。また、易疲労感の改善や入院治療を余儀なくされていた症例で職場復帰が可能となった例もみられた52)。
ステロイド剤で症状の安定が得られている胸腺摘除後もしくは胸腺非摘除の重症筋無力症患者を対象とした第III相試験では、プログラフカプセルを28週間投与し、併用ステロイド剤の投与量をプラセボ群と比較した。本試験では、5mg/隔日/4週の割合でステロイド剤を減量し、症状の安定が維持できない場合には、ステロイド剤の増量を行った。その結果、タクロリムス群では、症状の安定を維持したままステロイド剤の減量を認め、投与終了前12週間及び投与終了前4週間のステロイド平均投与量(プレドニゾロン換算量)は、それぞれ4.91mg/日及び3.81mg/日であった53)。(「臨床成績の表」表7参照)
ステロイド剤の投与によっても効果不十分で、胸腺非摘除の重症筋無力症患者10例に、プログラフカプセルを28週間投与した第III相試験において、8例で筋力(合計QMGスコア)の改善を認め、9例で併用ステロイド剤が減量された(中間成績)54)。(「臨床成績の表」表8参照)
臨床成績の表
表7 ステロイド平均投与量※(mg/日)の推移
タクロリムス群
[n=40] プラセボ群
[n=40] 調整済の平均の差※※
[95%信頼区間]
投与開始時 13.78±3.958 13.88±3.545 ―
投与終了前
12週間 4.91±4.041 6.51±4.889 -1.58
[-3.342~0.184]
投与終了前
4週間 3.81±4.066 7.23±7.319 -3.48
[-6.010~-0.953]
(平均±S.D.)
※プレドニゾロン換算量
※※タクロリムス群-プラセボ群
表8 合計QMGスコアの推移
投与開始時
[n=10] 最終時
[n=10] 変化量
[n=10]
13.3±5.17 10.6±6.17 -2.7±2.26
(平均±S.D.)
薬効薬理
1.
インターロイキン2並びにインターフェロンγ等のT細胞由来のサイトカイン産生を抑制し、更に、炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子(TNF)α、インターロイキン1β並びにインターロイキン6の産生も抑制する55)~57)。
2.
免疫系以外の骨髄細胞等の増殖に対する抑制作用は弱く、選択性が示されている55)56)。
3.
動物における同所性肝移植において移植臓器拒絶反応を明確に抑制し、生存期間を延長させる(カニクイザル58)、イヌ59)、ラット60))。
4.
ラット再生肝の促進及びイヌ門脈結紮による細胞萎縮の回復、分裂細胞数の増加等肝臓に対する増殖促進効果を有する61)~63)。
5.
移植片対宿主病モデルにおいて、移植片対宿主反応を抑制し、生存期間を延長させる(マウス64)、ラット65))。
6.
腎移植モデルにおいて、移植臓器拒絶反応を明確に抑制し、生存期間を延長させる(ヒヒ66)、イヌ67)、ラット68))。
7.
ラット心移植モデル69)、イヌ肺移植モデル70)及びイヌ膵移植モデル71)において、移植臓器拒絶反応を明確に抑制し、生存期間を延長させる。
8.
[参考]ラット重症筋無力症モデルにおいて、抗アセチルコリン受容体抗体の産生を抑制し、自発性微小終板電位の振幅を改善する72)。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
タクロリムス水和物(Tacrolimus Hydrate)
化学名
(3S,4R,5S,8R,9E,12S,14S,15R,16S,18R,19R,26aS )-5,19-Dihydroxy-3-{(1E )-2-[(1R,3R,4R )-4-hydroxy-3-methoxycyclohexyl]-1-methylethenyl}-14,16-dimethoxy-4,10,12,18-tetramethyl-8-(prop-2-en-1-yl)-15,19-epoxy-5,6,8,11,12,13,14,15,16,17,18,19,24,25,26,26a-hexadecahydro-3H -pyrido[2,1-c][1,4]oxaazacyclotricosine-1,7,20,21(4H,23H )-tetrone monohydrate
構造式
分子式
C44H69NO12・H2O
分子量
822.03
融点
130~133℃
分配係数
1000以上(1-オクタノール/水系)
性状
タクロリムス水和物は白色の結晶又は結晶性の粉末である。メタノール又はエタノール(99.5)に極めて溶けやすく、N,N -ジメチルホルムアミド又はエタノール(95)に溶けやすく、水にほとんど溶けない。
包装
顆粒 0.2mg:50包
顆粒 1mg:50包
主要文献及び文献請求先
主要文献
1)
Fung, J.J. et al.:Transplant. Proc. 22(1)Suppl.1:6, 1990 [PRG-00191]
2)
Garg, V. et al.:Hepatology 54(1):20, 2011 [PRG-28255]
3)
Saegusa, T. et al.:基礎と臨床 26(3):969, 1992 [PRG-01148]
4)
Curran, C.F. et al.:Transplantation 62(9):1376, 1996 [PRG-04546]
5)
Mrvos, R. et al.:J. Toxicol. Clin. Toxicol. 35(4):395, 1997 [PRG-05400]
6)
久富晃彦 他:社内報告書(ラット・生殖毒性) (DIR940072)
7)
石橋道男 他:移植 29(3):294, 1994 [PRG-02352]
8)
社内報告書(小児腎移植患者・薬物動態)(DIR080173)
9)
社内報告書(腎移植患者・薬物動態)(DIR080174)
10)
McDiarmid, S.V. et al.:Transplantation 55(6):1328, 1993 [PRG-01716]
11)
社内報告