ComPlavin(Clopidogrel Sulfate/Aspirin)硫酸氯吡格雷/阿司匹林 ,コンプラビン配合錠
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ダウンロード
作成又は改訂年月
*2014年1月改訂(第2版)
2013年9月作成
日本標準商品分類番号
873399
日本標準商品分類番号等
国際誕生年月
2008年8月
薬効分類名
抗血小板剤
承認等
販売名
コンプラビン配合錠
販売名コード
-
3399101F1021
承認・許可番号
-
承認番号
-
22500AMX01824
-
ComPlavin
-
商標名
薬価基準収載年月
-
*2013年11月
販売開始年月
*2013年12月
貯法・使用期限等
貯 法
室温保存(アルミピロー開封後は湿気を避けて保存のこと)
使用期限
外箱に記載
規制区分
処方せん医薬品
注意-医師等の処方せんにより使用すること
組成
有効成分(1錠中)
クロピドグレル75mg(クロピドグレル硫酸塩として97.88mg)
日局アスピリン100mg
添加物
無水乳糖、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、マクロゴール、トコフェロール、結晶セルロース、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ヒプロメロース、酸化チタン、タルク、ジメチルポリシロキサン、二酸化ケイ素、カルナウバロウ、トウモロコシデンプン、ステアリン酸、軽質無水ケイ酸、メタクリル酸コポリマーLD、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、クエン酸トリエチル
性状
色・剤形
白色~微黄白色・フィルムコーティング錠
外形
直径
11mm
厚さ
6mm
約540mg
重量
識別コード
saCA
一般的名称
クロピドグレル硫酸塩/アスピリン配合錠
禁忌
(次の患者には投与しないこと)
1.
出血している患者(血友病、頭蓋内出血、消化管出血、尿路出血、喀血、硝子体出血等)[出血を助長するおそれがある。]
2.
出血傾向のある患者[血小板機能異常が起こることがあるため、出血傾向を助長するおそれがある。]
3.
本剤の成分又はサリチル酸系製剤に対し過敏症の既往歴のある患者
4.
消化性潰瘍のある患者[プロスタグランジン生合成抑制作用により、胃の血流量が減少し、消化性潰瘍を悪化させることがある。(ただし、「1.慎重投与」の項参照)]
5.
アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤等による喘息発作の誘発)又はその既往歴のある患者[重篤なアスピリン喘息発作を誘発させることがある。]
6.
出産予定日12週以内の妊婦[「6.妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照]
効能又は効果
効能又は効果/用法及び用量
経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される下記の虚血性心疾患
急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)
安定狭心症、陳旧性心筋梗塞
効能又は効果に関連する使用上の注意
1.
クロピドグレル75mg(維持量)とアスピリン100mgの併用による治療が適切と判断される場合に、本剤を使用することができる。なお、患者の状態を十分に考慮した上で、本剤の投与が適切であるか慎重に判断すること。
2.
PCIが適用予定の虚血性心疾患患者への投与は可能である。冠動脈造影により保存的治療あるいは冠動脈バイパス術が選択され、PCIを適用しない場合には以降の投与は控えること。
用法及び用量
通常、成人には、1日1回1錠(クロピドグレルとして75mg及びアスピリンとして100mg)を経口投与する。
用法及び用量に関連する使用上の注意
1.
クロピドグレルのローディングドーズ投与(投与開始日に300mgを投与すること)には本剤を用いず、クロピドグレル硫酸塩(クロピドグレルとして75mg)単剤を用いること。なお、PCI施行の4日以上前からクロピドグレルを投与されている場合、ローディングドーズ投与は必須ではない。
2.
ステント留置患者への本剤投与時には該当医療機器の添付文書を必ず参照すること。なお、原則として本剤の投与終了後は単剤の抗血小板剤に切り替えること。
3.
空腹時の投与は避けることが望ましい。
使用上の注意
慎重投与
(次の患者には慎重に投与すること)
1.
消化性潰瘍の既往歴のある患者[消化性潰瘍を再発させることがある。]
2.
血液の異常又はその既往歴のある患者[血液の異常を悪化又は再発させるおそれがある。]
3.
出血傾向の素因のある患者[出血を増強させるおそれがある。]
4.
肝障害又はその既往歴のある患者[肝障害を悪化又は再発させるおそれがある。重篤な肝障害患者では本剤の投与は控えること。]
5.
腎障害又はその既往歴のある患者[腎障害を悪化又は再発させるおそれがある。重篤な腎障害患者では本剤の投与は控えること。]
6.
気管支喘息のある患者[気管支喘息の患者の中にはアスピリン喘息患者も含まれており、それらの患者では重篤な喘息発作を誘発させることがある。]
7.
アルコールを常飲している患者[アルコールと同時に服用すると、消化管出血を誘発又は増強することがある。(「3.相互作用」の項参照)]
8.
高血圧が持続している患者[出血の危険性が高くなるおそれがある。]
9.
高齢者[出血の危険性が高くなるおそれがある。]
10.
低体重の患者[出血の危険性が高くなるおそれがある。]
11.
非ステロイド性消炎鎮痛剤の長期投与による消化性潰瘍のある患者で、本剤の長期投与が必要であり、かつミソプロストールによる治療が行われている患者[ミソプロストールは非ステロイド性消炎鎮痛剤により生じた消化性潰瘍を効能・効果としているが、ミソプロストールによる治療に抵抗性を示す消化性潰瘍もあるので、本剤を継続投与する場合には、十分経過を観察し、慎重に投与すること。]
12.
妊婦(ただし、出産予定日12週以内の妊婦は禁忌)又は妊娠している可能性のある婦人[「6.妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照]
13.
*他のチエノピリジン系薬剤(チクロピジン塩酸塩)に対し過敏症の既往歴のある患者
重要な基本的注意
1.
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、無顆粒球症、重篤な肝障害等の重大な副作用が発現することがあるので、投与開始後2ヵ月間は、2週間に1回程度の血液検査等の実施を考慮すること。[「4.副作用」の項参照]
2.
本剤を適用するにあたっては、クロピドグレル硫酸塩又はアスピリン単独投与に比べ出血のリスクが高まる可能性があることを十分考慮すること。
3.
本剤による血小板凝集抑制が問題となるような手術の場合には、14日以上前に投与を中止することが望ましい。投与中止期間中は必要に応じて単剤の抗血小板剤の使用も検討すること。また、血栓症や塞栓症のリスクの高い症例では、適切な血栓塞栓症の発症抑制策を講じること。なお、十分な休薬期間を設けることが出来ない場合は重大な出血のリスクが高まることが報告されているので十分に観察すること。手術後に本剤の再投与が必要な場合には、手術部位の止血を確認してから再開すること。[【臨床成績】、【薬効薬理】の項参照]
4.
他の出血の危険性を増加させる薬剤等との相互作用に注意するとともに、高血圧が持続する患者への投与は慎重に行い、本剤投与中は十分な血圧のコントロールを行うこと。[「1.慎重投与」、「3.相互作用」の項参照]
5.
出血の危険性及び血液学的副作用のおそれがあることから、出血を起こす危険性が高いと考えられる場合には、中止等を考慮すること。また、出血を示唆する臨床症状が疑われた場合は、直ちに血球算定等の適切な検査を実施すること。[「4.副作用」の項参照]
6.
*後天性血友病(活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)の延長、第VIII因子活性低下等)があらわれることがある。aPTTの延長等が認められた場合には、出血の有無にかかわらず、後天性血友病の可能性を考慮し、専門医と連携するなど適切な処置を行うこと。[「4.副作用」の項参照]
7.
患者には通常よりも出血しやすくなることを説明し、異常な出血が認められた場合には医師に連絡するよう注意を促すこと。また、他院(他科)を受診する際には、本剤を服用している旨を医師に必ず伝えるよう患者に注意を促すこと。[【薬効薬理】の項参照]
8.
治療中に本剤の投与を中止あるいは休薬すると、血栓塞栓症の発現リスクが高まることがあるため、単剤の抗血小板剤へ切り替えを検討すること。また、本剤を飲み忘れた場合には気づいた時に1錠服用するよう指導すること。ただし、次の服用時間に近い場合には飲み忘れた分は服用せずに次回服用時に1錠を服用することとし、倍量を服用しないよう患者に指導すること。
9.
本剤とワルファリン等の抗凝固薬との併用は、抗血栓作用のある薬剤を3成分同時に服用することになり、出血リスクを高めるおそれがあるため、ワルファリン等の抗凝固薬を併用するベネフィットがリスクを上回ると判断される場合にのみ投与すること。[「3.相互作用」の項参照]
相互作用
相互作用の概略
クロピドグレルは、主にCYP3A4、CYP1A2、CYP2C19及びCYP2B6により活性代謝物に代謝される。
併用注意
(併用に注意すること)
1. 薬剤名等
*非ステロイド性消炎鎮痛薬(ナプロキセン、インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム等)
臨床症状・措置方法
クロピドグレルとの併用により、消化管からの出血が助長されたとの報告がある。
機序・危険因子
クロピドグレルは血小板凝集抑制作用を有するため、これら薬剤と併用すると消化管出血を助長すると考えられている。
2. 薬剤名等
*非ステロイド性消炎鎮痛薬(ナプロキセン、インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム等)
臨床症状・措置方法
アスピリンとの併用により、出血及び腎機能の低下を起こすことがある。
機序・危険因子
機序不明
3. 薬剤名等
*血小板凝集抑制作用を有する薬剤(シロスタゾール、トロンボキサン合成酵素阻害剤(オザグレルナトリウム)、プロスタグランジンE1製剤、E1及びI2誘導体(ベラプロストナトリウム等)、サルポグレラート塩酸塩、イコサペント酸エチル等)
血栓溶解剤(ウロキナーゼ、t-PA製剤(アルテプラーゼ等)等)
臨床症状・措置方法
*これら薬剤との併用により、出血の危険性が増大するおそれがあるので、観察を十分に行い、注意すること。
機序・危険因子
*本剤は血小板凝集抑制作用を有するため、これら薬剤との併用により出血傾向が増強されるおそれがある。
4. 薬剤名等
*血液凝固阻止剤(ヘパリン製剤、ダナパロイドナトリウム、第Xa因子阻害剤(リバーロキサバン等)、抗トロンビン剤(ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩等)、トロンボモデュリン アルファ等)
臨床症状・措置方法
*これら薬剤との併用により、出血の危険性が増大するおそれがあるので、観察を十分に行い、注意すること。
機序・危険因子
*本剤は血小板凝集抑制作用を有するため、これら薬剤との併用により出血傾向が増強されるおそれがある。
5. 薬剤名等
*クマリン系抗凝固剤(ワルファリンカリウム)
臨床症状・措置方法
*出血した時、それを助長するおそれがある。また、アスピリンはクマリン系抗凝固剤の作用を増強し、出血時間の延長、消化管出血等を起こすことがあるので、クマリン系抗凝固剤を減量するなど慎重に投与すること。
機序・危険因子
*アスピリンは血漿蛋白に結合したクマリン系抗凝固剤と置換し、遊離させる。また、本剤は血小板凝集抑制作用、アスピリンは消化管刺激による出血作用を有する。
6. 薬剤名等
薬物代謝酵素(CYP2C19)を阻害する薬剤
オメプラゾール
臨床症状・措置方法
クロピドグレルの作用が減弱するおそれがある。
機序・危険因子
CYP2C19を阻害することにより、クロピドグレルの活性代謝物の血中濃度が低下する。
7. 薬剤名等
糖尿病用剤(ヒトインスリン、トルブタミド等)
臨床症状・措置方法
アスピリンは糖尿病用剤の作用を増強し、低血糖を起こすことがあるので、糖尿病用剤を減量するなど慎重に投与すること。
機序・危険因子
アスピリン(高用量投与時)は血漿蛋白に結合した糖尿病用剤と置換し、遊離させる。また、アスピリンは大量で血糖降下作用を有する。
8. 薬剤名等
メトトレキサート
臨床症状・措置方法
*アスピリンとの併用により、メトトレキサートの副作用(骨髄抑制、肝・腎・消化器障害等)が増強されることがある。
機序・危険因子
アスピリン(高用量投与時)は血漿蛋白に結合したメトトレキサートと置換し、遊離させる。また、アスピリンはメトトレキサートの腎排泄を阻害すると考えられている。
9. 薬剤名等
バルプロ酸ナトリウム
臨床症状・措置方法
アスピリンはバルプロ酸ナトリウムの作用を増強し、振戦等を起こすことがある。
機序・危険因子
アスピリン(高用量投与時)は血漿蛋白に結合したバルプロ酸ナトリウムと置換し、遊離させる。
10. 薬剤名等
フェニトイン
臨床症状・措置方法
アスピリンは総フェニトイン濃度を低下させるが、非結合型フェニトイン濃度を低下させないとの報告があるので、総フェニトイン濃度に基づいて増量する際には臨床症状等を慎重に観察すること。
機序・危険因子
アスピリン(高用量投与時)は血漿蛋白に結合したフェニトインと置換し、遊離させる。
11. 薬剤名等
副腎皮質ホルモン剤(ベタメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン等)
臨床症状・措置方法
アスピリン(高用量投与時)との併用時に副腎皮質ホルモン剤を減量すると、サリチル酸中毒を起こすことが報告されている。また、消化管出血を増強させることが考えられる。
機序・危険因子
機序不明
12. 薬剤名等
リチウム製剤
臨床症状・措置方法
アスピリンとの併用により、リチウム中毒を起こすことが報告されている。
機序・危険因子
アスピリン(高用量投与時)は腎のプロスタグランジンの生合成を抑制し、腎血流量を減少させることにより、リチウムの腎排泄を低下させることが考えられる。
13. 薬剤名等
チアジド系利尿剤(ヒドロクロロチアジド等)
ループ利尿剤(フロセミド)
臨床症状・措置方法
アスピリンはこれらの薬剤の作用を減弱させることが報告されている。
機序・危険因子
アスピリンは腎のプロスタグランジンの生合成を抑制して、水、塩類の体内貯留が生じ、利尿剤の水、塩類排泄作用に拮抗するためと考えられる。
14. 薬剤名等
β遮断剤(プロプラノロール塩酸塩、ピンドロール等)
ACE阻害剤(エナラプリルマレイン酸塩等)
臨床症状・措置方法
アスピリンはこれらの薬剤の作用を減弱させることが報告されている。
機序・危険因子
アスピリンは血管拡張作用を有する腎プロスタグランジンの生合成、遊離を抑制し、血圧を上昇させることが考えられる。
15. 薬剤名等
ニトログリセリン製剤
臨床症状・措置方法
アスピリンはニトログリセリンの作用を減弱させることがある。
機序・危険因子
アスピリンはプロスタグランジンの生合成を抑制することにより、冠動脈を収縮させ、ニトログリセリンの作用を減弱させることが考えられる。
16. 薬剤名等
*尿酸排泄促進剤(プロベネシド、ベンズブロマロン)
臨床症状・措置方法
アスピリンはこれらの薬剤の作用を減弱させることがある。
機序・危険因子
アスピリン(高用量投与時)はこれらの薬剤の尿酸排泄に拮抗する。
17. 薬剤名等
*イブプロフェン
ナプロキセン
臨床症状・措置方法
アスピリンの血小板凝集抑制作用を減弱するとの報告がある。
機序・危険因子
血小板のシクロオキシゲナーゼ-1とアスピリンの結合を阻害するためと考えられる。
18. 薬剤名等
炭酸脱水酵素阻害剤(アセタゾラミド等)
臨床症状・措置方法
アスピリンはアセタゾラミドの副作用を増強し、嗜眠、錯乱等の中枢神経系症状、代謝性アシドーシス等を起こすことが報告されている。
機序・危険因子
アスピリンは血漿蛋白に結合したアセタゾラミドと置換し、遊離させる。
19. 薬剤名等
ドネペジル塩酸塩
臨床症状・措置方法
アスピリンとの併用により、消化性潰瘍を起こすことがある。
機序・危険因子
コリン系が賦活され胃酸分泌が促進される。
20. 薬剤名等
タクロリムス水和物、シクロスポリン
臨床症状・措置方法
アスピリンとの併用により、腎障害が発現することがある。
機序・危険因子
腎障害の副作用が相互に増強されると考えられる。
21. 薬剤名等
ザフィルルカスト
臨床症状・措置方法
アスピリンとの併用により、ザフィルルカストの血漿中濃度が上昇することがある。
機序・危険因子
機序不明
22. 薬剤名等
プロスタグランジンD2、トロンボキサンA2受容体拮抗剤(ラマトロバン、セラトロダスト)
臨床症状・措置方法
ヒト血漿蛋白結合に対する相互作用の検討(in vitro)において、アスピリンによりこれらの薬剤の非結合型分率が上昇することがある。
機序・危険因子
これら薬剤がアスピリンと血漿蛋白結合部位で置換し、遊離型血中濃度が上昇すると考えられる。
23. 薬剤名等
*選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)(フルボキサミンマレイン酸塩、塩酸セルトラリン等)
臨床症状・措置方法
*出血を助長するおそれがある。また、アスピリンとの併用により、皮膚の異常出血(斑状出血、紫斑等)、出血症状(胃腸出血等)が報告されている。
機序・危険因子
*SSRIの投与により血小板凝集が阻害され、本剤との併用により出血を助長すると考えられる。
24. 薬剤名等
アルコール
臨床症状・措置方法
アスピリンとの併用により、消化管出血が増強されるおそれがある。
機序・危険因子
アルコールによる胃粘膜障害とアスピリンのプロスタグランジン合成阻害作用により、相加的に消化管出血が増強すると考えられる。
副作用
副作用等発現状況の概要
経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される虚血性心疾患患者に本剤を投与した臨床試験は実施されていないが、これらの患者にクロピドグレル硫酸塩(クロピドグレルとして初回量300mg、維持量75mg/日)とアスピリン(81~100mg/日)を併用投与した国内臨床試験1,243例中報告された副作用(臨床検査値異常を含む)は35.6%(443例)で、主な症状は、皮下出血5.7%(71例)等の出血傾向であった。主な臨床検査値異常はALT(GPT)上昇7.9%(98例)、AST(GOT)上昇5.6%(69例)、γ-GTP上昇5.1%(64例)等の肝機能障害、好中球減少0.9%(11例)等の血液障害であった。
重大な副作用
(クロピドグレル硫酸塩あるいはアスピリンで報告されているもの)
以下、頻度(%)はクロピドグレル硫酸塩とアスピリンを併用した国内臨床試験で認められたものを示す。また、それ以外にクロピドグレル硫酸塩又はアスピリンの服用時に認められる副作用を頻度不明として示す。
1. 出血(頭蓋内出血、胃腸出血等の出血)
[脳出血等の頭蓋内出血、硬膜下血腫等]
脳出血等の頭蓋内出血(初期症状:頭痛、悪心・嘔吐、意識障害、片麻痺等)(1%未満)、硬膜下血腫(頻度不明)等があらわれることがある。このような場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
[吐血、下血、胃腸出血、眼底出血、関節血腫、肺出血等]
吐血(頻度不明)、下血(1%未満)、胃腸出血(1%未満)、眼底出血(1%未満)、関節血腫(頻度不明)、腹部血腫(0.1%未満)、後腹膜出血(頻度不明)、肺出血(頻度不明)等があらわれることがある。このような場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
2. 胃・十二指腸潰瘍(1%未満)、小腸・大腸潰瘍(頻度不明)
出血を伴う胃・十二指腸潰瘍、小腸・大腸潰瘍があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
3. 肝機能障害、黄疸
ALT(GPT)上昇(7.9%)、γ-GTP上昇(5.1%)、AST(GOT)上昇(5.6%)、黄疸(頻度不明)、急性肝不全(頻度不明)、肝炎(頻度不明)等があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し、必要に応じ適切な処置を行うこと。
4. 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)(頻度不明)
TTPがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、TTPの初期症状である倦怠感、食欲不振、紫斑等の出血症状、意識障害等の精神・神経症状、血小板減少、破砕赤血球の出現を認める溶血性貧血、発熱、腎機能障害等が発現した場合には、直ちに投与を中止し、血液検査(網赤血球、破砕赤血球の同定を含む)を実施し、必要に応じ血漿交換等の適切な処置を行うこと。
5. *間質性肺炎(頻度不明)、好酸球性肺炎(頻度不明)
間質性肺炎、好酸球性肺炎があらわれることがあるので、観察を十分に行い、咳嗽、呼吸困難、発熱、肺音の異常等が認められた場合には、速やかに胸部X線、胸部CT等の検査を実施すること。異常が認められた場合には、投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
6. 血小板減少(1%未満)、白血球減少(1%未満)、無顆粒球症(頻度不明)、再生不良性貧血を含む汎血球減少症(頻度不明)
血小板減少、白血球減少、無顆粒球症、再生不良性貧血を含む汎血球減少症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
7. 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形滲出性紅斑、剥脱性皮膚炎(いずれも頻度不明)
中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、多形滲出性紅斑、剥脱性皮膚炎があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
8. *薬剤性過敏症症候群(頻度不明)
初期症状として発疹、発熱がみられ、更に肝機能障害、リンパ節腫脹、白血球増加、好酸球増多、異型リンパ球出現等を伴う遅発性の重篤な過敏症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。なお、ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)等のウイルスの再活性化を伴うことが多く、投与中止後も発疹、発熱、肝機能障害等の症状が再燃あるいは遷延化することがあるので注意すること。
9. *後天性血友病(頻度不明)
後天性血友病があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
10. 横紋筋融解症(頻度不明)
筋肉痛、脱力感、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇を特徴とする横紋筋融解症があらわれ、これに伴って急性腎不全等の重篤な腎障害があらわれることがあるので、このような場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11. ショック、アナフィラキシー(頻度不明)
ショックやアナフィラキシー(呼吸困難、全身潮紅、血管浮腫、蕁麻疹等)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
12. 喘息発作(頻度不明)
喘息発作を誘発することがある。
その他の副作用
1. 血液
5%以上注1)
皮下出血
2. 血液
0.1~5%未満注1)
貧血、紫斑(病)、鼻出血、止血延長、眼出血、歯肉出血、痔出血、血痰、穿刺部位出血、処置後出血、口腔内出血、術中出血、カテーテル留置部位血腫、ヘモグロビン減少、赤血球減少、ヘマトクリット減少、好中球減少、好酸球増多
3. 血液
0.1%未満注1)
月経過多、口唇出血、陰茎出血、尿道出血
4. 血液
頻度不明注2)
好酸球減少、血清病
5. 肝臓
0.1~5%未満注1)
Al-P上昇、LDH上昇、血清ビリルビン上昇
6. 肝臓
頻度不明注2)
胆石症、胆嚢炎
7. 消化器
0.1~5%未満注1)
消化器不快感、腹痛、胃腸炎、食道炎、下痢、便秘、嘔気、口内炎
8. 消化器
0.1%未満注1)
腹部膨満、腸管虚血、消化不良、嘔吐、食欲不振
9. 消化器
頻度不明注2)
耳下腺痛、歯肉腫脹、歯肉(齦)炎、唾液分泌過多、粘膜出血、口渇、胃腸障害、胸やけ、口唇腫脹、大腸炎(潰瘍性大腸炎、リンパ球性大腸炎)、膵炎
10. 代謝異常
0.1~5%未満注1)
中性脂肪上昇、CK(CPK)上昇、K上昇、血糖上昇、血中尿酸上昇
11. 代謝異常
0.1%未満注1)
Na下降、総コレステロール上昇、総蛋白低下
12. 代謝異常
頻度不明注2)
アルブミン低下、アミラーゼ上昇、Cl下降、Na上昇、K下降、代謝性アシドーシス、低血糖
13. 過敏症
0.1~5%未満注1)
発疹、そう痒感、湿疹、蕁麻疹、紅斑
14. 過敏症
頻度不明注2)
斑状丘疹性皮疹、血管浮腫、気管支痙攣、光線過敏性皮膚炎、眼瞼浮腫
15. 皮膚
0.1~5%未満注1)
脱毛
16. 皮膚
0.1%未満注1)
皮膚乾燥
17. 皮膚
頻度不明注2)
膨疹、発汗、水疱性皮疹、扁平苔癬
18. 感覚器
0.1~5%未満注1)
眼充血
19. 感覚器
0.1%未満注1)
味覚異常
20. 感覚器
頻度不明注2)
眼精疲労、眼瞼炎、結膜炎、複視、嗅覚障害、視力低下、角膜炎、耳鳴、難聴
21. 精神神経系
0.1~5%未満注1)
頭痛、めまい、高血圧
22. 精神神経系
0.1%未満注1)
不眠症、意識障害
23. 精神神経系
頻度不明注2)
意識喪失、音声変調、低血圧、てんかん、眠気、皮膚感覚過敏、流涙、筋骨格硬直(肩こり、手指硬直)、気分変動、しびれ
24. 循環器
0.1~5%未満注1)
浮腫、不整脈
25. 循環器
0.1%未満注1)
徐脈
26. 循環器
頻度不明注2)
胸痛、血管炎、心電図異常、脈拍数低下、頻脈、動悸、心窩部痛
27. 腎臓
0.1~5%未満注1)
BUN上昇、尿蛋白増加、血尿、尿沈渣異常、腎機能障害
28. 腎臓
0.1%未満注1)
尿路感染、血中クレアチニン上昇、尿糖陽性
29. 腎臓
頻度不明注2)
急性腎不全、尿閉、頻尿、糸球体症
30. 呼吸器
0.1%未満注1)
気管支肺炎、咳
31. 呼吸器
頻度不明注2)
胸水、痰、気管支炎、鼻炎、過呼吸
32. その他
0.1~5%未満注1)
関節炎、発熱、CRP上昇
33. その他
0.1%未満注1)
多発性関節炎、肩痛、腱鞘炎、注射部位腫脹、異常感(浮遊感、気分不良)
34. その他
頻度不明注2)
ほてり、多発性筋炎、滑液包炎、男性乳房痛、乳汁分泌過多、乳腺炎、倦怠感、腰痛、筋痛、関節痛
その他の副作用の注意
注1)クロピドグレル硫酸塩とアスピリンを併用した国内臨床試験から算出した発現頻度
注2)クロピドグレル硫酸塩とアスピリンを併用した国内臨床試験以外で認められている副作用のため頻度不明
高齢者への投与
高齢者では造血機能、腎機能、肝機能等の生理機能が低下していることが多く、また体重が少ない傾向があり、出血等の副作用があらわれやすいので、患者の状態を観察しながら、慎重に投与すること。
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
1.
出産予定日12週以内の妊婦には投与しないこと。[アスピリンにより妊娠期間の延長、動脈管の早期閉鎖、子宮収縮の抑制、分娩時出血の増加につながるおそれがある。海外での大規模な疫学調査では、妊娠中のアスピリン服用と先天異常児出産の因果関係は否定的であるが、長期連用した場合は、母体の貧血、産前産後の出血、分娩時間の延長、難産、死産、新生児の体重減少・死亡などの危険が高くなるおそれを否定できないとの報告がある。また、ヒトで妊娠末期にアスピリンを投与された患者及びその新生児に出血異常があらわれたとの報告がある。さらに、妊娠末期のラットにアスピリンを投与した実験で、弱い胎児の動脈管収縮が報告されている。]
2.
妊婦(ただし、出産予定日12週以内の妊婦は除く)又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[アスピリンの動物実験(ラット)で催奇形性作用があらわれたとの報告がある。妊娠期間の延長、過期産につながるおそれがある。また、クロピドグレルにおいては妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]
3.
授乳中の婦人には本剤投与中は授乳を避けさせること。[クロピドグレルにおいて動物実験(ラット)で乳汁中に移行すること及びアスピリンにおいてヒト乳汁中へ移行することが報告されている。]
小児等への投与
小児等に対する安全性は確立していない。[使用経験がない。]
過量投与
徴候と症状
アスピリンの過量投与により、耳鳴、めまい、頭痛、嘔吐、難聴、軽度の頻呼吸等の初期症状から血中濃度の上昇に伴い、重度の過呼吸、呼吸性アルカローシス、代謝性アシドーシス、痙攣、昏睡、呼吸不全等が認められる。アスピリン及びクロピドグレルの過量投与により凝固時間の延長及び出血が生じるおそれがある。
処置
催吐、胃洗浄、活性炭投与(ただし、催吐及び胃洗浄後)、輸液注入によるアシドーシス是正、アルカリ尿促進(ただし、腎機能が正常の場合)、血液透析、腹膜透析を必要に応じて行う。また、出血が認められた場合、適切な処置を取ること。クロピドグレル又はアスピリンの特異的な解毒剤は知られていないので、緊急措置が必要な出血の場合は血小板輸血を考慮すること。
適用上の注意
1. 服用時
本剤は腸溶性の内核を含む有核錠であるので、割ったり、砕いたり、すりつぶしたりしないで、そのままかまずに服用させること。
2. 薬剤交付時
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。[PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔を起こして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている。]
その他の注意
1.
海外で実施された健康成人を対象としたクロピドグレルの臨床薬理試験において、クロピドグレル300mgを初回投与後24時間の5μM ADP惹起血小板凝集に対する抑制率(血小板凝集抑制率:%)は、CYP2C19の代謝能に応じて、Ultrarapid metabolizer(UM)群、Extensive metabolizer(EM)群、Intermediate metabolizer(IM)群、Poor metabolizer(PM)群の順に、40±21、39±28、37±21、24±26であり、その後4日間にわたってクロピドグレル75mg/日を投与した後の血小板凝集抑制率(%)は、それぞれ56±13、58±19、60±18、37±23と、PM群においてクロピドグレルの血小板凝集抑制作用が低下した。[【薬物動態】の項参照]
2.
海外における経皮的冠動脈形成術施行を予定した患者を対象としたクロピドグレルの臨床試験1)及び複数の観察研究2~5)において、CYP2C19のPMもしくはIMでは、CYP2C19のEMと比較して、クロピドグレル投与後の心血管系イベント発症率の増加が報告されている。
3.
In vitroの試験において、アスピリン等のグルクロン酸抱合により代謝される薬剤が抗ウイルス剤(ジドブジン)のグルクロン酸抱合を阻害したとの報告がある。
4.
非ステロイド性消炎鎮痛剤を長期間投与されている女性において、一時的な不妊が認められたとの報告がある。
薬物動態
1. 吸収
(1) 生物学的同等性
健康成人男性(55名)に本剤(クロピドグレル硫酸塩(クロピドグレル75mg)/アスピリン100mg)1錠又はクロピドグレル硫酸塩錠(クロピドグレル75mg)1錠とアスピリン腸溶錠100mg1錠を絶食下でクロスオーバー法により単回経口投与した時のクロピドグレル未変化体及びアスピリン未変化体の血漿中濃度推移は次図のとおりであった。

また、その時のクロピドグレル、アスピリン及びそれぞれの代謝物の薬物動態パラメータは次表のとおりであった。
さらに、健康成人男性(96名)に本剤(クロピドグレル硫酸塩(クロピドグレル75mg)/アスピリン100mg)1錠又はクロピドグレル硫酸塩錠(クロピドグレル75mg)1錠とアスピリン腸溶錠100mg1錠を絶食下で4期クロスオーバー法により単回経口投与した時のアスピリン未変化体の血漿中濃度推移は次図のとおりであった。

また、その時のアスピリン未変化体の薬物動態パラメータは次表のとおりであった。
健康成人男性(18名)に本剤1錠を絶食下又は食後に単回経口投与し、クロピドグレル及びアスピリンの吸収に与える食事の影響をクロスオーバー法で検討した時のクロピドグレル及びアスピリンの薬物動態パラメータは次表のとおりであった。
(2) 食事の影響
-
(1) クロピドグレル
2. 代謝
(1) クロピドグレル
クロピドグレル硫酸塩は吸収された後、肝臓で主に2つの経路で代謝される。すなわち、1)エステラーゼにより非活性代謝物であるSR26334(主代謝物)を生成する経路と、2)薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)による酸化型代謝物を生成する経路である。後者の経路を経由して、活性代謝物H4が生成される6)。
クロピドグレルの肝酸化型代謝に関与するチトクロームP450分子種は、主にCYP3A4、CYP1A2、CYP2C19、CYP2B6である7, 8)(in vitro)。また、SR26334はCYP2C9を阻害する9)(in vitro)。
(2) アスピリン
アスピリンは、腸管での吸収過程及び生体内(主として肝臓)でサリチル酸に加水分解される。サリチル酸は更に生体内でグリシン抱合及びグルクロン酸抱合を受け、また、ごく一部は水酸化を受けゲンチジン酸に代謝される。
3. 分布
(1) クロピドグレル:参考(動物実験)
ラットに14C-4-クロピドグレル硫酸塩(クロピドグレルとして5.0mg/kg)を単回経口投与した場合、放射能濃度は、大部分の臓器において投与0.25~2時間後に最高値に達した。放射能濃度は、消化管壁・肝臓の順に高く、また脳、脊髄及び骨格筋では低かった10)。また、反復投与による各臓器への蓄積性は認められていない11)。
(2) アスピリン
アスピリンの代謝物であるサリチル酸は、全身の組織及び体液中に広く分布する。
4. 排泄
(1) クロピドグレル:参考(海外データ)
健康成人に14C-4-クロピドグレル硫酸塩(クロピドグレルとして75mg)を単回経口投与した場合、投与5日後までの放射能の累積排泄率は投与放射能の約92%に達し、尿中には約41%、糞中には約51%が排泄された12)。
(2) アスピリン
経口投与後、投与量の大部分がサリチル酸及びその抱合体として尿中に排泄される。
5. 肝機能障害患者での体内動態
クロピドグレル:参考(海外データ)
肝硬変患者と健康成人にクロピドグレル硫酸塩(クロピドグレルとして75mg/日)を10日間反復経口投与した結果、未変化体のCmaxが肝硬変患者において健康成人に比較して大きく上昇し、肝機能の低下によるクロピドグレル硫酸塩の代謝への影響が示唆された。SR26334の薬物動態パラメータには差が認められなかった13)。
6. 腎機能障害患者での体内動態
クロピドグレル:参考(海外データ)
慢性腎不全患者をクレアチニンクリアランスにより重度(5~15mL/分)と中等度(30~60mL/分)の2グループに分け、クロピドグレル硫酸塩(クロピドグレルとして75mg/日)を8日間反復経口投与した結果、重度慢性腎不全患者において中等度慢性腎不全患者に比べSR26334のAUCは低かった14)。
7. CYP2C19遺伝子多型がクロピドグレルの薬物動態に及ぼす影響:参考(海外データ)
健康成人40例をCYP2C19の代謝能に応じて4群(各群10例)に分け、クロピドグレルとして初日に300mg、その後75mg/日を4日間投与する試験を実施した。CYP2C19の2つの遺伝子多型(CYP2C19*2、CYP2C19*3)についていずれかをホモ接合体又はいずれもヘテロ接合体としてもつ患者群(PM群)では、活性代謝物H4のAUC及びCmaxが、野生型ホモ接合体群(EM群:CYP2C19*1/*1)と比較して低下した。なお、日本人におけるPMの頻度は、18~22.5%との報告がある15)。
薬物動態の表
クロピドグレル、アスピリン及びそれぞれの代謝物の薬物動態パラメータ
|
|
|
Cmax
(ng/mL) |
Tmax※
(h) |
AUC0-t※※
(ng・h/mL) |
t1/2z
(h) |
本剤 |
クロピドグレル |
未変化体 |
2.12±3.00 |
0.75 |
2.59±3.19 |
4.53±3.18 |
本剤 |
クロピドグレル |
活性代謝物H4 |
8.92±5.11 |
0.75 |
8.83±4.69 |
0.460±0.219 |
本剤 |
アスピリン |
未変化体 |
809±445 |
5.50 |
1070±357 |
0.437±0.152 |
本剤 |
アスピリン |
サリチル酸 |
4820±1410 |
6.50 |
24700±6540 |
2.25±0.625 |
単剤併用 |
クロピドグレル |
未変化体 |
1.98±2.75 |
0.75 |
2.88±3.86 |
5.29±4.28 |
単剤併用 |
クロピドグレル |
活性代謝物H4 |
8.93±4.52 |
0.75 |
9.22±4.54 |
0.438±0.159 |
単剤併用 |
アスピリン |
未変化体 |
853±417 |
4.50 |
1040±366 |
0.391±0.0877 |
単剤併用 |
アスピリン |
サリチル酸 |
5150±1450 |
6.00 |
25300±6560 |
2.28±0.676 |
(平均値±標準偏差)
※中央値
※※クロピドグレル:0~24時間、活性代謝物H4:0~4時間、アスピリン及びサリチル酸:0~16時間
アスピリン未変化体の薬物動態パラメータ
|
Cmax
(ng/mL) |
Tmax※
(h) |
AUC0-16
(ng・h/mL) |
t1/2z
(h) |
本剤 |
821±365 |
5.00 |
1090±352 |
0.495±0.236 |
単剤併用 |
750±355 |
4.75 |
961±304 |
0.471±0.496 |
(平均値±標準偏差)
※中央値
本剤を絶食下又は食後に単回経口投与した時の薬物動態パラメータ
|
|
Cmax
(ng/mL) |
Tmax※
(h) |
AUC
(ng・h/mL) |
クロピドグレル |
絶食下 |
1.39±1.66 |
0.75 |
1.84±2.09 |
クロピドグレル |
食後 |
1.08±0.54 |
2.50 |
2.62±1.31 |
アスピリン |
絶食下 |
727±483 |
4.50 |
809±411 |
アスピリン |
食後 |
1010±372 |
5.50 |
1050±275 |
(平均値±標準偏差)
※中央値
健康成人におけるCYP2C19遺伝子多型がクロピドグレル活性代謝物H4の薬物動態パラメータに及ぼす影響
|
投与量 |
CYP2C19遺伝子型注1)
UM |
CYP2C19遺伝子型注1)
EM |
CYP2C19遺伝子型注1)
IM |
CYP2C19遺伝子型注1)
PM |
Cmax
(ng/mL) |
300mg
(1日目) |
24±10 |
32±21 |
23±11 |
11±4 |
Cmax
(ng/mL) |
75mg
(5日目) |
12±6 |
13±7 |
12±5 |
4±1 |
AUC0-Tlast
(ng・h/mL) |
300mg
(1日目) |
33±11 |
39±24 |
31±14 |
14±6 |
AUC0-Tlast
(ng・h/mL) |
75mg
(5日目) |
11±5 |
12±6 |
10±4 |
3±1 |
(mean±S.D.)
注1)UM:CYP2C19*1/*17あるいはCYP2C19*17/*17
EM:CYP2C19*1/*1
IM:CYP2C19*1/*2あるいはCYP2C19*1/*3
PM:CYP2C19*2/*2あるいはCYP2C19*2/*3
臨床成績
(1) 急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞)
非ST上昇急性冠症候群患者を対象に、アスピリン81~100mg/日を基礎薬とし、クロピドグレル硫酸塩(クロピドグレルとして初回量300mg、維持量75mg/日)についてチクロピジン塩酸塩200mg/日を対照薬として行われた二重盲検比較試験(799例)における有効性イベント(死亡、急性心筋梗塞、血行再建術の施行)の発現率を解析したところ、チクロピジン塩酸塩9.52%(38/399例)に対しクロピドグレル硫酸塩10.25%(41/400例)であり、クロピドグレル硫酸塩の有効性はチクロピジン塩酸塩と同程度であることが示唆された(群間差点推定値-0.73%[両側95%信頼区間:-4.87、3.41])。一方、副作用発現率は、チクロピジン塩酸塩55.3%(219/396例)に対しクロピドグレル硫酸塩44.9%(178/396例)とクロピドグレル硫酸塩で低かった(群間差点推定値10.35%[両側95%信頼区間:3.43、17.28])。また、重大な出血、血液障害、肝機能障害及び投与中止に至った副作用の発現率の総計は、チクロピジン塩酸塩29.57%(118/399例)に対しクロピドグレル硫酸塩が24.25%(97/400例)であり、冠動脈バイパス術施行の有無を考慮した検定ではクロピドグレル硫酸塩が有意に低かった(p=0.0358)。出血性イベント(有害事象)の発現率はクロピドグレル硫酸塩で7.75%(31/400例)、チクロピジン塩酸塩で5.01%(20/399例)(Pearson’s χ2検定:p=0.1135)であり、出血性イベント(副作用)の発現率はクロピドグレル硫酸塩で2.00%(8/400例)、チクロピジン塩酸塩で2.01%(8/399例)(Pearson’s χ2検定:p=0.9960)であった。また、投与開始1~7日目に発現した出血性イベント(有害事象)はクロピドグレル硫酸塩で3.50%(14/400例)、チクロピジン塩酸塩で3.01%(12/399例)であった。重大な出血の発現率は、チクロピジン塩酸塩における冠動脈バイパス術非施行例では2.62%(10/382例)、冠動脈バイパス術施行例では70.59%(12/17例)であったのに対し、クロピドグレル硫酸塩ではそれぞれ1.88%(7/373例)、59.26%(16/27例)であった。また、クロピドグレル硫酸塩の冠動脈バイパス術施行例における重大な出血の発現率は、冠動脈バイパス術施行前の休薬期間が7日以上の症例では3/7例(42.9%)であったのに対し、同7日未満の症例では13/20例(65.0%)であった16)。
(2) 安定狭心症、陳旧性心筋梗塞
経皮的冠動脈形成術が適用される安定狭心症/陳旧性心筋梗塞患者を対象に、アスピリン81~100mg/日を基礎薬とし、クロピドグレル硫酸塩(クロピドグレルとして初回量300mg、維持量75mg/日)についてチクロピジン塩酸塩200mg/日を対照薬として行われた二重盲検比較試験(931例)において12週目までの主要心イベント(全ての死亡、急性心筋梗塞、血行再建術の施行、ステント血栓症)の累積発現率を解析したところ、チクロピジン塩酸塩9.7%(発現割合:45/465例)に対しクロピドグレル硫酸塩9.0%(発現割合:43/466例)であった(ハザード比0.945[両側95%信頼区間:0.622、1.436])。また、主要心・脳血管イベント(全ての死亡、急性心筋梗塞、血行再建術の施行、ステント血栓症、脳卒中)の累積発現率も同様に、チクロピジン塩酸塩10.4%(発現割合:48/465例)に対しクロピドグレル硫酸塩9.0%(発現割合:43/466例)であり(ハザード比0.886[両側95%信頼区間:0.587、1.337])、クロピドグレル硫酸塩の有効性はチクロピジン塩酸塩と同程度であることが示唆された。一方、副作用発現割合は、チクロピジン塩酸塩39.8%(199/500例)に対しクロピドグレル硫酸塩20.2%(101/499例)とクロピドグレル硫酸塩で低かった。また、重大な出血、血液障害、肝機能障害及び投与中止に至った副作用を複合した指標の12週目までの累積発現率は、チクロピジン塩酸塩30.9%(発現割合:159/465例)に対しクロピドグレル硫酸塩が8.9%(発現割合:47/466例)であり、クロピドグレル硫酸塩が有意に低かった(stratified log-rank test※:p<0.0001、ハザード比0.259[両側95%信頼区間:0.187、0.359])。出血性イベントの12週目までの累積発現率はクロピドグレル硫酸塩1.3%(発現割合:6/466例)、チクロピジン塩酸塩0.9%(発現割合:4/465例)で有意な差は認められなかった(stratified log-rank test※:p=0.5292、ハザード比1.497[両側95%信頼区間:0.422、5.306])17)。
※:アスピリンの前治療状況を因子としたstratified log-rank test
2. 海外での臨床成績
CURE試験
非ST上昇急性冠症候群患者12,562例を対象とした二重盲検比較試験(CURE)で、アスピリン75~325mg/日を基礎薬とし、クロピドグレル硫酸塩(クロピドグレルとして初回量300mg、維持量75mg/日)についてプラセボを対照に、血管性事故(心血管死、心筋梗塞及び脳卒中)発症のリスク減少効果を検討し、クロピドグレル硫酸塩は19.6%の相対リスク減少効果を有することが示された(p<0.001)。また、血管性事故(心血管死、心筋梗塞、脳卒中及び治療抵抗性虚血)発症のリスク減少効果についても、クロピドグレル硫酸塩は13.7%の相対リスク減少効果を有することが示された(p<0.001)。なお、生命を脅かす出血の発現率には両群間に差は認められなかった(p=0.1251)18)。
薬効薬理
1. 薬理作用
(1)
クロピドグレル硫酸塩はin vitroでは血小板凝集抑制作用を発現せず、経口投与後、肝で代謝を受けて活性代謝物となり、ADP刺激による血小板の活性化に基づく血小板凝集を抑制する19)。ラットではコラーゲン及び低濃度トロンビンによる血小板凝集の抑制も認められている。
(2)
クロピドグレル硫酸塩は、中大脳動脈血栓モデル(ラット)20)、動静脈シャントモデル(ラット)21)、冠状動脈周期的血流減少モデル(イヌ)22)、頸動脈バルーン内皮傷害モデル(ウサギ)23)、ステント留置動静脈シャントモデル(ウサギ)23)において血栓形成を抑制し、中大脳動脈脳血栓モデルでは血栓形成抑制に基づいて梗塞サイズを縮小した。頸動脈バルーン内皮傷害モデル、ステント留置動静脈シャントモデルにおける血栓形成抑制効果はアスピリンと併用したとき増強した。
2. 作用機序
(1)
クロピドグレル硫酸塩の活性代謝物が、不可逆的に血小板のADP受容体サブタイプP2Y1224)に作用し、ADPの結合を阻害することにより、血小板の活性化に基づく血小板凝集を抑制する25)。
(2)
アスピリンはシクロオキシゲナーゼ1を阻害することにより、トロンボキサンA2の合成を阻害し、血小板凝集を抑制する。
有効成分に関する理化学的知見
1. クロピドグレル硫酸塩
-
一般名
-
クロピドグレル硫酸塩(Clopidogrel Sulfate)
-
化学名
-
(+)-(S)-Methyl 2-(2-chlorophenyl)-2-(4, 5, 6, 7-tetrahydrothieno[3, 2-c]pyridin-5-yl)acetate monosulfate
-
分子式
-
C16H16ClNO2S・H2SO4
-
分子量
-
419.90
-
構造式
-
-
本品は白色~微黄白色の粉末である。
本品は水又はメタノールに溶けやすく、エタノール(99.5)又はジエチレングリコールにやや溶けやすく、アセトンに溶けにくい。
本品は光によって徐々に褐色となる。
-
性 状
-
一般名
-
アスピリン(Aspirin)
-
化学名
-
2-Acetoxybenzoic acid
-
分子式
-
C9H8O4
-
分子量
-
180.16
-
構造式
-
-
融 点
-
約136℃
-
本品は白色の結晶、粒又は粉末で、においはなく、わずかに酸味がある。
本品はエタノール(95)又はアセトンに溶けやすく、ジエチルエーテルにやや溶けやすく、水に溶けにくい。
本品は水酸化ナトリウム試液又は炭酸ナトリウム試液に溶ける。
本品は湿った空気中で徐々に加水分解してサリチル酸及び酢酸になる。
-
性 状
2. アスピリン
包装
-
100錠[10錠(PTP)×10]
主要文献及び文献請求先
主要文献
-
1)
-
Mega, J. L., et al.:N. Engl. J. Med., 360(4),354,2009[PLV1929]
-
2)
-
Collet, J.P., et al.:Lancet, 373(9660),309,2009[PLV1931]
-
3)
-
Sibbing, D., et al.:Eur. Heart J., 30(8),916,2009[PLV2082]
-
4)
-
Giusti, B., et al.:Am. J. Cardiol., 103(6),806,2009[PLV2122]
-
5)
-
Simon, T., et al.:N. Engl. J. Med., 360(4),363,2009[PLV1930]
-
6)
-
社内資料:クロピドグレルの推定代謝経路[PLV-21]
-
7)
-
Savi, P., et al.:Thromb. Haemost., 72(2),313,1994[PLV0010]
-
8)
-
社内資料:代謝に関与する薬物代謝酵素[PLV-43]
-
9)
-
社内資料:薬物代謝酵素に及ぼす影響[PLV-44]
-
10)
-
社内資料:ラットにおける単回経口投与時の組織内濃度[PLV-42]
-
11)
-
社内資料:ラットにおける反復経口投与時の組織内濃度[PLV-65]
-
12)
-
社内資料:健康成人における薬物動態[PLV-46]
-
13)
-
Slugg, P. H., et al.:J. Clin. Pharmacol., 40(4),396,2000[PLV0008]
-
14)
-
Deray, G., et al.:Clin. Drug. Invest., 16(4),319,1998[PLV0009]
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15)
-
Furuta, T., et al.:Pharmacogenomics, 8(9),1199,2007[PLV2794]
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16)
-
社内資料:非ST上昇急性冠症候群に対する第III相臨床試験[PLV-01]
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17)
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Isshiki, T., et al.:Int. Heart J., 53(2),91,2012[PLV4011]
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18)
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社内資料:非ST上昇急性冠症候群に対する海外第III相臨床試験[PLV-03]
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19)
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Holmsen, H.:Eur. J. Clin. Invest., 24(Suppl 1),3,1994[PLV0005]
-
20)
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Umemura, K., et al.:Thromb. Res., 80(3),209,1995[PLV0006]
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21)
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社内資料:ラットにおける抗血栓作用[PLV-15]
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22)
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Yao, S. K., et al.:Circ. Res., 70(1),39,1992[PLV0007]
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23)
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Herbert, J. M., et al.:Thromb. Haemost. 80(3),512,1998[PLV0321]
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24)
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Hollopeter, G., et al.:Nature, 409(6817),202,2001[PLV0015]
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Savi, P., et al.:Biochem. Biophys. Res. Commun., 283(2),379,2001[PLV0004]
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25)
文献請求先
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主要文献に記載の社内資料につきましても下記にご請求ください。
サノフィ株式会社 コールセンター くすり相談室
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〒163-1488 東京都新宿区西新宿三丁目20番2号
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