考えられる腫瘍の発生は認められなかった。
4.
デュタステリドを投与された前立腺肥大症患者で男性乳癌が報告されている。デュタステリドと男性乳癌の発現との関連性は不明である。なお、前立腺肥大症患者を対象とした2~4年間の海外臨床試験(4325例)において3例の乳癌が報告された。このうち、デュタステリドが投与された症例では2例(曝露期間10週間、11ヵ月)、プラセボのみが投与された症例では1例報告されている。国内臨床試験での報告はない。
5.
白人を主体とした50~75歳の男性8231例(生検により前立腺癌が陰性かつPSA値2.5~10.0ng/mL)を対象とした4年間の国際共同試験(日本人57例を含む)において、Modified Gleason Score※8~10の前立腺癌の発現率がプラセボ群(0.5%)に対しデュタステリド群(1.0%)において高かった(相対リスク2.06[95%信頼区間:1.13-3.75])との報告がある1)~3)。
※組織学的悪性度の指標
薬物動態
1. 血中濃度
(1) 単回投与試験
健康成人にデュタステリド0.5mgを単回経口投与したとき、投与後1.5時間に最高血清中薬物濃度(Cmax平均値:3288.5pg/mL)に達し、AUC0-tは52316.9hr・pg/mL(平均値)であった。(外国人データ:図-1及び表-1)。
図-1 健康成人にデュタステリド0.5mgを単回経口投与したときの血清中薬物濃度(外国人データ)(平均値+標準偏差、n=33)
(2) 反復投与試験
男性の男性型脱毛症患者にデュタステリド0.05~2.5mgを1日1回24週間反復経口投与したとき、投与後24週の平均血清中薬物濃度は0.1及び0.5mg投与群でそれぞれ1.51±0.96及び30.69±13.90ng/mLであった。消失は非線形であり、血清中デュタステリド濃度が低い場合、高濃度域と比べて速やかに消失した(図-2)。デュタステリド0.1及び0.5mgを24週間反復投与したとき、血清中薬物濃度はそれぞれ最終投与後12及び20週時で定量下限(0.1ng/mL)未満であった(外国人データ)。
前立腺肥大症患者にデュタステリド0.5mgを1日1回6ヵ月間反復経口投与したとき、投与後6ヵ月の血清中薬物濃度は44.82±17.91ng/mLであった。また、定常状態におけるt1/2は3.4±1.2週間であった。
図-2 男性の男性型脱毛症患者にデュタステリド0.05~2.5mgを1日1回24週間経口投与後の血清中薬物濃度(外国人データ)(平均値+標準偏差、n=34~47)
(注)本剤の承認用量は1日1回0.1又は0.5mgである。
2. 分布
デュタステリドはMRP2及びOAT1輸送を阻害しなかった。OAT3、OATP1B1及びOATP1B3輸送を阻害し、IC50の最小値はそれぞれ0.5、0.8及び20μMであったが、いずれも臨床血清中濃度(約0.07μM)より高かった。
3. 代謝
デュタステリドは主に肝代謝によって消失すると考えられる。
(1)
デュタステリドはCYP3A4/CYP3A5によって水酸化されたが、CYP1A2、2A6、2B6、2C8、2C9、2C19、2D6及び2E1では代謝されなかった(in vitro試験)。
(2)
デュタステリドはCYP1A2、2C9及び2D6活性を阻害しなかったが、CYP2C19及び3A4活性を阻害し、IC50は50μMであった(in vitro試験)。
(3)
デュタステリドはPXR活性化によるCYP3A4誘導能を示さなかった(in vitro試験)。
(4)
前立腺肥大症患者にデュタステリド0.5mgを1日1回反復経口投与したとき、主な代謝物として1,2-二水素化体、4’-水酸化体、6-水酸化体が確認された。
4. 排泄
デュタステリドは主に代謝物として糞中に排泄される。
(1)
健康成人にデュタステリド1~20mgを単回経口投与したとき、投与後48時間以内の尿中に未変化体は検出されなかった。
(注)本剤の承認用量は1日1回0.1又は0.5mgである。
(2)
健康成人にデュタステリド0.5mgを1日1回6ヵ月以上反復経口投与したとき、糞中に約5%の未変化体が排泄され、関連物質(未変化体+代謝物)として約42%が回収された。尿中への未変化体の排泄は0.1%未満であり、関連物質の排泄も微量であった(外国人のデータ)。
5. 高齢者における薬物動態
24~87歳の健康成人にデュタステリド5mgを単回経口投与したとき、50~69歳及び70歳以上の年齢群のt1/2は49歳以下の年齢群に比べて延長し、AUC0-∞は約20%増加した。なお、この変化は臨床上影響を与えるものではない(外国人のデータ)。
(注)本剤の承認用量は1日1回0.1又は0.5mgである。
6. 食事の影響
健康成人にデュタステリド2.5mgを食後単回経口投与したとき、薬物動態パラメータに若干の変化を認め、AUC0-∞は空腹時投与の2573から2197ng・hr/mLに減少した。なお、この変化は臨床上影響を与えるものではない。
(注)本剤の承認用量は1日1回0.1又は0.5mgである。
7. 薬物相互作用
(1) CYP3A4阻害作用を有する薬剤
デュタステリドの酸化的代謝はCYP3A4阻害作用を有するケトコナゾールによって阻害された(in vitro試験)。
CYP3A4阻害薬とデュタステリドの薬物相互作用試験は実施されていないが、前立腺肥大症患者を対象とした臨床試験での母集団薬物動態解析の結果、ベラパミル塩酸塩又はジルチアゼム塩酸塩との併用により、デュタステリドのクリアランスが低下した(外国人のデータ)。
(2) 他の薬剤との併用
デュタステリド0.5mgあるいは5mgと、コレスチラミン、ワルファリン、ジゴキシン、タムスロシン塩酸塩、テラゾシン塩酸塩との併用において薬物相互作用は認められなかった(外国人のデータ)。
(注)本剤の承認用量は1日1回0.1又は0.5mgである。
8. その他の薬物速度論的パラメータ
(1) 生物学的利用率
健康成人にデュタステリド0.5mgを単回経口投与したとき、生物学的利用率は59%であった(外国人のデータ)。
(2) 精液移行
健康成人にデュタステリド0.5mgを反復経口投与したとき、精液中/血清中薬物濃度比は平均11.5%であった(外国人のデータ)。
(3) 蛋白結合率(in vitro試験)
血清蛋白結合率は99.8%と高く、アルブミン、α1-酸性糖蛋白、コルチコステロイド結合グロブリン及び性ホルモン結合グロブリンに対する結合率は、それぞれ9