速度論的パラメータは以下の通りであった。
(2) 反復投与6)
健康成人男性に,本剤1回1錠(アコチアミド塩酸塩水和物として100mg)を1日3回,9日間(1日目は単回,3~8日目は毎食前,9日目は単回),食前に反復経口投与したとき,3日目の3回目の投与より血漿中濃度はほぼ定常状態に達した。また,反復投与による薬物動態はほとんど変化しなかった。
(3) 食事の影響7)
健康成人男性に,本剤1錠(アコチアミド塩酸塩水和物として100mg)を空腹時,食前又は食後に経口投与したとき,Cmaxは食前投与で最も高く,空腹時投与に比べ62.7%上昇した。また,食後投与のCmaxは食前投与の59.6%であった。AUClastは,食後投与で最も低く,空腹時及び食前投与に比べそれぞれ76.8%及び80.0%に減少した。
2. 血漿蛋白結合率8)(in vitro)
In vitro平衡透析法で得られた血漿蛋白結合率は,ヒト血漿で84.21%~85.95%,ヒト血清アルブミンで82.64%~85.10%であり,同程度の結合率を示したため,主要な結合蛋白はアルブミンと考えられた。
3. 代謝
(1) 代謝9),10)(外国人データ)
健康成人男性6例に,[14C]アコチアミド溶液(600mg/103μCi)を空腹時に経口投与したとき,血漿中の放射能のうち,60.0%が未変化体によるものであった。その他,血漿中には脱イソプロピル体,未変化体のグルクロン酸抱合体及び脱イソプロピル体のグルクロン酸抱合体が認められた。
(2) 代謝酵素11)(in vitro)
ヒトCYP発現系ミクロソームを用いたin vitro代謝試験により,本剤はCYP2C8,CYP1A1又はCYP3A4によって脱イソプロピル体に代謝されると考えられる。また,ヒトUGT発現系ミクロソームを用いたin vitro代謝試験により,本剤はUGT1A8又はUGT1A9によって未変化体のグルクロン酸抱合体に代謝されると考えられる。
4. 排泄9)(外国人データ)
健康成人男性6例に,[14C]アコチアミド溶液(600mg/103μCi)を空腹時に経口投与したとき,投与後216時間までに,糞中及び尿中にそれぞれ総放射能として投与量の92.7%及び5.3%が排泄された。
薬物動態の表
単回投与したときの薬物速度論的パラメータ
投与量
(mg) Tmax
(hr) Cmax
(ng/mL) AUCinf
(ng・hr/mL) T1/2
(hr)
100 2.42±0.97 30.82±13.33 171.3±59.43 13.31±6.91
平均値±標準偏差, n=6
AUCinf:最終測定時点から無限大まで外挿して算出したAUC
臨床成績
1. 第III相試験12),13)
食後膨満感,上腹部膨満感,早期満腹感を主症状とする機能性ディスペプシア患者*を対象に実施した二重盲検比較臨床試験の成績は以下のとおりであった。本剤1回1錠(アコチアミド塩酸塩水和物として100mg)を食前に1日3回,4週間経口投与したとき,2つの主要評価項目である「被験者の印象の改善率」及び「3症状(食後膨満感,上腹部膨満感,早期満腹感)の消失率」について,プラセボ群に対する優越性が検証された。また,4週間の治療期及び4週間の後観察期の両評価項目の結果の推移は下図のとおりであった。
*RomeIII基準に準じ,同意取得6ヵ月以上前から食後膨満感,上腹部膨満感,早期満腹感の症状を1つ以上有し,同意取得3ヵ月以上前より症状が持続している20~64歳の患者
(1)
治療期最終調査時点(投与4週又は中止時)における被験者の印象の改善率
(2)
治療期最終調査時点(投与4週又は中止時)における3症状(食後膨満感,上腹部膨満感,早期満腹感)の消失率
(3)
被験者の印象の改善率の推移
(4)
3症状(食後膨満感,上腹部膨満感,早期満腹感)消失率の推移
2. 長期投与試験14)
食後膨満感,上腹部膨満感,早期満腹感を主症状とする機能性ディスペプシア患者*を対象に,4週毎の来院時に症状の改善の程度により休薬,再服薬,中止,終了することが可能とされていた長期投与試験において,投与4週時及び24週時の「被験者の印象の改善率」はそれぞれ48.9%(193/395例)及び48.9%(69/141例)であった。24週時まで一度も休薬せずに継続投与された患者は405例中22例であり,本剤の長期投与が必要となる患者は限られていた。なお,症状改善による休薬例は75.1%(304/405例)で,そのうち50.7%(154/304例)で症状の改善が12週間継続し,本剤の投与を終了した。
*RomeIII基準に準じ,同意取得6ヵ月以上前から食後膨満感,上腹部膨満感,早期満腹感の症状を1つ以上有し,同意取得3ヵ月以上前より症状が持続している20~79歳の患者
臨床成績の表
治療期最終調査時点(投与4週又は中止時)における被験者の印象の改善率
プラセボ群
(442例) 300mg/日群
(450例)
改善*1例数 154 235
被験者の印象の改善率(%)*2
[95%信頼区間] 34.8
[30.5, 39.3] 52.2
[47.6, 56.7]
改善率の群間差(%)
[95%信頼区間] - 17.4
[11.0, 23.7]
p値*3 - p<0.001
*1:被験者の印象(7段階:「非常に良くなった」,「良くなった」,「少し良くなった」,「変わらない」,「少し悪くなった」,「悪くなった」及び「非常に悪くなった」)のうち,「非常に良くなった」,「良くなった」を改善と定義した。
*2:改善例数の割合として改善率を算出した。
*3:Fisherの直接確率法,有意水準両側5%
治療期最終調査時点(投与4週又は中止時)における3症状(食後膨満感,上腹部膨満感,早期満腹感)の消失率
プラセボ群
(442例) 300mg/日群
(450例)
3症状の消失*4例数 40 69
3症状消失率(%)*5
[95%信頼区間] 9.0
[6.7, 12.0] 15.3
[12.2, 18.9]
3症状消失率の群間差(%)
[95%信頼区間] - 6.3
[2.1, 10.5]
p値*6 |