時の尿、糞便中への排泄率を検討した(外国人)。未変化体とアセチル体を合わせ、尿中には投与量の約15%が排泄されたのに対し、糞便中には約32%が排泄された54)。一方、健康成人12名にメサラジン錠をメサラジンとして2gを1日4回に分け6日間反復経口投与したとき、未変化体とアセチル体合わせて、尿中には投与量の約32%排泄されたのに対し、糞便中には約27%が排泄された55)。吸収されたメサラジンはアセチル体に代謝され、主に尿中に排泄される。経口剤と比べ、注腸剤では尿中排泄率が低いことより、注腸剤では吸収率が低く、全身への曝露量は低いことが示された。
99mTcで標識したメサラジン注腸剤1g/100mLを健康成人8名に経直腸投与したときの腸内での最遠到達部位と移行量を調べた。1名では直腸とS状結腸に滞留し、7名では脾彎曲部まで達し、そのうち4名は横行結腸まで到達した56)。
臨床成績
1. ステロイド注腸剤との比較試験 [参考情報]
デンマークの7施設で活動期の軽~中等症の潰瘍性大腸炎患者を対象に、プレドニゾロン注腸剤との二重盲検比較試験(解析症例114例)が実施された57)。メサラジン注腸剤の用量は1g/100mL、プレドニゾロン注腸剤は25mg/100mLで1日1回、4週間投与した。
(1) 有効性
臨床判定及びS状結腸鏡判定を総合した概括判定において、寛解又は改善率はメサラジン群77%、プレドニゾロン群72%であり、両薬剤間の有効性は同等であった。
(2) 安全性
本臨床試験に参加した123例において、メサラジン群13例(21.3%)、プレドニゾロン群6例(9.7%)に副作用が報告されたが、この差異は統計学的に有意ではなかった。メサラジン群で発現した副作用では腹部膨満及び仙痛が各3例(4.9%)と高頻度であった。
2. 用量(濃度)比較試験 [参考情報]
アメリカの18施設で活動期の軽~中等症の潰瘍性大腸炎患者を対象に、プラセボ対照の二重盲検比較試験(解析症例計287例)が実施された58)。メサラジン注腸剤の用量は1g、2g、4g/100mLで、1日1回、8週間投与した。
(1) 有効性
1) 医師による概括判定
改善効果を認めた患者がプラセボ群では27%であったのに対し、1g/100mL群では67%、2g/100mL群では65%、4g/100mL群では75%であり、いずれの用量でもプラセボに対し有意に高い治療効果を示した。しかし、メサラジン注腸剤群間での有意な差は認められなかった。
2) 内視鏡スコア
プラセボ群では1.8ポイントの改善であったのに対し、1g/100mL群では5.8ポイント、2g/100mL群では5.9ポイント、4g/100mL群では6.4ポイントの改善といずれも有意な改善効果を示した。しかし、メサラジン注腸剤群間には有意な差は認められなかった。
(2) 安全性
副作用がプラセボ群で10%に見られたのに対し、メサラジン注腸剤群では14%であり、用量依存的な変動も認められなかった。
薬効薬理
1. 動物モデルに対する効果
ラットの酢酸誘発潰瘍性大腸炎モデル及びTNBS誘発大腸炎モデルにおいてメサラジンの注腸投与をしたところ、前者では6.25mg/kgから有意な潰瘍面積の抑制効果59)が、後者では25.0mg/kg有意な障害抑制効果60)が認められた。
2. 作用機序61)
in vitroにおいてフリーラジカル(DPPHL)還元作用、過酸化水素消去作用、次亜塩素酸イオン消去作用、過酸化脂質抑制作用(in vitro、in vivo)が認められた。更にラット好中球でのロイコトリエンB4(LTB4)生合成を抑制した(in vitro)。
以上より、本剤の主な作用機序として炎症性細胞から放出される活性酸素を消去し、炎症の進展と組織の障害を抑制すること、及びLTB4の生合成を抑制し、炎症性細胞の組織への浸潤を抑制することが考えられた。
また、その他の作用機序として、肥満細胞からのヒスタミン遊離抑制作用、血小板活性化因子(PAF)の生合成抑制作用、インターロイキン1-β(IL-1β)の産生抑制作用が一部関与している可能性が推察された(in vitro)。
有効成分に関する理化学的知見
一般名:メサラジン(JAN)、Mesalazine(JAN, INN)
化学名:5-Aminosalicylic acid
構造式:
分子式:C7H7NO3
分子量:153.14
融点 :270~275℃(分解)
性状 :本品は灰白色~微灰黄色の針状結晶又は結晶性の粉末で、無臭~特異なにおいがある。本品はわずかに甘い味が残る酸味がある。本品は水に溶けにくく、エタノール(99.5)又はメタノールに極めて溶けにくく、ジエチルエーテル又はクロロホルムにほとんど溶けない。
包装
ペンタサ注腸1g
100mL×7
主要文献及び文献請求先
主要文献
1)
棟方昭博, 他, 薬理と治療, 22(Suppl.10), S2509(1994).
2)
棟方昭博, 他, 薬理と治療, 22(Suppl.10), S2531(1994).
3)
棟方昭博, 他, 薬理と治療, 22(Suppl.10), S2555(1994).
4)
棟方昭博, 他, 薬理と治療, 22(Suppl.10), S2585(1994).
5)
棟方昭博, 他, 薬理と治療, 22(Suppl.10), S2607(1994).
6)
棟方昭博, 他, 薬理と治療, 22(Suppl.10), S2625(1994).
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