に対する耐性を高める.
●血管平滑筋の細胞内Ca過負荷による動脈壁へのCa沈着やアテローム性動脈硬化等の抑制並びに持続性高血圧に伴う血管病変の進展を抑制する.
1. 血圧に及ぼす作用
●本態性高血圧症及び腎性高血圧症患者11例に1回20mgを1日2回,9~23ヵ月間単独又は従来の治療薬に追加して経口投与した場合,収縮期及び拡張期血圧の平均値は投与前173.6/107.5mmHgより投与後2週目には145.3/88.3mmHg,4週目には127.4/82.0mmHgと有意に下降し,以後長期にわたり良好な血圧を維持する4).
●高血圧症患者21例に1回20mgを1日2回経口投与した場合,1日8回の血圧測定値の標準偏差と血圧日内較差からみた血圧日内変動の大きさには有意の変化を及ぼさず,1日の血圧日内変動のパターンにも大きな変化を及ぼさない6).
2. 心・全身血行動態に及ぼす作用
麻酔開胸犬に5μg/kgを静脈内投与した実験では,投与3分後には平均血圧が著明に低下し,左室最大駆出速度の上昇を伴う心拍出量の増加と全末梢血管抵抗の減少がみられる.左室外部仕事及び心拍数は変化せず,また容量血管には有意の影響は認められない7).
3. 冠循環に及ぼす作用
●麻酔開胸犬に静脈内投与した実験では,総冠血流量を増加させる有効量は1~5μg/kgで,3μg/kgの場合,総冠血流量はほぼ100%増加する.また300μg/kgを経口投与した場合,総冠血流量は投与10分後から増加しはじめ,作用は2時間以上持続する8).
●正常成犬に1日60mgを4~5ヵ月間あらかじめ毎日経口投与した実験では,左冠動脈前下行枝の結紮1週間後における摘出心の冠動脈造影から冠動脈間吻合の数,口径の大きさともに有意に発達する9).
4. 心筋エネルギー代謝及び酸素消費量に及ぼす作用
●麻酔開胸犬に1,3,10μg/kgを静脈内投与した実験では,心拍数はほとんど変化せず,平均動脈圧はそれぞれ10,20,31%低下し,同時に心筋酸素消費量は8,20,30%減少する10).
●家兎に2mg/kgを1日2回,4~5日間あらかじめ皮下投与した後の摘出心では,左冠動脈結紮による90分間の虚血時及び虚血後30分間の再灌流時にみられる酸化的リン酸化能の低下と心筋細胞ミトコンドリア内のCa含量の増加が抑制される.また同時に心筋細胞内の高エネルギーリン酸化合物(ATP,CP)が保持される11).
5. 血管・臓器に及ぼす作用
●高血圧自然発症ラット(生後4週齢)に1日50~150mg/kgを5ヵ月間経口投与した実験では大動脈及び腸間膜動脈壁のCaの異常蓄積(Monckeberg型動脈硬化症)は有意に抑制される12).
●Dahl食塩感受性高血圧ラットに8%NaClを負荷し,ニフェジピン300ppmを6週間経口投与した実験では,心臓の肥大及び心,腎,腸間膜の動脈における内膜の肥厚や類線維壊死の発生を抑制するとともに修復する13).
6. その他の作用
●血小板
麻酔犬に1分間当り4μg/kgを静脈内に持続投与した実験では,両側大腿動脈に挿入したポリテトラフルオロエチレン人工血管での111In標識自家血小板の沈着及び血小板沈着総数は有意に低下する14).
●房室伝導
麻酔開胸犬に総冠血流量を100%増加する用量の3μg/kgから10μg/kgを静脈内投与した実験では,in situ心臓の房室伝導は抑制されずむしろ軽度促進する.30μg/kgまで増量すると房室伝導時間と房室伝導系の機能不応期はともに延長するが,それぞれ約20,30ミリ秒の延長にとどまり,何ら障害を及ぼさない15).
有効成分に関する理化学的知見
構造式
一般名
ニフェジピン(Nifedipine)JAN (Nifedipine INN)
化学名
Dimethyl 2,6-dimethyl-4-(2-nitrophenyl)-1,4-dihydropyridine-3,5-dicarboxylate
分子式
C17H18N2O6
分子量
346.33
融点
172~175℃
性状
本品は黄色の結晶性の粉末で,におい及び味はない.
本品はアセトン又はジクロロメタンに溶けやすく,メタノール,エタノール(95)又は酢酸(100)にやや溶けにくく,ジエチルエーテルに溶けにくく,水にほとんど溶けない.
本品は光によって変化する.
包装
錠剤
*10mg PTP包装 100錠(10錠×10),500錠(10錠×50),700錠(14錠×50)
バラ包装 1,000錠
*20mg PTP包装 100錠(10錠×10),500錠(10錠×50),700錠(14錠×50)
バラ包装 1,000錠
主要文献及び文献請求先
主要文献
1)
浅田裕啓他:バイエル薬品社内資料[薬物動態](1983)
2)
Duhm, B. et al.:Arzneim.-Forsch./Drug Res., 22(1), 42(1972)
3)
Duhm, B. et al.:バイエル薬品社内資料[ラットにおける乳汁排泄](1971)
4)
阿部圭志他:臨牀と研究, 61(4), 261(1984)
5)
中村芳郎他:臨牀と研究, 60(6), 309(1983)
6)
栃久保修他:薬理と治療, 11(9), 393(1983)
7)
Hayase, S. et al.:Jpn. Circulation J., 35(8), 903(1971)
8)
橋本虎六他:心臓, 3(11), 1294(1971)
9)
Kanazawa, T. et al.:Arzneim.-Forsch./Drug Res., 24(9), 1267(1974)
10)
Vater, W.:In Proceedings, 2nd International Adalat(R)Symposium, p.77(1975)
11)
Nayler, W. G. et al.:Am. J. Cardiol., 46, 242(1980)
12)
Fleckenstein, A. et al.:In Proceedings, 5th International Adalat(R)Symposium, p.36(1983)
13)
Kazda, S. et al.:In Proceedings, 5th International Adalat(R)Symposium, p.133(1983)
14)
Pumphrey, C. W. et al.:Am. J. Cardiol., 51(3), 591(1983)