適用上の注意
薬剤交付時
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜に刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている)
その他の注意
心筋梗塞後の無症候性心室性期外収縮あるいは非持続型心室頻拍を対象として突然死に関する臨床試験(CAST)が実施された。その結果プラセボ投与群の死亡率に対し、本剤投与群の死亡率が高かったとの報告がある。1)
薬物動態
1. 血中濃度
(1) 血中濃度
健康成人男子12名にフレカイニド酢酸塩50mg,100mgを単回経口投与した場合、消化管からの吸収は良好であり、血漿中濃度は投与後2~3時間で最高値に達し、半減期約11時間で消失する。血漿中濃度はほぼ投与量公比に比例して上昇する。不整脈患者においてもほぼ同様の薬物動態を示す。また、健康成人男子10名にフレカイニド酢酸塩50mg,100mgを1日2回食後に7日間反復投与した際、血漿中濃度は投与後4日目でほぼ定常状態に達し、その血漿中濃度は初回投与時の約2倍を示す。2) 3)

フレカイニド酢酸塩単回経口投与時の血漿中濃度の経時変化
(2) 母乳摂取中止時の血中濃度
発作性上室性頻拍の新生児1名において、フレカイニド酢酸塩25mgを6時間ごとに経口投与(40mg/kg/日注))した際の投与2時間後の血清中濃度を、母乳摂取下及び非摂取下で比較すると、母乳摂取下では990ng/mLであったが、母乳非摂取下では1824ng/mLに上昇したとの報告がある。4)
注)フレカイニド酢酸塩40mg/kg/日の投与は承認外用量である。
(3) TDM
有効血漿中濃度:200~1,000ng/mL
測定頻度:月1回
本薬の代謝に関与する主なP450分子種:CYP2D6
2. 代謝
本薬の主代謝経路はメタ位のO‐脱アルキル化とその代謝物のグルクロン酸抱合である。他にピペリジン環の酸化的ラクタム生成がある。O‐脱アルキル化反応には主としてP450分子種のCYP2D6が関与している。5)
3. 排泄
健康成人に単回経口投与した場合、未変化体の尿中排泄率は24時間以内に投与量の約30%である。2)
健康成人に14C‐フレカイニド酢酸塩を経口投与した場合、投与放射能量の約86%(Flecainideとして約40%)が6日間以内に尿中に、約5%が糞中に排泄される。(外国報告)5)
薬物動態の表
フレカイニド酢酸塩単回経口投与時の薬物動態パラメータ
投与量 |
分布容積
(L/kg) |
CL
(mL/min/kg) |
t1/2
(hr) |
AUC0→∞
(ng・hr/mL) |
Cmax
(ng/mL) |
50mg |
10.1±0.78 |
11.2±1.21 |
10.8±0.96 |
1,253±176.3 |
95±13.5 |
100mg |
9.4±0.34 |
10.2±1.16 |
11.0±0.78 |
2,843±234.6 |
202±9.6 |
(Mean±S. E., n=6)
臨床成績
1.
本剤の発作性心房細動・粗動、心室性期外収縮を対象とした多施設二重盲検比較試験の結果、本剤の有用性が認められた。6) 7)
2.
二重盲検比較試験を含む臨床試験成績は次のとおりであった。
臨床成績の表
疾患名 |
対象症例 |
全般改善度(%):著明改善 |
全般改善度(%):中等度改善以上 |
心室性期外収縮 |
448 |
254(56.7) |
328(73.2) |
心室頻拍 |
59 |
29(49.2) |
45(76.3) |
心室性不整脈と上室性不整脈の合併 |
19 |
11(57.9) |
13(68.4) |
合計 |
526 |
294(55.9) |
386(73.4) |
発作性心房細動・粗動については、携帯型電話伝送心電図を用いて28日間の非再発率を評価した。非再発率はプラセボが3.1%(1/32例)であったのに対し、本剤100mg/日では9.4%(3/32例)、200mg/日では39.4%(13/33例)であった(二重盲検比較試験)。
なお、これまでの臨床試験において本剤が延命率を改善するとの成績がないので、症候性の患者であったとしても軽症の心室性不整脈患者に対しては本剤が一般的に危険であることを考慮すること。
薬効薬理
1. 実験的不整脈に対する作用
(1)
マウス及びイヌにおいて惹起した心室性不整脈(クロロホルム、アドレナリン、ウアバイン、冠動脈結紮)を経口及び静脈内投与で抑制する。8) 9) 10)
(2)
イヌにおいてアコニチンより惹起した心房性不整脈を静脈内投与で抑制する。8) 11)
2. 電気生理学的作用
(1)
イヌのプルキンエ線維及び心室筋において、静止膜電位に影響を与えることなく、最大脱分極速度(Vmax)及び活動電位振幅を減少する。12)
(2)
モルモット