児期発症型)、もしくは(2)成人期発症型では頭蓋内器質性疾患の合併ないし既往歴、治療歴または周産期異常の既往がある患者のうち、厚生労働省難治性疾患克服研究事業間脳下垂体機能障害調査研究班の「成人成長ホルモン分泌不全症の診断と治療の手引き」において重症と診断された患者とすること。
重症成人成長ホルモン分泌不全症の診断基準
(1) 小児期発症型
2種類以上の成長ホルモン分泌刺激試験における血清(血漿)成長ホルモン濃度の頂値がすべて3ng/mL以下(GHRP-2負荷試験では15ng/mL以下)であること。ただし、頭蓋内器質性疾患の合併ないし既往歴、治療歴、または周産期異常があり、成長ホルモンを含む複数の下垂体ホルモンの分泌低下がある患者では、1種類の成長ホルモン分泌刺激試験における血清(血漿)成長ホルモン濃度の頂値が3ng/mL以下(GHRP-2負荷試験では15ng/mL以下)であること。小児期に成長ホルモン分泌不全症と診断されたものでも、本治療開始前に再度成長ホルモン分泌刺激試験を行い、成長ホルモン分泌不全症であることを確認すること。
(2) 成人期発症型
成長ホルモンを含む複数の下垂体ホルモン(あるいは成長ホルモン単独)の分泌低下がある患者で、かつ1種類(成長ホルモンの単独欠損の患者では2種類)の成長ホルモン分泌刺激試験における血清(血漿)成長ホルモン濃度の頂値が3ng/mL以下(GHRP-2負荷試験では15ng/mL以下)であること。
ただし、遺伝子組換え型の成長ホルモンを標準品とした場合は、血清(血漿)成長ホルモン濃度の頂値が1.8ng/mL以下(GHRP-2負荷試験では9ng/mL以下)であること。
[成長ホルモン分泌刺激試験の種類と成人成長ホルモン分泌不全症で重症と診断される血清(血漿)成長ホルモン濃度の頂値]
成長ホルモン分泌刺激物質:インスリン、アルギニン、グルカゴン
ヒト成長ホルモン標準品 遺伝子組換え:1.8ng/mL以下
ヒト成長ホルモン標準品 下垂体抽出:3ng/mL以下
成長ホルモン分泌刺激物質:GHRP-2
ヒト成長ホルモン標準品 遺伝子組換え:9ng/mL以下
ヒト成長ホルモン標準品 下垂体抽出:15ng/mL以下
◇SGA性低身長症
(1) SGA性低身長症への適用基準
以下のいずれの基準も満たすこと。
1) 出生時
出生時の体重及び身長がともに在胎週数相当の10パーセンタイル未満であり、かつ出生時の体重あるいは身長のいずれかが在胎週数相当の〔標準値-2SD〕未満であること。
なお、重症の新生児出生時に身長が測定できないことがあるので、測定されていない場合には出生体重のみで判定すること。
2) 治療の開始条件
・3歳以上の患者であること
・治療開始時点における身長が同性、同年齢の〔標準値-2.5SD〕未満
・治療開始前1年間の成長速度が標準成長速度の0SD未満
3)
出生後の成長障害が子宮内発育遅延以外の疾患等に起因する患者でないこと。また、成長障害をもたらすと考えられる治療を受けている患者でないこと。
(2) SGA性低身長症の治療継続基準
1年ごとに以下の基準を満たしているかどうかを判定し、いずれかを満たしたときに治療の継続をする。
1) 成長速度 ≧4cm/年
2) 治療中1年間の成長速度と、投与前1年間の成長速度の差が1.0cm/年以上の場合。
3) 治療2年目以降、増量後の治療中1年間の成長速度が下記の場合
2年目 ≧2.0cm/年
3年目以降 ≧1.0cm/年
ただし、二次性徴発来後、年間成長速度が2cmを下回るとき、あるいは骨年齢が男17歳、女15歳以上に達したときは投与を中止すること。
用法及び用量に関連する使用上の注意
◇成人成長ホルモン分泌不全症
(1)
本剤の投与量は、血清IGF-I濃度を参照して調整すること。血清IGF-I濃度は投与開始後24週目までは4週間に1回、それ以降は12週から24週間に1回の測定を目安とすること。
また、副作用の発現等の際は、適宜、血清IGF-I濃度を測定し、本剤の減量、一時的な投与中止等適切な処置をとること。
(2)
加齢に伴い生理的な成長ホルモンの分泌量や血清IGF-I濃度が低下することが知られている。本剤投与による症状の改善が認められなくなり、かつ本剤を投与しなくても血清IGF-I濃度が基準範囲内にある場合は、投与中止を考慮すること。
◇SGA性低身長症
用量の増量にあたっては、Δ身長SDスコア、低身長の程度等を考慮して総合的に判断すること(日本小児内分泌学会成長ホルモン委員会、「SGA性低身長症におけるGH治療の実施上の注意」を参照のこと)。
使用上の注意
慎重投与
(次の患者には慎重に投与すること)
1.
脳腫瘍(頭蓋咽頭腫、下垂体腺腫、松果体腫等)による成長ホルモン分泌不全性低身長症又は成人成長ホルモン分泌不全症の患者[成長ホルモンが細胞増殖作用を有するため、基礎疾患の進行や再発の観察を十分に行うこと。]
2.
心疾患、腎疾患のある患者[ときに一過性の浮腫があらわれることがあるので、特に心疾患、腎疾患のある患者に投与する場合には、観察を十分に行うこと。]
3.
大孔狭窄のある軟骨異栄養症の患者[本剤により症状の悪化を助長する可能性があるので、低身長改善の利益が大孔狭窄悪化の不利益を上回ると判断される場合のみ投与を考慮すること。大孔から上部頸椎のMRI等による定期的観察を十分に行い、大孔狭窄の悪化がみられた場合には本剤の投与を中止すること。]
重要な基本的注意
◇成人成長ホルモン分泌不全症
(1)
成人成長ホルモン分泌不全症患者では脳腫瘍の既往のある患者が多く含まれており、国内及び外国臨床試験において脳腫瘍の再発が報告されているため、脳腫瘍の既往のある患者に本剤を投与する場合は定期的に画像診断を実施し、脳腫瘍の発現や再発の有無を注意深く観察すること。
(2)
本剤の投与中は、血清IGF-I濃度が基準範囲上限を超えないよう、定期的に検査を実施すること。検査頻度については、「用法・用量に関連する使用上の注意」の項を参照すること。
(3)
本剤の投与により血糖値、HbA1cの上昇があらわれることがあるため、定期的に血糖値、HbA1cあるいは尿糖等を測定し、異常が認められた場合は投与量の減量あるいは投与中止を考慮すること。(【禁忌】及び「副作用 重大な副作用」の項を参照)
(4)
本剤の投与により浮腫、関節痛等があらわれることがあるため、観察を十分に行い、異常が認められた場合は投与量の減量あるいは投与中止を考慮すること。
(5)
本剤の治療は、内分泌専門医もしくはその指導の下で行うこと。