及び有効性は確立していない。(国内での使用経験がない。)〔「薬物動態」の項参照〕
2.
**成人と比較して小児、小児と比較して新生児では神経及び筋障害のリスクが増大する可能性がある。(幼若イヌ及び新生児イヌを用いた試験により、神経及び筋症状に対する感受性の亢進がみられた。〔「その他の注意」の項参照〕)
臨床検査結果に及ぼす影響
1.
遺伝子組換え型トロンボプラスチン試薬を用いた測定において、ダプトマイシンの血漿中の濃度が臨床的に十分高い場合、見かけ上、濃度依存的かつ有意なプロトロンビン時間(PT)延長及び国際標準比(INR)増加がみられることがある。遺伝子組換え型トロンボプラスチン試薬とダプトマイシンの相互作用による見かけ上のPT延長及びINR増加は、ダプトマイシンの血漿中濃度がトラフ付近でPT又はINR検査用の試料を採取することにより可能性を最小限にできる。しかし、トラフ値でも相互作用を引き起こす可能性が十分にある。
本剤投与中にPT又はINRが異常に高い場合には、以下を行うことが望ましい。
(1)
2回目以降の本剤投与直前(トラフ時)に採血し、PT又はINRの評価を繰り返す。トラフ時のPT又はINRが予想よりも顕著に高い場合には、他の方法によるPT又はINRの評価を検討すること。
(2)
PT又はINRの異常高値を引き起こす他の原因について評価すること。
2.
本剤とワルファリンを併用する場合には、本剤投与開始後数日間は抗凝血活性をモニタリングすること。
過量投与
本剤の過量投与が疑われた場合は患者の状態を注意深く観察し、必要に応じ支持療法を行うことが望ましい。本剤は、血液透析(4時間で投与量の約15%除去)又は腹膜透析(48時間で約11%除去)により体内から緩やかに除去される。
適用上の注意
1. *調製方法
(1)
本剤1バイアルにつき7mLの生理食塩液をゆっくりと加えて溶解し、50mg/mLの溶液とする。なお、泡立ちを抑えるため、溶解時又は溶解後のバイアルは激しく振とうせずに、以下の手順に従って調製する。
・ ゴム栓の中央部に針を刺す。
・ 生理食塩液7mLをバイアルの内壁をつたわらせながらゆっくりと注入する。
・ バイアルをゆっくりと回しながら塊又は粉末を十分に湿らせる。
・ 溶解するまで約10分間静置する。
・ 数分間ゆっくりとバイアルを回す。
・ 完全に溶解したことを確認する。
(2)
静脈内注射する場合、1)の溶液をそのまま使用する。
(3)
30分かけて点滴静注する場合、1)の溶液をさらに生理食塩液で希釈し使用する。
(4)
調製後は速やかに使用すること。なお、やむを得ず保存を必要とする場合でも、調製開始後、室温(25℃)では12時間以内、冷所(2~8℃)では48時間以内に使用すること。
2. 投与前
不溶物がないことを目視で確認すること。
3. 配合適性
(1)
本剤は生理食塩液及び乳酸リンゲル液とは配合可能である。
(2)
ブドウ糖を含む希釈液とは配合不適である。
(3)
配合適性については限られたデータしかないため、他の薬剤を同一の輸液ラインを通して同時に注入しないこと。他の薬剤を同一の輸液ラインから連続注入する場合には、配合変化を起こさない輸液(生理食塩液又は乳酸リンゲル液)を本剤の投与前後に輸液ライン内に流すこと。
その他の注意
**ラット及びイヌにおいて、ダプトマイシン投与により骨格筋に影響がみられたが、心筋及び平滑筋に変化は認められなかった。この変化は、病理組織学的に骨格筋の変性又は再生像を呈し、CK(CPK)の上昇を伴っていた。線維化及び横紋筋融解症は認められなかった。病理組織学的変化を含む骨格筋への影響はすべて、ラットにおいて休薬後4週以内及びイヌにおいて休薬後11週以内に完全に回復した。
ラット及びイヌにおいて、末梢神経に変化(軸索の変性像を呈し、機能的な変化を伴うこともあった)がみられ、この変化はミオパシーよりも高用量で認められた。病理組織学的及び機能的な影響はイヌで評価したところ、実質的に休薬後6ヵ月以内に回復した。
7週齢の幼若イヌ(神経及び筋等の発達段階が乳幼児に相当)にダプトマイシンを28日間静脈内投与した試験において、成熟イヌと比較して低い血漿中曝露量(50mg/kg/日:Cmaxの比較で約1/2)から末梢神経の変性がみられた。また、成熟イヌと同様の所見に加えて脊髄の変性がみられた。これらの所見は28日間の休薬後に回復傾向が認められた。
4日齢新生児イヌにダプトマイシンを28日間(生後4~31日)静脈内投与した試験において、幼若イヌと比較して低い血漿中曝露量(25mg/kg/日:Cmaxの比較で約1/3)から筋攣縮及び筋硬直がみられた。これらの所見は28日間の休薬後には回復した。なお、25mg/kg/日投与時の血中濃度は、ヒトの乳児において予想される血中濃度の範囲内であった。
薬物動態
1. 血漿中濃度
(1) *単回投与(30分間点滴静注)
健康成人にダプトマイシン2、4、6、9及び12mg/kgを30分間単回点滴静脈内投与した際、ダプトマイシンの血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC0-∞)及び最高血漿中濃度(Cmax)は、ほぼ用量に比例して増加した。終末相消失半減期(t1/2)、血漿クリアランス(CL)及び分布容積(Vd)は、用量によらずほぼ一定であった(図1及び表1)。
図1 健康成人におけるダプトマイシン30分間点滴静注時の平均血漿中濃度の推移(平均、n=6)
(2) *単回投与(静脈内注射)
健康成人にダプトマイシン6mg/kgをクロスオーバーで10秒間静脈内注射又は30分間点滴静注した際、静脈内注射のCmaxは、30分間点滴静注に比べ約1.5倍高かったが、AUC、C24hr及びt1/2等の他の薬物動態パラメータは同程度であった(表2)。
(3) 反復投与
健康成人にダプトマイシン4、6及び10mg/kgを1日1回7日間反復静脈内投与した際、ダプトマイシンの薬物動態はおおむね線形(用量比例)で、時間(投与日数)非依存的であった。ダプトマイシンの血漿中濃度は、おおむね3~5日目で定常状態に達した。反復投与による蓄積性はほとんど認められず、4、6及び10mg/kg投与によるAUC0-24hr及びCmaxの累積係数(7日目/1日目)はそれぞれ1.15~1.17及び1.03~1.08であった。
2. 分布
(1)
健康成人におけるダプトマイシンの分布容積は約0.1L/kgで、2~12mg/kgの用量範囲でほぼ一定であった。また、ダプトマイシンは濃度非依存的にヒト血漿蛋白に可逆的に結合する(平均値90~93%)。