モキシシリン水和物及びクラリスロマイシンの3剤療法)における除菌※率は表3、表4のとおりである。
なお、米国及び英国で行われたヘリコバクター・ピロリ陽性の十二指腸潰瘍等に対する除菌の臨床試験注9)においても、同程度の成績が認められている。
※培養法及び組織診断法の結果がいずれも陰性
注9)各薬剤の投与量、投与期間は下記のとおりであり、国内の承認用法・用量と異なる。(【用法・用量】の項参照)
米国:ランソプラゾールとして1回30mg、アモキシシリン水和物として1回1,000mg(力価)及びクラリスロマイシンとして1回500mg(力価)の3剤を1日2回、10日間又は14日間経口投与
英国:ランソプラゾールとして1回30mg、アモキシシリン水和物として1回1,000mg(力価)及びクラリスロマイシンとして1回250mg(力価)の3剤を1日2回、7日間経口投与
臨床成績の表
表3 胃潰瘍における除菌率(7日間経口投与)
各薬剤の1回投与量 |
投与回数 |
除菌率 |
ランソプラゾール 30mg
アモキシシリン水和物 750mg(力価)
クラリスロマイシン 200mg(力価) |
2回/日 |
87.5%
(84/96例) |
ランソプラゾール 30mg
アモキシシリン水和物 750mg(力価)
クラリスロマイシン 400mg(力価) |
2回/日 |
89.2%
(83/93例) |
表4 十二指腸潰瘍における除菌率(7日間経口投与)
各薬剤の1回投与量 |
投与回数 |
除菌率 |
ランソプラゾール 30mg
アモキシシリン水和物 750mg(力価)
クラリスロマイシン 200mg(力価) |
2回/日 |
91.1%
(82/90例) |
ランソプラゾール 30mg
アモキシシリン水和物 750mg(力価)
クラリスロマイシン 400mg(力価) |
2回/日 |
83.7%
(82/98例) |
除菌率は基本解析対象集団を対象とした。
薬効薬理
1. 抗菌作用
(1)
アモキシシリン水和物及びクラリスロマイシンはヘリコバクター・ピロリに対し殺菌的な抗菌作用を示す。
(2)
クラリスロマイシンの抗菌力はpHの影響を受け、酸性では中性に比べて減弱する。一方、アモキシシリン水和物はクラリスロマイシンと比べてpHの影響は少ない。
(3)
アモキシシリン水和物とクラリスロマイシンとの併用における抗菌力には、相乗又は相加作用が認められ、いずれの菌株においても拮抗作用は認められていない。
また、アモキシシリン水和物及びクラリスロマイシンともにランソプラゾールとの併用投与により、経口投与後の胃組織中濃度の上昇が認められる(ラット)。
2. 作用機序
アモキシシリン水和物は細菌の細胞壁合成を阻害することにより効果を発揮し、また、クラリスロマイシンは細菌の70Sリボソームの50Sサブユニットと結合し蛋白合成を阻害することにより効果を発揮する。9,10)
ランソプラゾールは胃粘膜壁細胞のH+, K+-ATPaseのSH基と結合し、酵素活性を抑制することにより、酸分泌を抑制し胃内pHを上昇させる。11~14)
アモキシシリン水和物及びクラリスロマイシンとの3剤療法におけるランソプラゾールの役割は胃内pHを上昇させることにより、アモキシシリン水和物及びクラリスロマイシンの抗菌活性を高めることにあると考えられる。
有効成分に関する理化学的知見
ランソプラゾール
化学構造式
一般名
ランソプラゾール(Lansoprazole)〔JAN〕
化学名
(RS)-2-({[3-Methyl-4-(2,2,2-trifluoroethoxy)-2-pyridyl]methyl}sulfinyl)benzimidazole
分子式
C16H14F3N3O2S
分子量
369.36
融点
約166℃(分解)
性状
ランソプラゾールは白色~帯褐白色の結晶性の粉末である。N,N-ジメチルホルムアミドに溶けやすく、メタノールにやや溶けやすく、エタノール(99.5)にやや溶けにくく、ジエチルエーテルに極めて溶けにくく、水にほとんど溶けない。
アモキシシリン水和物
化学構造式
一般名
アモキシシリン水和物(Amoxicillin Hydrate)〔JAN〕
略号
AMPC
化学名
(2S,5R,6R)-6-[(2R)-2-Amino-2-(4-hydroxyphenyl)acetylamino]-3,3-dimethyl-7-oxo-4-thia-1-azabicyclo[3.2.0]heptane-2-carboxylic acid trihydrate
分子式
C16H19N3O5S・3H2O
分子量
419.45
融点
約195℃(分解)
性状
アモキシシリン水和物は、白色~淡黄白色の結晶又は結晶性の粉末である。水又はメタノールに溶けにくく、エタノール(95)に極めて溶けにくい。
クラリスロマイシン
化学構造式
一般名
クラリスロマイシン(Clarithromycin)〔JAN〕
略号
CAM
化学名
(2R,3S,4S,5R,6R,8R,10R,11R,12S,13R)-5-(3,4,6-Trideoxy-3-dimethylamino-β-D-xylo-hexopyranosyloxy)-3-(2,6-dideoxy-3-C-methyl-3-O-methyl-α-L-ribo-hexopyranosyloxy)-11,12-dihydroxy-6-methoxy-2,4,6,8,10,12-hexamethyl-