002)、4年時点での無遠隔転移生存率は、レトロゾール群で96.6%、プラセボ群で93.7%であった(絶対差2.9%)。
薬効薬理
レトロゾールはアロマターゼの活性を競合的に阻害することにより、アンドロゲンからのエストロゲン生成を阻害し、乳癌の増殖を抑制する。
(1) アロマターゼ阻害作用22,23)
1)
レトロゾールは、ヒト胎盤ミクロソーム画分から調製したアロマターゼの活性を、競合的に阻害した(Ki値=2.1nM)。また、幼若ラットにおけるアンドロステンジオン誘発の子宮肥大は、卵巣アロマターゼを介して産生されるエストロゲンに依存するが、レトロゾールは0.3μg/kg/日以上の用量でこの子宮肥大を抑制した。
2)
閉経後進行・再発乳癌患者にレトロゾール1日1回2.5mgを反復投与したとき、アロマターゼ活性は定量下限値(99.1%)まで阻害された。
(2) 血漿中エストロゲン濃度抑制作用2,4)
閉経後進行・再発乳癌患者にレトロゾール1日1回2.5mgを連日経口投与することにより、血漿中エストラジオール濃度は投与前値(幾何平均3.55pg/mL)に対し、投与4週時点で定量下限値(1.21pg/mL)付近まで、血漿中エストロン濃度も投与前値(幾何平均13.16pg/mL)に対し、投与4週時点で定量下限値(9.90pg/mL)まで低下し、投与期間中いずれもその効果は持続した。
(3) 抗腫瘍効果24)
ラットのNMU(N-ニトロソ-N-メチルウレア)誘発乳腺腫瘍及びDMBA(7、12-ジメチルベンツアントラセン)誘発乳腺腫瘍に対し、レトロゾールは0.01mg/kg/日以上の連続経口投与(1日2回、42日間)により、投与開始3週間後から、投与終了の2週間後まで、有意に腫瘍増殖を抑制した。また、0.003mg/kg/日以上の経口投与で、新たな腫瘍形成を抑制した(投与終了時)。
(4) その他
1)
ハムスター卵巣切片(in vitro)を用いた試験において、レトロゾールはLH刺激によるエストラジオール産生を0.01μM以上の濃度で抑制したが、プロゲステロン産生については顕著な作用を示さなかった。25)また、ラット副腎切片(in vitro)においてレトロゾールは、ACTH刺激によるアルドステロン及びコルチコステロン産生に対して顕著な作用を示さなかった。26)
2)
レトロゾール1.0mg/kgの14日間経口投与により、成熟ラットの子宮重量は卵巣摘出ラットの水準まで減少した。27)また、レトロゾールは、ACTH刺激した雄性ラットの血漿コルチコステロン濃度及びアルドステロン濃度に対し影響を及ぼさなかった。28)
有効成分に関する理化学的知見
一般名
レトロゾール(Letrozole)(JAN)
化学名
4,4'-[(1H-1,2,4-Triazol-1-yl)methylene]-dibenzonitrile
構造式

分子式
C17H11N5
分子量
285.30
性状
白色の結晶性の粉末である。酢酸(100)に溶けやすく、アセトニトリルにやや溶けやすく、メタノールにやや溶けにくく、エタノール(99.5)に溶けにくく、水にほとんど溶けない。
分配係数
34.36(1-オクタノール/水)
包装
フェマーラ錠2.5mg 100錠(PTP)
主要文献及び文献請求先
主要文献
1)
Dowsett,M.et al.:Clin.Cancer Res.5(9),2338,1999
2)
社内資料:一般臨床試験
3)
Tominaga,T.et al.:Ann.Oncol.14(1),62,2003
4)
社内資料:後期第II相試験:第2次治療
5)
野村 雍夫ほか:癌と化学療法 29(4),551,2002
6)
阿部 力哉ほか:癌と化学療法 29(5),729,2002
7)
君島 伊造ほか:癌と化学療法 29(5),741,2002
8)
社内資料:閉経後健康女性を対象とした単回及び14日間反復投与試験
9)
社内資料:閉経後健康女性を対象とした単回及び28日間反復投与試験
10)
Sioufi,A.et al.:Biopharm.Drug Dispos.18(9),779,1997
11)
社内資料:In vitroにおけるレトロゾールのヒト血清蛋白・血球への結合
12)
社内資料:レトロゾール代謝に関与するヒトチトクロームP450分子種の同定
13)
社内資料:レトロゾールの各CYP分子種に対する阻害活性
14)
社内資料:[14C]レトロゾール単回経口投与時の薬物動態
15)
社内資料:肝機能低下の程度の異なる閉経後女性に単回経口投与したときの薬物動態の検討
16)
社内資料:重度肝機能障害(肝硬変)患者を対象とした単回投与試験
17)
社内資料:CYP2A6遺伝多型の薬物動態に及ぼす影響
18)
Mouridsen,H.et al.:J.Clin.Oncol.21(11),2101,2003
19)
The Breast International Group (BIG) 1-98 Collaborative Group:New Engl.J.Med.353(26),2747,2005
20)
Goss,P.E.et al.:New Engl.J.Med.349(19),1793,2003
21)
Goss,P.E.et al.:J.Natl.Cancer Instit.97(17),1262,2005
22)
社内資料:アロマターゼ活性阻害作用
23)
Geisler,J.et al.:J.Clin.Oncol.20(3),751,2002
24)
社内資料:担癌ラットに対する抗腫瘍作用
25)
社内資料:ハムスター卵巣のアロマターゼに対する選択的阻害作用(in vitro)
26)
社内資料:ラット副腎切片のステロイド産生に対する作用(in vitro)
27)
社内資料:成熟ラットの子宮重量に対する作用
28)
社内資料:ACTHで刺激した雄性ラットの血漿コルチコステロン及びアルドステロン濃度に対する作用
文献請求先
主要文献に記載の社内資料につきましても下記にご請求ください。
中外製薬株式会社 医薬情報センター
〒103-8324 東京都中央区日本橋室町2-1-1
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http://www.chugai-pharm.co.jp
製造販売業者等の氏名又は名称及び住所
製造販売
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**東京都港区虎ノ門1-23-1
販売
中外製薬株式会社
東京都中央区日本橋室町2-1-1