口投与した毒性試験で、胃にカルチノイドの発生がみられたとの報告がある。このカルチノイドの発生にはラットに種特異性が認められている。
2.
本剤の長期投与中に良性の胃ポリープを認めたとの報告がある。
3.
本剤の投与が、胃癌による症状を隠蔽することがあるので、悪性でないことを確認して投与すること。
4.
非びらん性胃食道逆流症の治療において、食道内酸逆流の高リスクであると考えられる中高齢者、裂孔ヘルニアを合併する患者のいずれにも該当しない場合には本剤の治療効果が得られにくい可能性がある。
5.
海外における複数の観察研究で、プロトンポンプインヒビターによる治療において骨粗鬆症に伴う股関節骨折、手関節骨折、脊椎骨折のリスク増加が報告されている。特に、高用量及び長期間(1年以上)の治療を受けた患者で、骨折のリスクが増加した。
6.
海外における主に入院患者を対象とした複数の観察研究で、プロトンポンプインヒビターを投与した患者においてクロストリジウム・ディフィシルによる胃腸感染のリスク増加が報告されている。
7.
ヘリコバクター・ピロリの除菌判定上の注意:オメプラゾール等のプロトンポンプインヒビターやアモキシシリン水和物、クラリスロマイシン等の抗生物質及びメトロニダゾールの服用中や投与終了直後では、13C-尿素呼気試験の判定が偽陰性になる可能性があるため、13C-尿素呼気試験による除菌判定を行う場合には、これらの薬剤の投与終了後4週以降の時点で実施することが望ましい。
8.
ラットに類薬であるランソプラゾール(50mg/kg/日)、アモキシシリン水和物(500mg/kg/日)及びクラリスロマイシン(160mg/kg/日)を併用投与した試験で、母動物での毒性の増強とともに胎児の発育抑制の増強が認められている。
薬物動態
1. 血漿中濃度
(1) オメプラゾール単独投与時のデータ
健康成人(6例)にオメプラゾール10mg及び20mgを空腹時に単回経口投与したとき、投与後約2時間で最高血漿中濃度に達し、消失半減期はそれぞれ2.8時間及び1.6時間であった1)。
〈健康成人6例、10mg及び20mg単回経口投与(平均値±SE)〉参照
健康成人(6例)にオメプラゾール20mgを朝食前に1日1回7日間投与したとき、第7日目のCmax及び血中濃度曲線下面積(AUC)はいずれも第1日目の約1.4倍に増加した1)。
また、胃潰瘍患者(5例)及び十二指腸潰瘍患者(4例)にオメプラゾール20mgを1日1回朝食後に14日間投与したとき、第7日目のAUCは第1日目に比べ有意な増加が認められたが、第7日目と第14日目の間ではCmax、AUCのいずれも増加は認められなかった2)。
(2) オメプラゾール、アモキシシリン水和物及びクラリスロマイシン投与時のデータ3)
健康成人(11例)にオメプラゾール20mg、アモキシシリン水和物750mg(力価)及びクラリスロマイシン400mg(力価)を1日2回7日間反復経口投与後の血漿中オメプラゾール濃度は、投与約2.5時間後にCmaxを示し、約2時間の半減期で消失した。オメプラゾールのCmax及びAUCは、単回投与時に比して反復投与により上昇したが、投与4日目と7日目ではほぼ同様で、4日目までには定常状態に達した。
〈健康成人11例、3剤併用反復投与(平均値±SD)〉参照
2. 効果発現時間
胃潰瘍患者にオメプラゾール20mgを1日1回朝食後に経口投与したとき、投与2~6時間後より胃酸分泌抑制効果が認められた4)。
3. 代謝
外国人のデータでは、健康成人にオメプラゾールを経口投与したとき、血漿中の主代謝物はオメプラゾールスルホン及びヒドロキシオメプラゾールで、これらの代謝物はいずれも胃酸分泌抑制作用をほとんど示さなかった5),6)。また、ヒト肝ミクロソームによるin vitro試験の結果から、ヒドロキシ体及びスルホン体の生成にはそれぞれ主にCYP2C19及びCYP3A4が関与し、ヒドロキシ体への代謝クリアランスはスルホン体の4倍であると報告されている7)。CYP2C19には遺伝多型が存在し、遺伝学的にCYP2C19の機能を欠損する個体(PM)は日本人を含むモンゴル系人種で13~20%、コーカサス系人種で3~4%と報告されている8)。PMにおけるオメプラゾールの緩やかな代謝は、他のプロトンポンプ阻害剤9),10)と同様である。
4. 排泄
外国人のデータでは、14C標識オメプラゾールを投与したとき、投与放射能の約80%が尿中に、約20%が糞中に排泄された5)。
5. 相互作用
外国人のデータでは、オメプラゾールは、主にチトクロームP450 2C19(CYP2C19)及び一部3A4(CYP3A4)を介して肝臓で代謝を受ける。オメプラゾールの血漿中濃度は、クラリスロマイシンとの併用により、Cmax及びAUCは約2倍に上昇した。一方、アモキシシリン水和物との併用は、オメプラゾールの血漿中動態に影響しなかった11)。ジアゼパム、ワルファリン(R-ワルファリン)、フェニトインもCYP2C19によって代謝されるため本剤との併用により、ジアゼパム12)及びフェニトイン13)のクリアランスはそれぞれ27%及び15%低下し、ワルファリン14)の血中濃度は12%上昇したとの報告がある。
6. 蛋白結合率
96~98%(限外ろ過法)
7. 血液透析
慢性透析患者を対象にオメプラゾールを1日1回20mg経口投与し、血漿中濃度を検討した試験において、血液透析による除去はほとんど認められず、透析日及び非透析日で体内薬物動態に影響はみられなかった15),16),17)。
8. 生物学的同等性18)
オメプラゾールの20mg錠×1錠と10mg錠×2錠は生物学的に同等である。
薬物動態の表
〈健康成人6例、10mg及び20mg単回経口投与(平均値±SE)〉
投与量 Cmax(ng/mL) Tmax(hr) AUC0-10hr(ng・hr/mL) T1/2(hr)
10mg 184.1±31.5 2.3±0.6 480.7±160.2 2.8
20mg 406.2±152.0 2.3±0.2 1160.4±646.3 1.6
〈健康成人11例、3剤併用反復投与(平均値±SD)〉
Cmax(ng/mL) Tmax(hr) AUC0-∞(ng・