1.
本剤の投与開始は,医療機関において医師により又は医師の直接の監督により実施すること.通院,自己投与は,医師がその妥当性を慎重に検討し,十分な教育訓練を施した後,医師自らの管理指導の下に実施すること.
2.
腹膜炎を合併することがあるので,本剤の投与にあたっては特に清潔な環境下で無菌的操作により行うとともに次のことに注意すること.
(1)
腹膜カテーテルの管理及び腹膜カテーテル出口部分の状態には十分注意すること.
(2)
腹膜炎が発生すると排液が濁るので,その早期発見のために毎排液後,液の混濁状態を確認すること.腹膜炎発生の有無の確認は,排液の澄明性を未使用の本剤と比較して行い,白濁している場合には,速やかな処置をとること.
3.
長期の腹膜透析実施において硬化性被嚢性腹膜炎(SEP)を合併することがある1)ので,発症が疑われたら直ちにCAPDを中止し,血液透析に変更すること.発症後は経静脈的高カロリー輸液を主体とした栄養補給を行い,腸管の安静を保つ.嘔吐がある場合は胃チューブにより胃液を持続吸引する.本症は必ずイレウス症状を伴うが,診断には次の臨床症状,血液検査所見及び画像診断が参考になる.
臨床症状:
低栄養・るいそう・下痢・便秘・微熱・血性排液・局所性若しくはびまん性の腹水貯留・腸管ぜん動音低下・腹部における塊状物触知・除水能の低下・腹膜透過性の亢進
血液検査所見:
末梢白血球数の増加・CRP陽性・低アルブミン血症・エリスロポエチン抵抗性貧血・高エンドトキシン血症
画像診断:
X線検査・超音波検査・CT検査
4.
注入液,排液の出納に注意すること.
5.
定期的に血液生化学検査及び血液検査等を実施すること.
副作用
重大な副作用
1. 循環器障害
急激な除水による循環血液量の減少,低血圧,ショック等があらわれることがあるので,このような場合には投与を中止し,輸血,生理食塩液,昇圧剤投与等の適切な処置を行うこと.
2. 高血糖
糖尿病患者では高血糖があらわれることがあるので,インスリンの投与等適切な処置を行うこと.
その他の副作用
本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していないため,発現頻度については文献等を参考にした.
副作用が認められた場合には,投与を中止するなど適切な処置を行うこと.
電解質・酸塩基平衡異常
(頻度不明)
低カリウム血症
低カルシウム血症
低マグネシウム血症
高乳酸血症
代謝性アルカローシス
精神神経系障害
(頻度不明)
牽引痛,筋痙攣,
悪心・嘔吐,食思不振
消化器系障害
(頻度不明)
腹痛,腹部膨満感
下痢,便秘
代謝異常
(頻度不明)
高コレステロール血症
高トリグリセライド血症
低HDLコレステロール血症
代謝異常
(0.1~5%)
血清の副甲状腺ホルモンの上昇
血清のアルカリフォスファターゼの上昇
その他
(頻度不明)
蛋白,アミノ酸及び水溶性ビタミンの著しい喪失
浮腫,発熱,排液困難
除水機能低下,腹水の漏出
(参考)
ペリトリックL135,ペリトリックL250,ペリトリックL400 (承認整理済) について慢性腎不全患者を対象とした治験80例のうち2例(2.5%)に血清アルカリフォスファターゼの上昇が,1例(1.3%)に血清の副甲状腺ホルモンの上昇が認められた.
高齢者への投与
一般に高齢者では生理機能が低下しているので患者の状態を観察し用量設定するなど注意すること.
妊婦,産婦,授乳婦等への投与
妊婦・授乳婦に対する安全性は確立していないので,妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳婦には,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること.
小児等への投与
低出生体重児,新生児,乳児,幼児又は小児に対する安全性は確立していない (使用経験がない).
適用上の注意
1. 適用
本剤はカリウムを含まないため,血清カリウム値が正常あるいは低値の場合,またジギタリス治療中の患者では症状に応じて本剤中のカリウム濃度が1~4mEq/Lになるように補正して使用すること.
2. 調製時
本剤に他の薬剤を混注する際は,2液を混合した後行うこと.
3. 使用時
(1)
下痢,腹痛,悪寒等の予防のため,本剤をあらかじめ体温程度に温めてから注入すること.
(2)
隔壁を開通したものは,速やかに使用すること.
4. 投与経路
本剤は腹膜透析液であるため,静脈内には投与しないこと.
取扱い上の注意
〈使用前の注意〉
●包材に破れが認められる場合は使用しないこと.
●内容液に混濁や浮遊物等の異常が認められる場合は使用しないこと.
●液もれが認められる場合は使用しないこと.
●隔壁に開通が認められる場合は使用しないこと.
●開通操作により液もれが生じた場合には使用しないこと.また,バッグを強くつかんで液がもれる場合にも使用しないこと.
〈ソフトバッグ取扱い上の注意〉
●バッグは軟らかいプラスチック製なので,鋭利なもの等で傷つけないよう取扱いに注意すること.液もれの原因になる.また,冬期等の低温下ではバッグが破損しやすくなるので注意すること.
●透析液の流路をふさぐ場合があるので,クリックチップは確実に切断すること.
●排液が入ったバッグを高所から落とすと破損する場合があるので,取扱いに注意すること.
〈調製時の注意〉
●透析液バッグに薬剤を混注する際には,ゴム栓に付いているフィルムを剥がすこと.
●薬剤の混注操作や排液のサンプリングを行う際には,注射針で混注口内面やバッグを傷つけないよう注意すること.
〈在宅医療において本剤を使用する場合の患者への注意事項〉

●バッグ交換操作はマニュアルに従って行わせること.
●非常事態の処置法は,次の表に従わせること.
〈安定性試験〉
長期保存試験(室温,37カ月)の結果,通常の市場流通下において3年間安定であることが確認された2)~4).
包装

主要文献及び文献請求先
主要文献
1)
野本保夫ほか:硬化性被嚢性腹膜炎 (sclerosing encapsulating peritonitis