再発又は難治性のCD22陽性の急性リンパ性白血病患者を対象とした国際共同第III相試験5、11)
1又は2レジメンの化学療法歴がある再発又は難治性のCD22陽性の急性リンパ性白血病患者注1)を対象として、本剤群又は対照(化学療法注2))群に無作為化し、有効性及び安全性を検討することを目的とした、無作為化、非盲検、国際共同第III相試験を実施した。主要評価項目であるCR又はCRiを達成した患者の割合(CR+CRi率)注3)の解析の結果は下表のとおりであり、対照群に対する本剤群の優越性が示された。
注1:フィラデルフィア染色体陽性の場合は、前治療歴としてイマチニブメシル酸塩を除く少なくとも1つのチロシンキナーゼ阻害剤に治療抵抗性又は不耐容である患者が組入れ対象とされた。また、末梢血芽球数が10,000/μL以下の患者が組入れ対象とされた。
注2:「フルダラビン+シタラビン+顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)(FLAG)」、「シタラビン+ミトキサントロン」又は「高用量シタラビン(HIDAC)」から選択
注3:以下の条件をすべて満たすことをCRとした。また、CRのうち血小板数又は好中球絶対数の回復(血小板数100,000/μL以上又は好中球絶対数1,000/μL以上)を伴わない場合をCRiとした。
・骨髄中の芽球が5%未満
・末梢血中の白血病芽球及び髄外病変の消失
・末梢血の血小板数が100,000/μL以上、かつ好中球絶対数が1,000/μL以上
また、全生存期間(中央値[97.5%信頼区間])の最終解析時の結果は本剤群で7.7[6.0, 9.2]カ月、対照群で6.7[4.9, 8.3]カ月であり、対照群に対する本剤群の優越性は示されなかった(ハザード比0.770[97.5%信頼区間:0.578, 1.026]、[層別log-rank検定p=0.0203(有意水準片側0.0104)]、2016年3月8日データカットオフ)。
寛解(CR+CRi)率の結果(2014年10月2日データカットオフ)
本剤群
(109例) 対照群
(109例)
CR又はCRiを達成した被験者数
CR+CRi率%(95%信頼区間) 88/109例
80.7(72.1, 87.7) 32/109例
29.4(21.0, 38.8)
p値注4) p<0.0001 p<0.0001
注4:x2検定(有意水準片側0.0125)
薬効薬理
1. 抗腫瘍作用
(1) in vitro試験12)
CD22陽性の急性リンパ性白血病細胞由来Reh、RS4;11及びSUP-B15細胞株に対して増殖抑制作用を示した。
(2) in vivo試験13)
Reh細胞株を皮下移植したヌードマウスにおいて、腫瘍増殖抑制作用を示した。また、Reh細胞株を静脈内移植した重症複合型免疫不全(SCID)マウスにおいて、がんの進展による後肢麻痺発症の抑制を示した。
2. 作用機序14、15)
本剤は、CD22抗原を発現した白血病細胞に結合し細胞内に取り込まれた後に、加水分解を受けて生じたN-アセチル-γ-カリケアマイシン ジメチルヒドラジドのジスルフィド結合が還元的に開裂され活性体となり、DNA二本鎖を切断することにより腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられる。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
イノツズマブ オゾガマイシン(遺伝子組換え)
(Inotuzumab Ozogamicin (Genetical Recombination))[JAN]
本質
イノツズマブ オゾガマイシンは、抗体薬物複合体(分子量:約159,000)であり、遺伝子組換えモノクローナル抗体(分子量:約149,000)の平均6個のLys残基に、オゾガマイシン(メチル{(1R,4Z,8S,13E)-8-(4,6-ジデオキシ-4-{[(4-S-{4-[(6-デオキシ-3-O-メチル-α-L-マンノピラノシル)オキシ]-3-ヨード-5,6-ジメトキシ-2-メチルベンゾイル}-4-スルファニル-β-D-リボ-ヘキソピラノシル)オキシ]アミノ}-2-O-[2,4-ジデオキシ-4-(N-エチルアセトアミド)-3-O-メチル-α-L-トレオ-ペントピラノシル]-β-D-グルコピラノシルオキシ)-13-[2-({4-[2-(1-{[4-(4-アミノ-4-オキソブチル)オキシ]フェニル}エチリデン)ヒドラジニル]-2-メチル-4-オキソブタン-2-イル}ジスルファニル)エチリデン]-1-ヒドロキシ-11-オキソビシクロ[7.3.1]トリデカ-4,9-ジエン-2,6-ジイン-10-イル}カルバミン酸(C73H97IN6O25S3;分子量:1,681.68))が結合している。抗体部分は、ヒト化モノクローナル抗体で、マウス抗ヒトCD22抗体の相補性決定部及びヒトIgG4のフレームワーク部及び定常部からなり、チャイニーズハムスター卵巣細胞で産生される。タンパク質部分は、448個のアミノ酸残基からなるH鎖(γ4鎖)2本及び219個のアミノ酸残基からなるL鎖(κ鎖)2本で構成される糖タンパク質である。
構造式
承認条件
1.
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
2.
国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。
包装
ベスポンサ点滴静注用1mg:1バイアル
主要文献及び文献請求先
主要文献
1)
社内資料:生殖発生毒性試験 [L20171116033]
2)
社内資料:反復投与毒性試験(雌雄生殖器への影響) [L20171116031]
3)
社内資料:遺伝毒性試験 [L20171116035]
4)
社内資料:反復投与毒性試験(前腫瘍性/腫瘍性病変) [L20171116032]
5)
社内資料:国際共同第III相試験(B1931022試験) [L20171116016]
6)
社内資料:母集団薬物動態解析 [L20171116017]
7)
社内資料:タンパク結合率に関する試験 [L20171116018]
8)
社内資料:トランスポーターに関する試験 [L20171116020]
9)
社内資料:代謝経路に関する試験(in vit