高齢者への投与
一般的に高齢者では生理機能が低下しているので減量するなど注意すること。
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
1.
妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
〔動物実験で大量投与により、胎児死亡率の増加(ラット、ウサギ)および体重増加抑制(ラット)、分娩率の低下(ラット)が報告されている。〕
2.
投与中は授乳を避けさせること。
〔動物実験(ラット)で、母乳中への代謝物の移行が認められている。〕
小児等への投与
低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は確立していない。
適用上の注意
1. 調製時の注意
(1)
必ず5%ブドウ糖注射液又は注射用水をバイアルに加え、完全に溶解した後使用すること。
(2)
溶解時には、バイアルのゴム栓の中心に注射針を刺入すること。なお、18ゲージ以上の太い注射針及び両頭針を使用する場合には、ゴム栓又はその一部がバイアル内に脱落することがあるので、特に注意すること。
(3)
白濁あるいは結晶が析出する場合があるので、生理食塩液又は無機塩類を含有する溶液をバイアルに直接加えないこと。
2. 調製後の注意
溶解後は、速やかに使用すること。
3. 投与時の注意
(1) 投与量
本剤の血液体外循環時の使用にあたっては、出血の状況、体外循環路内の残血・凝血及び全血凝固時間等を考慮して、適宜用量を調節すること。
(2) 投与速度
本剤を静脈内又は体外循環路内へ急速に注入することは避けること。
(3) 透析器
本剤は、AN69(ポリアクリロニトリル)膜への吸着性が高いので、本剤の使用を避けること。
(4) 投与時
静脈内投与に際し、薬液が血管外に漏れると、注射部位に炎症又はそれに伴う壊死を起こすことがあるので、薬液が血管外に漏れないよう注意すること。
薬物動態
血中濃度2)~4)
1.
健康成人男子に本剤の10、20mgを90分間かけて点滴静注したとき、血中未変化体濃度は点滴開始後60~90分後に最高となり、それぞれ16.4、61.5ng/mLであった。また、血中からの消失は速やかで投与終了1時間後ではそれぞれ5ng/mL以下であった。
2.
DIC患者に本剤を毎時0.1mg/kg又は0.2mg/kgの速度で13~23日間点滴静注したとき、約14~130ng/mLの血中濃度が維持された。
3.
血液透析患者に本剤を体外循環回路内に毎時40mgの速度で5時間持続注入したとき、体外循環回路内の血中濃度は、透析器前で最も高く、透析器より約40%が透析された。また、体内血中濃度は約300ng/mLであった。
尿中排泄3),4)
1.
健康成人男子に本剤の20、40mgを点滴静注したとき、主代謝物である総アミジノナフトールの尿中排泄率は、24時間後にそれぞれ27.1、30.2%であった。
2.
DIC患者に本剤を毎時0.1mg/kg又は0.2mg/kgの速度で13~23日間点滴静注したとき、24時間後までの総アミジノナフトール排泄率は16.2~24.9%であり、その後徐々に増加した。また、毎時0.2mg/kg投与群の最終的な累積排泄率は、49.2~57.3%であった。
血液透析連続使用時の代謝物濃度2)
血液透析患者に本剤による透析を連続10回行ったとき、代謝物のアミジノナフトール及びそのグルクロン酸抱合体の血中濃度は、第7回透析以降ほぼ定常状態に達し、ヘパリン透析に変更後急速に低下した。また、p-グアニジノ安息香酸は、透析開始時よりも終了時に高く、ヘパリン透析に変更後急速に低下した。
動物における分布、代謝、排泄(参考)
1. 分布5)
*14Cナファモスタットメシル酸塩1mg/kgをラットに静脈内投与したとき、未変化体の濃度は腎、肝、肺、膵の順であり、これらはいずれも血液中の濃度より高く、かつ投与後4時間まで肝を除く臓器に存在が認められた。また、14Cナファモスタットメシル酸塩1mg/kgを、分娩後14日前後の哺育中のラットに静脈内投与したとき、乳汁中への移行は最高濃度で0.95n moles/mL以下であった。
2. 代謝5)~7)
本品は主として、血液及び肝で加水分解を受け、構成成分である6-アミジノ-2-ナフトール及びp-グアニジノ安息香酸に分解され、更に主としてグルクロン酸抱合を受けるものと推定される(ラット、イヌ)。
3. 腎不全モデルにおける排泄8)
*実験的に作成した腎不全ラットに、14Cナファモスタットメシル酸塩1mg/kgを静脈内投与した結果、胆汁排泄を含む消化管への排泄が亢進することが認められた。
臨床成績の表
臨床成績9)~17)
効能又は効果 改善率又は有効率%(改善又は有効以上例数/症例数)
膵炎の急性症状の改善 85.5%(461/539)
汎発性血管内血液凝固症(DIC) 61.8%(134/217)
血液体外循環時の血液凝固防止 96.3%(207/215)
薬効薬理
1.
酵素阻害作用18)~25)
本品はトロンビン、活性型凝固因子(XIIa、Xa、VIIa)、カリクレイン、プラスミン、補体(C1r-、C1s-)、トリプシン等の蛋白分解酵素を強力に阻害し、ホスホリパーゼA2に対しても阻害作用を示す。
トロンビンに対する阻害作用は、ATIIIを介さずに発現する。
またα2-マクログロブリンに結合したトリプシンを遊離型トリプシンと同様に阻害する(in vitro)。
2.
実験的急性膵炎に対する作用23),26)
本品はトリプシン、エンテロキナーゼ及びエンドトキシンを膵管内に逆行性に注入して惹起した各種実験的膵炎に対し、死亡率を低下させる(ラット、ウサギ)。
3.
血液凝固時間延長作用22),27),28)
本品は各種凝固時間(APTT、PT、TT、LWCT、CCT)を延長させる(in vitro)。
4.
血小板凝集抑制作用27)
*本品はトロンビン、アドレナリン、ADP、コラゲン及びエンドトキシンによる血小板凝集を抑制する(in vitro)。
5.
実験的DICに対する作用29)~31)
本品はエンドトキシン投与による実験的DICに対し、各種凝血学的検査値を改善し、腎糸球体のフィブリン血栓形成を抑制する(ラット、ウサギ)。
6.
体外循環路内の抗凝固作用2),17),28)
本剤を血液透析及びプラスマフェレーシスの抗凝固薬と