とが報告されている。]
その他の注意
健康人における本薬の血漿中からの消失半減期は約150時間である。
薬物動態
1. 吸収
(1) 単回投与
健康成人男子4名にイルソグラジンマレイン酸塩 4mg を単回経口投与した場合、未変化体の血漿中濃度は投与後約3.5時間で最高値(Cmax)に達し、その後、約150時間の消失半減期で減少した1)。
健康成人男子にイルソグラジンマレイン酸塩4mgを単回経口投与した後の未変化体の血漿中濃度(平均値±標準偏差、n=4)
(薬物動態の表参照)
(2) 反復投与
1)
健康成人男子:健康成人男子6名にイルソグラジンマレイン酸塩2 mgを1日1回、28日間反復経口投与した場合、未変化体の血漿中濃度は投与14日以降ほぼ定常状態となった。投与終了後血漿中濃度は緩やかに減少し、消失半減期は約170時間であった2)。
健康成人男子にイルソグラジンマレイン酸塩2mgを1日1回28日間反復経口投与した場合の未変化体の血漿中濃度(平均値±標準偏差、n=6)
2)
胃潰瘍患者:胃潰瘍患者10名にイルソグラジンマレイン酸塩4mgを4週間から8週間1日1回あるいは2回に分割経口投与した場合、健康成人男子にイルソグラジンマレイン酸塩2mgを反復投与した場合と同様に投与後約2週間で定常状態に達していた3)。
2. 分布
(1) 作用部位への移行性(ラット)
<参考>14C-イルソグラジンを静脈内投与した後の胃粘膜での放射能濃度は血漿中より高かった4)。
(2) 蛋白結合
14C-イルソグラジンの1%ヒト血清アルブミンに対する結合率は62.4%であった4)。
3. 代謝
健康成人男子にイルソグラジンマレイン酸塩4mgを経口投与した場合、尿中主代謝物は、イルソグラジンの m-OH 体の抱合体であり、この他 p-OH 体の抱合体及び N-oxide 体が検出された1)。なお、これらの代謝物の薬理作用・毒性は未変化体と比較して、著しく弱いかほとんど認められなかった5)。
4. 排泄
健康成人男子にイルソグラジンマレイン酸塩4mgを経口投与した場合、80時間までの尿中排泄率は未変化体が1.77%、m-OH体の抱合体が3.54%、p-OH体の抱合体が0.79%およびN-oxide体が0.94%であった1)。
薬物動態の表
薬物動態パラメータ
Tmax(hr) Cmax(μg/mL) t1/2(hr) AUC0-∞(hr・μg/mL)
3.5±1.9 0.154±0.034 152±47 23.0±5.0
平均値±標準偏差、(n=4)
臨床成績
1. 胃潰瘍
国内165施設において胃潰瘍(病期:A1~H1)と診断された症例を対象として行われた臨床試験の結果、投与8週間における内視鏡判定での治癒率は62.6%(311/497例)であった。また全般改善度では、中等度改善以上74.4%(406/546例)であった。
なお、二重盲検比較試験においても有効性が認められている6)。
2. 急性胃炎・慢性胃炎の急性増悪期7)~13)
国内201施設において急性胃炎又は慢性胃炎の急性増悪期と診断された症例を対象として行われた臨床試験の結果、全般改善度は中等度改善以上85.2%(283/332例)であった。
なお、二重盲検比較試験においても有効性が認められている。
疾患名 内視鏡判定(治癒率) 改善率(中等度改善以上)
胃潰瘍 311/497(62.6%) 406/546(74.4%)
急性胃炎・慢性
胃炎の増悪期 - 283/332(85.2%)
薬効薬理
1. 実験潰瘍に対する作用
水浸拘束ストレス潰瘍(ラット)14),15)、エタノール潰瘍(ラット)15)、Shay潰瘍(ラット)14),15)、インドメタシン潰瘍(ラット)14),15),16)、ヒスタミン潰瘍(モルモット)14)・(ラット)15)、アスピリン潰瘍(ラット)15)、モノクロラミン潰瘍(ラット)17)、虚血再灌流胃粘膜障害(ラット)18)等の急性実験潰瘍や酢酸胃潰瘍(ラット)14)及び電気焼灼潰瘍(イヌ)19)等の慢性実験潰瘍に対し、1~10mg/kg の低用量で用量依存的に抗潰瘍作用を示す。
2. 実験胃炎に対する作用
エタノール誘起胃炎及びタウロコール酸誘起萎縮性胃炎並びにアンモニア誘起胃粘膜障害に対し、用量依存的に抑制又は治癒促進効果を示す(ラット)20)。
3. 細胞防御作用
(1)
0.2N塩酸の胃内注入で発生する胃粘膜上皮の剥離脱落を防止し細胞間間隙の開大を抑制する(ラット)21)。
(2)
無水エタノール経口投与による胃粘膜損傷に対し、胃粘膜上皮細胞の剥離脱落を抑制する(ラット)22)。
(3)
0.2N塩酸、エタノール等の胃粘膜障害物質の胃粘膜内透過を抑制する(ラット)23),24)。
4. 胃粘膜血流改善作用
酢酸潰瘍辺縁粘膜血流量を用量依存的に増加させ(イヌ)25)、モノクロラミンによる胃粘膜血流の低下を抑制する(ラット)17)。
5. 抗炎症作用
(1)
各種刺激剤によるヒト活性化好中球からの活性酸素産生を抑制する(in vitro)26)。
(2)
虚血再灌流胃粘膜障害においてTNF-αの産生を抑制し、MPO活性を指標とした炎症性細胞の胃粘膜への浸潤を抑制する(ラット)18)。
(3)
ヒト胃粘膜上皮細胞とH. pyloriの共培養系において炎症性サイトカインであるIL-8、RANTESの産生を濃度依存的に抑制する(in vitro)27)。
6. 細胞間コミュニケーション活性化作用
ウサギ胎児胃粘膜培養上皮細胞を用いたDye Coupling法において、細胞間コミュニケーション活性化作用を示す(in vitro)28)。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
イルソグラジンマレイン酸塩(Irsogladine Maleate) (JAN)
化学名
2, 4-Diamino-6-(2, 5-dichlorophenyl)-s-triazine maleate
分子式
C9H7Cl2N5・C4H4O4
分子量
372.16
化学構造式
性状
本品は白色の結晶又は結晶性の粉末で、においはなく、味はやや苦い。