始するなど慎重に投与すること。なお、投与を中止する場合には、徐々に減量するなど慎重に行うこと。〔高齢者では、呼吸抑制、興奮、抑うつ、錯乱等があらわれやすい。「重要な基本的注意」の項参照〕
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
1.
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性(母体のてんかん発作頻発を防ぎ、胎児を低酸素状態から守る)が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。〔妊娠中にフェニトイン、フェノバルビタールを投与された患者の中に、奇形を有する児(口唇裂、口蓋裂、心奇形、大動脈縮窄症等)を出産した例が多いとの疫学的調査報告がある。〕
2.
妊娠中にやむを得ず本剤を投与する場合には、可能な限り他の抗てんかん剤と併用しないことが望ましい。〔妊娠中にフェニトインを他の抗てんかん剤(特にプリミドン)と併用して投与された患者群に、奇形を有する児を出産した例がフェニトイン単独投与群と比較して多いとの疫学的調査報告がある。〕
3.
妊娠中の投与により、児に腫瘍(神経芽細胞腫等)がみられたとの報告がある。
4.
妊娠中の投与により、新生児に出血傾向、呼吸抑制等を起こすことがある。
5.
分娩前に連用した場合、出産後新生児に離脱症状(多動、振戦、反射亢進、過緊張等)があらわれることがある。
6.
授乳婦への投与は避けることが望ましいが、やむを得ず投与する場合には、授乳を避けさせること。〔フェノバルビタールはヒト母乳中へ移行し、新生児、乳児に傾眠、哺乳量低下を起こすことがある。〕
7.
妊娠中の投与により、葉酸低下が生じるとの報告がある。
過量投与
症状
初期症状は、呼吸抑制、眼振、構音障害、運動失調、眼筋麻痺等である。その他の徴候として、振戦、過度の緊張亢進、嗜眠、言語障害、嘔気、嘔吐がみられる。重症の場合は、昏睡状態、血圧低下になり、呼吸障害、血管系の抑制、肺の合併症、腎障害により死亡することがある。
処置
人工呼吸、酸素吸入、昇圧剤の投与など適切な処置を行うこと。消化管に薬物が残留している場合は、胃洗浄、活性炭投与を行う。また、炭酸水素ナトリウム投与による尿アルカリ化、利尿剤投与により薬物の排泄を促進させる。重症の場合は、血液透析や血液灌流を考慮すること。
その他の注意
1.
血清免疫グロブリン(IgA、IgG等)の異常があらわれることがある。
2.
フェノバルビタールをラット1)及びマウス2)に長期間大量投与(ラット:25mg/kg、マウス:75mg/kg)したところ、対照群に比較して肝腫瘍の発生が有意に増加したとの報告がある。
3.
経腸栄養剤を投与中の患者で、フェニトインの血中濃度が低下したとの報告がある。
4.
フェニトイン、フェノバルビタールと他の抗てんかん薬(カルバマゼピン)との間に交差過敏症(過敏症症候群を含む皮膚過敏症)を起こしたとの報告がある。
5.
海外で実施された複数の抗てんかん薬における、てんかん、精神疾患等を対象とした199のプラセボ対照臨床試験の検討結果において、自殺念慮及び自殺企図の発現のリスクが、抗てんかん薬の服用群でプラセボ群と比較して約2倍高く(抗てんかん薬服用群:0.43%、プラセボ群:0.24%)、抗てんかん薬の服用群では、プラセボ群と比べ1,000人あたり1.9人多いと計算された(95%信頼区間:0.6~3.9)。また、てんかん患者のサブグループでは、プラセボ群と比べ1,000人あたり2.4人多いと計算されている。
薬物動態
1. 血中濃度
表1、表2参照
2. 血漿・血清蛋白結合率
フェニトイン5):
約90%(in vitro、ヒト血漿、約20μg/mL、限外ろ過法)
フェノバルビタール6):
約45%(in vitro、ヒト血清、21~83μg/mL、限外ろ過法)
3. 主な代謝産物及び代謝経路
主として肝臓で、フェニトイン7,8)はフェニル基の一つが水酸化され、5-(p-hydroxyphenyl)-5-phenylhydantoin(HPPH)が生成した後、大部分はグルクロン酸抱合され、フェノバルビタール9)はフェニル基が水酸化され、5-ethyl-5-(p-hydroxyphenyl)barbituric acid(p-HPB)が生成した後、一部はグルクロン酸又は硫酸抱合される。
4. 排泄経路及び排泄率
排泄経路:
主として尿中
排泄率:
フェニトイン投与後6日間における排泄率は、尿中に総HPPHとして96.9~99.0%、フェニトインとして0.4~0.7%、糞中に総HPPHとしてtrace~1.2%、フェニトインとして0.5%であった〔健康成人、フェニトイン100mg 1回投与10) 〕。フェノバルビタール投与後24時間における尿中排泄率は、フェノバルビタールとして25%、総p-HPBとして17%であった〔てんかん患者(外国人)、フェノバルビタール30~90mg反復投与11)〕。
5. 有効血中濃度
てんかんの重症度や症例によって違いはあるが、一般にフェニトイン12,13)は10~20μg/mL(成人の強直間代発作)が、また、フェノバルビタール14)は10~30μg/mLが目安として示されている。
6. 代謝酵素15)
フェニトインのチトクロームP-450分子種
主としてCYP2C9及び一部CYP2C19
7. 投与量と血中濃度との関係
定常状態におけるフェニトイン血中濃度と投与量の関係はMichaelis-Menten式〔C=Km・D/(Dmax-D)〕を用いた曲線(図)で近似され16)、有効血中濃度付近では、投与量の増減が血中濃度に及ぼす影響は極めて大きい。また、定数Dmax、Kmの個人差は大きく、さらに成人に比較して年少児ほどDmaxの値は大きくなる17)。このため、フェニトインの血中濃度測定が、至適投与量の検討ないしは中毒症状発現防止に役立てられている。
8. **その他
フェニトインはCYP3A、CYP2B6及びP糖蛋白の誘導作用を有し、フェノバルビタールはCYP3A等の誘導作用を有する18)。
表1 血中濃度〔健康成人12例、フェニトイン100mg 1回投与3)〕
Tmax(h) Cmax(μg/mL) t1/2(h)
4.2±0.3 1.87±0.11 13.9±1.7
平均値±標準誤差
表2 血中濃度〔健康成人(外国人)、フェノバルビタール30mg 1回投与4)〕
Tmax(h) Cmax(μg/mL) t1/2(h)&nbs