本剤単独投与における後期第II相臨床試験成績は、次表のとおりであった17~23)。
(表3参照)
2. 非小細胞肺癌に対する第III相臨床試験
独立した2つのグループ(Aグループ24) 及びBグループ25) )において非小細胞肺癌に対する第III相臨床試験を実施した。Aグループ及びBグループにおけるシスプラチンと本剤併用療法群(1コースを4週間としてシスプラチン80mg/m2を第1日に、本剤60mg/m2を第1、8、15日に投与)、シスプラチンとビンデシン硫酸塩併用療法群(1コースを4週間としてシスプラチン80mg/m2を第1日に、ビンデシン硫酸塩3mg/m2を第1、8、15日に投与)及び本剤単独療法群(1コースを4週間として本剤100mg/m2を第1、8、15日に投与)の成績は、次表のとおりであった。
(表4、表5参照)
3. UGT1A1遺伝子多型と副作用発現率3)
本剤単独投与(55例)の各種癌患者について、UGT1A1遺伝子多型と副作用との関連性について検討した。本剤は、100mg/m2を1週間間隔又は150mg/m2を2週間間隔で投与した。
グレード3以上の好中球減少及び下痢の発現率は次表のとおりであった。
(表6参照)
表3
疾患名 奏効率(%)
〔CR+PR/完全例〕 奏効率(%)
〔CR+PR/適格例〕
小細胞肺癌17) 37.1〔13/35〕 31.7〔13/41〕
非小細胞肺癌17) 24.7〔23/93〕 21.1〔23/109〕
子宮頸癌18) 23.6〔13/55〕 19.7〔13/66〕
卵巣癌18) 23.6〔13/55〕 19.1〔13/68〕
胃癌19) 23.3〔14/60〕 18.4〔14/76〕
結腸・直腸癌20) 32.1〔17/53〕 27.0〔17/63〕
乳癌21) 23.1〔15/65〕 20.0〔15/75〕
有棘細胞癌22) 39.4〔13/33〕 31.7〔13/41〕
悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)23) 41.9〔26/62〕 37.7〔26/69〕
表4 腫瘍縮小効果
グループ 投与群 奏効率(%)〔CR+PR/評価対象例〕
A 本剤+CDDP 43.7〔55/126〕
A CDDP+VDS 31.7〔38/120〕
A 本剤単独 20.5〔26/127〕
B 本剤+CDDP 28.6〔28/ 98〕
B CDDP+VDS 21.8〔22/101〕
表5 生存期間及び生存率
グループ 投与群 例数 MST(週) 生存率(%)
年数 生存率(%)
点推定 生存率(%)
95%CI
A 本剤+CDDP 129 50.0 1年 46.5 37.8-55.2
A 本剤+CDDP 129 50.0 2年 19.4 12.5-26.3
A CDDP+VDS 122 45.6 1年 38.3 29.6-47.0
A CDDP+VDS 122 45.6 2年 18.7 11.7-25.8
A 本剤単独 129 46.0 1年 41.8 33.2-50.4
A 本剤単独 129 46.0 2年 21.9 14.6-29.3
B 本剤+CDDP 100 44.7 1年 42.5 32.8-52.3
B 本剤+CDDP 100 44.7 2年 14.2 7.3-21.1
B CDDP+VDS 103 49.6 1年 47.6 37.9-57.2
B CDDP+VDS 103 49.6 2年 17.5 10.1-24.8
CDDP: シスプラチン VDS: ビンデシン硫酸塩 MST: 生存期間中央値 CI: 信頼区間
表6
遺伝子多型 グレード3以上の好中球減少発現率〔例数〕 グレード3の下痢発現率〔例数〕
UGT1A1*6 とUGT1A1*28 をともにもたない 14.3%〔3/21〕 14.3%〔3/21〕
UGT1A1*6 又はUGT1A1*28 をヘテロ接合体としてもつ 24.1%〔7/29〕 6.9%〔2/29〕
UGT1A1*6 又はUGT1A1*28 をホモ接合体としてもつ、もしくはUGT1A1*6 とUGT1A1*28 をヘテロ接合体としてもつ 80.0%〔4/5〕 20.0%〔1/5〕
薬効薬理
イリノテカン塩酸塩水和物は、1983年に抗腫瘍性アルカロイドであるカンプトテシンから合成された抗悪性腫瘍剤である26)。本剤は生体内でカルボキシルエステラーゼにより活性代謝物(SN-38)に加水分解されるプロドラッグである27)。
(1) 抗腫瘍作用28, 29, 30)
移植腫瘍に対して広い抗腫瘍スペクトラムを有する。マウスS180肉腫、Meth A線維肉腫、Lewis肺癌、L1210及びP388白血病、ラットWalker 256癌肉腫ならびにヌードマウス可移植性ヒト腫瘍MX-1(乳癌)、Co-4(大腸癌)、St-15(胃癌)、QG-56(肺癌)等に強い抗腫瘍効果を示す。
(2) 作用機序27)
I型DNAトポイソメラーゼを阻害することによって、DNA合成を阻害する。殺細胞効果は細胞周期のS期に特異的であり、制限付時間依存性に効果を示す薬剤である。
有効成分に関する理化学的知見