ニチジン濃度は下記のとおりであり、用量依存性を示す(表-1参照)。2),3)
2. 代謝・排泄
(1)
健康成人に75mg、150mg、300mgを各1回経口投与した場合、投与後12時間又は24時間までの尿中未変化体及び代謝物の排泄率は下記のとおりである(表-2参照)。2),3)
(2)
健康成人に1日300mgを14日間反復経口投与しても、血中への蓄積は認められなかった。4)
3. その他の薬物速度論的パラメータ
血漿蛋白結合率:27~29%(in vitro)5)
薬物動態の表
表-1
投与量 75mg 150mg 300mg
Tmax(hr) 2.0 2.4 2.4
T1/2(hr) 2.7 2.5 2.3
Cmax(ng/mL) 301 469 928
AUC0~∞(ng・hr/mL) 1628 2718 5272
Ka(hr-1) 1.4 2.1 1.0
Kel(hr-1) 0.3 0.3 0.3
表-2
投与量 75mg 150mg 300mg
投与後時間(hr) 0~12 0~24 0~24
未変化体(%) 46.3 48.9 46.5
N-oxide体(%) 5.2 5.8 6.3
S-oxide体(%) 1.5 1.4 1.7
N-desmethyl体(%) 2.5 1.8 2.0
臨床成績
1. 消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍)
1日300mg投与による全般改善度(全般改善度は内視鏡判定を主とし、これに自他覚症状による判定を加味して判定した。)は92.9%(1926/2073)、内視鏡判定治癒率は82.8%(1708/2063)、自他覚症状改善率は94.4%(1786/1891)であった。また、1回150mg1日2回投与と1回300mg1日1回投与との二重盲検比較試験では両者間に有意差は認められなかった。6)~18)
2. 胃炎
1日150mg投与による全般改善度(全般改善度は内視鏡判定を主とし、これに自他覚症状による判定を加味して判定した。)は86.0%(301/350)、内視鏡判定改善率は85.4%(299/350)、自他覚症状改善率は68.2%(242/355)であった。また、1回75mg1日2回投与と1回150mg1日1回投与との二重盲検比較試験では両者間に有意差は認められなかった。19)~22)
3. 逆流性食道炎
1日300mg投与による全般改善度(全般改善度は内視鏡判定を主とし、これに自他覚症状による判定を加味して判定した。)は90.2%(37/41)、内視鏡判定治癒率は75.6%(31/41)、自他覚症状改善率は89.7%(35/39)であった。23),24)
4. Zollinger-Ellison症候群
本症候群(3例)については潰瘍の瘢痕治癒及び心窩部痛等の自覚症状の消失が認められた。25)~27)
5. 麻酔前投薬
麻酔時における誤嚥性肺炎の抑制に有用であることが認められた。28)
6. 上部消化管出血
(1) 止血効果
1回50mg1日3~4回静脈内投与による投与3日以内の止血率は84.2%(202/240)、7日以内の止血率は89.2%(214/240)であった。29),30)
(2) 止血維持効果
静脈内投与での止血後、1回150mg1日2回又は1回300mg1日1回経口投与による止血維持効果は良好であった。31)~33)
薬効薬理
1. ヒトでの作用
(1) 胃酸分泌抑制作用
1) 基礎分泌
胃、十二指腸潰瘍患者に150mgを1回経口投与した場合、投与2、4時間後における1時間酸分泌量はそれぞれ95.2%、99.9%抑制される。34),35)
2) テトラガストリン刺激分泌
胃、十二指腸潰瘍患者に150mgを1回経口投与した場合、テトラガストリン4μg/kg筋肉内投与による刺激分泌は投与2時間後の1時間刺激酸分泌量で79.6%抑制される。35)
3) 夜間分泌
十二指腸潰瘍患者に1回150mgを1日2回又は1回300mgを1日1回(午後9時)経口投与した場合、夜間酸分泌はそれぞれ72.5%、84.3%と著明に抑制される。36)
4) 24時間分泌
十二指腸潰瘍患者に1回150mgを1日2回又は1回300mgを1日1回(午後9時)経口投与した場合、24時間の平均水素イオン濃度はそれぞれ63%、62%抑制される。36)
5) 食餌刺激分泌
健康成人に150mgを1回経口投与した場合、1時間後の蛋白流動食刺激による酸分泌量は食餌刺激後0~90分間で82%抑制される。37)
(2) ペプシン分泌抑制作用
十二指腸潰瘍患者に150mgを1回経口投与した場合、投与後4~5時間の1時間ペプシン基礎分泌量は97.5%抑制され、投与後5~7時間のテトラガストリン刺激による2時間ペプシン分泌量は69.4%抑制される。34)
(3) 酸分泌能に及ぼす影響
十二指腸潰瘍患者に連続4週間経口投与した場合、投与前と投与中止36時間後の基礎分泌及びペンタガストリン刺激酸分泌能には有意な変動はみられない。このことは壁細胞数及びその刺激に対する酸分泌能に影響を及ぼさないことを示している。38)また投与中止による酸分泌能の上昇は認められない。
(4) 膵外分泌能に及ぼす影響
十二指腸潰瘍患者に0.5mg/kg/hrを静脈内投与した場合、膵外分泌には有意な変動を及ぼさない。38)
(5) 胃粘膜電位差に対する作用
健康成人に1mg及び50mgを静脈内投与した場合、胃粘膜電位差が上昇する。また酸分泌に影響を及ぼさない0.1mgの少量投与においても、タウロコール酸ナトリウムによる胃粘膜電位差の低下を抑制することから、本剤の胃粘膜保護作用が推測される。39)
(6) 胃粘膜出血抑制作用
健康成人に10mg(酸分泌抑制作用を示さない用量)を経口投与した場合においても、PGE2を0.5mg/kg経口投与時と同様にアスピリン胃内出血を有意に抑制する。40)
2. 動物での作用
(1) 各種実験的胃粘膜損傷に対する作用
ラットに