機能抑制、下痢等の副作用に注意し、異常が認められた場合には、回復を十分に確認してから投与を行うなど、投与間隔に留意すること。
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
1.
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい。[動物実験(ラット、ウサギ)で催奇形作用が報告されている。]
2.
授乳中の婦人には授乳を中止させること。[動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている。]
小児等への投与
1.
**小児悪性固形腫瘍
幼児又は小児に投与する場合には、副作用の発現に特に注意し、慎重に投与すること。
低出生体重児、新生児又は乳児に対する安全性は確立していない(使用経験が少ない)。
2.
小児悪性固形腫瘍以外
低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は確立していない(使用経験が少ない)。
適用上の注意
1. 調製時:
本剤は細胞毒性を有するため、調製時には手袋を着用することが望ましい。皮膚、眼、粘膜に薬液が付着した場合には、直ちに多量の流水でよく洗い流すこと。
2. 投与経路:
必ず点滴静脈内投与とし、皮下、筋肉内には投与しないこと。
3. 投与時:
(1)
静脈内投与に際し、薬液が血管外に漏れると、注射部位に硬結・壊死を起こすことがあるので薬液が血管外に漏れないように投与すること。
(2)
本剤は、輸液に混和後、できるだけ速やかに投与すること。
(3)
本剤は光に不安定なので直射日光を避けること。また、点滴時間が長時間に及ぶ場合には遮光して投与すること。
その他の注意
欧州における進行性小細胞肺癌を対象とした無作為化第III相臨床試験において、本剤とシスプラチン併用投与群(本剤80mg/m2を第1、8日目、シスプラチン80mg/m2を第1日目に投与し3週毎に繰り返す) での治療関連死が39例中4例に認められ、臨床試験が中断された。その後、本剤の投与量を65mg/m2に減量し、臨床試験は再開され、試験は終了となった。なお、本剤減量後の治療関連死は202例中7例であった。4)
薬物動態
1. 血中濃度5)
各種悪性腫瘍患者に、本剤50~350mg/m2を単回点滴静脈内投与したときの血漿中の未変化体と活性代謝物(SN-38)の濃度を測定した。未変化体は血漿中からの減衰速度が速く、t1/2が3.7~5.8時間であったが、SN-38のt1/2は11.4~18.5時間であり、未変化体と比べて持続的な濃度推移を示した。未変化体及びSN-38は投与後72時間程度でほぼ完全に血中から消失した。
イリノテカン塩酸塩水和物投与後の血漿中濃度推移
(表1参照)
2. 分布6, 7)
参考(動物実験)
ラットに14C標識体を単回静脈内投与した後の組織内放射能濃度は、脳、中枢神経系、生殖系を除く各組織で血漿中放射能濃度より高く、速やかでかつ良好な組織移行性が認められた。
3. 代謝
ヒトの肝及び各組織において、本剤はカルボキシルエステラーゼにより活性代謝物(SN-38)に直接変換される8, 9)。その他本剤は、CYP3A4により一部は無毒化され、また、一部は間接的にSN-38に変換される10, 11)。
SN-38は、主に肝の代謝酵素であるUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)の一分子種であるUGT1A1によりグルクロン酸抱合され、SN-38のグルクロン酸抱合体(SN-38G)となり、主に胆汁中に排泄される12, 13)。
UGT1A1にはUGT1A1*6、UGT1A1*28 等の遺伝子多型が存在し、UGT1A1*6、もしくはUGT1A1*28 においては、これら遺伝子多型をもたない患者に比べてヘテロ接合体、ホモ接合体としてもつ患者の順にSN-38Gの生成能力が低下し、SN-38の代謝が遅延する1, 2, 3)。
日本人におけるUGT1A1*6、UGT1A1*28 のアレル頻度は13.0~17.7%、8.6~13.0%との報告がある14)。
各種癌患者(176例)におけるUGT1A1遺伝子多型とAUC比注) との関連性は次表のとおりである3)。
(表2参照)
参考(動物実験)
ラットにおいてSN-38Gは、腸内細菌がもつβ-グルクロニダーゼによりSN-38に脱抱合される15, 16)。
4. 排泄
各種悪性腫瘍患者に、本剤165mg/m2又は250mg/m2を単回点滴静脈内投与したときの24時間までの尿中排泄率は、未変化体が16.3~21.1%、SN-38が0.11~0.15%であった。
表1 各種悪性腫瘍患者におけるイリノテカン塩酸塩水和物(CPT-11)、SN-38の薬物動態学的パラメータ
投与量
(mg/m2) Cmax(μg/mL)
CPT-11 Cmax(μg/mL)
SN-38 t1/2(hr)
CPT-11 t1/2(hr)
SN-38 AUC(μg・hr/mL)
CPT-11 AUC(μg・hr/mL)
SN-38
50 0.7 0.02 5.6 11.4 3.6 0.2
100 1.9 0.03 5.8 18.5 14.2 0.6
165 4.7 0.05 4.2 12.2 21.5 0.7
250 7.6 0.07 4.5 13.9 27.9 0.9
350 7.1 0.14 3.7 14.8 44.7 1.1
(注) 本剤の承認された1回用量は、150mg/m2以下である(「用法及び用量」の項参照)。
表2
遺伝子多型 AUC比注)例数 AUC比注)
中央値(四分位範囲)
UGT1A1*6 とUGT1A1*28 をともにもたない 85 5.55(4.13-7.26)
UGT1A1*6 又はUGT1A1*28 をヘテロ接合体としてもつ 75 3.62(2.74-5.18)
UGT1A1*6 又はUGT1A1*28 をホモ接合体としてもつ、もしくはUGT1A1*6 とUGT1A1*28 をヘテロ接合体としてもつ 16 2.07(1.45-3.62)
注) SN-38GのAUCをSN-38のAUCで除した値
臨床成績
1. 承認時までの臨床試験