査結果に及ぼす影響
本剤は構造的に成長ホルモンと極めて類似しており、交叉反応が起こるため、通常の測定法による血清中成長ホルモン濃度の測定値が高値を示すことがある。更に、本剤投与中は血清成長ホルモン濃度が上昇することがある。したがって、血清中IGF-I値をもとに本剤の用量調整を行うこと。[「用法・用量に関連する使用上の注意」、「その他の注意」の項参照]
過量投与
海外において過量投与の症例が1例報告されている。
(1) 症状
7日間にわたり本剤80mg(タンパク質部分)/日を投与し、投与中に軽度の無力症と口内乾燥感の程度が悪化した。過量投与の約1週間後に、不眠、疲労の増強、末梢性浮腫、振戦が発現した。
(2) 処置
本剤の過量投与が疑われた場合は、本剤の投与を中止し、IGF-I値が正常範囲の下限値以上に回復するまでは再投与しないこと。
適用上の注意
本剤の使用に際しては、以下の点に注意すること。
(1) アンプルカット時
添付の注射用水のアンプルは、アンプルカット部分をエタノール綿等で清拭してからカットすること。
(2) 調製時
用時、本剤のバイアルに添付の注射用水を1mL加える。バイアルを両手に挟み、薬剤の粉末が溶けるように両手の中でゆっくりと転がして溶解すること(激しく振盪しないこと)。バイアルのキャップのゴムの部分をアルコール綿で清拭し、バイアル内の薬液(1mL)を全てシリンジに吸い上げること。
(3) 投与時
本剤は皮下注射のみに使用すること。
注射部位の有害事象(出血、紅斑、疼痛、腫脹等)が報告されているので、注射部位を上腕、太腿、腹部、臀部等広範囲に求め、順序よく移動し、同一部位に短期間内に繰返し注射しないこと。発赤、湿疹、損傷のある部位は避けること。
(4) 調製後の使用
溶解後はできるだけ速やかに使用すること。
その他の注意
本剤は成長ホルモン受容体拮抗剤であるため、血清中成長ホルモンが高値を示していても、成長ホルモン分泌不全状態を生じる可能性がある。したがって、血清中IGF-I値をもとに本剤の用量調整を行うとともに、成長ホルモン分泌不全状態の臨床徴候及び症状に注意すること。[「用法・用量に関連する使用上の注意」、「臨床検査結果に及ぼす影響」の項参照]
薬物動態
1. 血清中濃度(健康成人)(外国人及び日本人データ)4~6)
健康成人(外国人)にペグビソマント20mg(タンパク質部分)を単回皮下投与後49時間にCmax(1.39μg/mL)を示し、半減期は約6日(138時間)であった。
バイオアベイラビリティは57%であった。
日本人及び外国人の健康成人にペグビソマント1mg(タンパク質部分)/kgを単回皮下投与した場合、それぞれの血清中薬物動態パラメータの平均値は、Cmaxが9.01±1.43及び8.98±2.19μg/mL、Tmaxが76及び60時間、AUCが1,910±410及び1,510±550μg・h/mLであり、同様の値を示した。
2. 排泄(健康成人)(外国人データ)6)
健康成人(外国人)にペグビソマント20mg(タンパク質部分)を単回皮下投与後の未変化体(タンパク質部分)の尿中排泄率は投与量の1%未満であった。
3. 反復投与後定常状態での血清中ペグビソマント及びIGF-I濃度(外国人及び日本人データ)7,8)
外国人先端巨大症患者にペグビソマント10、15又は20mg(タンパク質部分)を1日1回長期投与した後の定常状態における血清中濃度(平均±標準偏差)はそれぞれ9.30±6.30、14.3±7.5及び18.1±10.1μg/mLであり、ほぼ投与量に比例して増加した。また、日本人及び外国人先端巨大症患者にペグビソマントを長期投与した後の血清中ペグビソマント濃度とIGF-I濃度の関係は、ペグビソマント濃度の上昇に伴い、ペグビソマント濃度10μg/mL付近まではIGF-I濃度は大きく減少し、この付近を越えると、緩やかに減少した。
[参考]9)
分布
雌雄ラットに[125I] ペグビソマント3mg(タンパク質部分)/kgを単回皮下投与した後の全身オートラジオグラフィーの結果より、ラットでは[125I] ペグビソマントは血液脳関門を通過しにくいと考えられる。
臨床成績
1. 国内臨床試験
(1) 連日投与試験10)
国内の先端巨大症患者18例を対象とした臨床試験(12週間連日投与)を実施した。被験者は初日40mg(タンパク質部分)、2日目から投与8週後まで10mg(タンパク質部分)を連日投与し、18例中11例は9週目から15mg(タンパク質部分)へ増量した(1日1回投与)。投与後の血清中IGF-I値の変化率は、-54.7±24.72%(平均変化率±標準偏差)であり、投与前と比較し有意に減少した(95%信頼区間-67.02、-42.43)。血清中IGF-I値の正常化率は、44.4%(8/18)であった。指輪サイズ及び臨床症状スコア(軟部組織の肥大、関節痛、頭痛、発汗亢進、疲労感)の合計値においても改善がみられた。
(2) 長期投与試験11)
連日投与試験で本剤を投与された被験者のうち医師により安全性及び有効性が問題ないと判断された被験者(16名)に対し、1日量30mg(タンパク質部分)を上限とする長期投与試験を行った。投与期間の中央値は433.5日(最小値、最大値:92、502)であった。最終観測時点の血清中IGF-I値の変化率は、-66.7±31.19%(平均変化率±標準偏差)であり低下を維持した。血清中IGF-I値の正常化率は81.3%(13/16)であった(投与中止例2例を含む)。指輪サイズ及び臨床症状スコア(軟部組織の肥大、関節痛、頭痛、発汗亢進、疲労感)においても引続き改善がみられた。
2. 海外臨床試験
(1) 連日投与二重盲検試験1)
先端巨大症患者112例を対象とした二重盲検比較試験(12週間連日投与)を実施した。有効性評価対象症例111例において、血清中IGF-I値、IGFBP-3(インスリン様成長因子結合タンパク-3)値は本剤10、15及び20mg(タンパク質部分)投与群で投与前と比較し用量依存的に有意に減少した。一方プラセボ群では投与前と比較しほとんど変動しなかった。また、血清中IGF-I値の正常化率は10mg群54%(14例/26例)、15mg群81%(21例/26例)、20mg群89%(25例/28例)であったのに対し、プラセボ群では10%(3例/31例)であった。指輪サイズは15及び20mg群でプラセボ群に比し有意に減少した。臨床症状スコアの検討では、軟部組織の肥大、発汗亢進が15及び20mg群でプラセボ群に比し有意に改善した。疲労感及び臨床症状スコアの合計では10、