●体組織への分布(参考:ラットでのデータ)2)
14C-ベニジピン塩酸塩1mg/kgをラットに経口投与したところ、消化管内容物を除き、肝臓、腎臓、副腎、顎下腺、肺、下垂体、膵臓の順に移行が認められ、脳、脊髄、精巣への移行は少なかった。
●移行性(参考:ラットでのデータ)3)
1) 胎児への移行性
14C-ベニジピン塩酸塩1mg/kgを妊娠ラットに経口投与したところ、胎児への移行性が認められ、その総量は母体血漿中の1/3以下であった。
2) 母乳中への移行性
14C-ベニジピン塩酸塩1mg/kgを授乳ラットに経口投与したところ、乳汁中濃度が血漿中の濃度とほぼ同様に推移した。
●蛋白結合率
1) in vitro4)
(ヒト血清)
98.46~98.93%
(1~100,000ng/mL 3H-ベニジピン塩酸塩)
2) in vivo5)
(ヒト血漿:英国での試験成績)
75%(14C-ベニジピン塩酸塩8mg経口投与1時間後採血)
76%(14C-ベニジピン塩酸塩8mg経口投与2時間後採血)
3. 代謝
ヒトの血漿中、尿中に検出された代謝物及び動物での代謝研究から、ヒトにおける代謝反応は主として3位側鎖のベンジル基の脱離(N-脱アルキル化)、3位の1-ベンジル-3-ピペリジルエステル及び5位のメチルエステルの加水分解、ジヒドロピリジン環の酸化、2位のメチル基の酸化と考えられている。6)7)
なお、本剤は主としてCYP3A4で代謝される。
4. 排泄(参考:英国での試験成績)5)
西欧健常成人男子5名に14C-ベニジピン塩酸塩8mgを単回経口投与した場合、累積放射能排泄率は投与後48時間までに尿中に投与量の約35%、糞中には約36%が排泄され、投与後120時間では尿中で約36%、糞中で約59%が排泄された。
薬物動態パラメータ
パラメータ Cmax(ng/mL) Tmax(hr) T1/2(hr) AUC0~∞(ng・hr/mL)
投与量2mg 0.55±0.41 1.1±0.5 - 1.04±1.26
投与量4mg 2.25±0.84 0.8±0.3 1.70±0.70 3.94±0.96
投与量8mg 3.89±1.65 0.8±0.3 0.97±0.34 6.70±2.73
(mean±S.D.)
臨床成績
1. 高血圧症8)~12)
本態性高血圧症(軽症~中等症)に対する有効率は84.2%(443/526)であった。また、二重盲検比較試験において本剤の有用性が確認されている。
重症高血圧症に対しては94.4%(34/36)の有効率を示した。
腎実質性高血圧症に対しては82.4%(28/34)の有効率を示した。
(有効率は降圧効果判定の「下降」以上で集計した。)
2. 狭心症13)14)
狭心症に対しては60.8%(110/181)の改善率(改善以上)を示した。
その内訳は労作狭心症59.2%(71/120)、労作・安静狭心症63.9%(39/61)の改善率であった。
また、二重盲検比較試験において本剤の有用性が確認されている。
薬効薬理
1. 作用機序15)16)
本剤は細胞膜の膜電位依存性CaチャネルのDHP結合部位に結合することによって細胞内へのCa流入を抑制し、冠血管や末梢血管を拡張させる。
なお、本剤は細胞膜への移行性が高く、主として細胞膜内を通ってDHP結合部位に結合すると推定されており、更に摘出血管収縮抑制作用及びDHP結合部位親和性等の検討によりDHP結合部位への結合性が強く、また解離速度も非常に遅いことが確認されており、薬物血中濃度とほとんど相関せずに作用の持続性を示す。
2. 薬理作用
(1) 降圧作用17)~19)
本剤は高血圧自然発症ラット、DOCA-食塩高血圧ラット、腎性高血圧イヌに経口投与した場合、作用の発現が緩徐で持続性の降圧作用が認められた。
なお、長期間投与においても耐性は生じなかった。
また、本剤は本態性高血圧症患者に1日1回投与した場合、血圧の日内変動に影響を及ぼさずに24時間にわたり安定した降圧効果を示した。
(2) 抗狭心症作用20)~22)
本剤は実験的狭心症モデル(ラット)及びイヌ冠動脈結紮再灌流による心機能の低下、虚血性心電図変化を有意に改善した。
また、本剤は労作性狭心症患者に経口投与した場合、運動負荷による虚血性変化(心電図ST下降)に対して改善効果を示した。
(3) 腎機能保持作用23)~26)
本剤は腎不全モデル(5/6腎摘)高血圧自然発症ラットに連続経口投与した場合、降圧作用を示すとともに腎機能を改善した。
また、本剤は本態性高血圧症患者に投与した場合、腎血流量の有意な増加が認められた。更に、高血圧を伴った慢性腎不全患者に投与した場合、クレアチニンクリアランス及び尿素窒素クリアランスを有意に増加させ、腎機能保持作用を示した。
有効成分に関する理化学的知見
1. 一般名
ベニジピン塩酸塩 Benidipine Hydrochloride
2. 化学名
3-[(3RS)-1-Benzylpiperidin-3-yl]5-methyl(4RS)-2,6-dimethyl-4-(3-nitrophenyl)-1,4-dihydropyridine-3,5-dicarboxylate monohydrochloride
3. 分子式
C28H31N3O6・HCl=542.02
4. 化学構造式
5. 性状
黄色の結晶性の粉末である。
6. 溶解性
ギ酸に極めて溶けやすく、メタノールにやや溶けやすく、エタノール(99.5)にやや溶けにくく、水にほとんど溶けない。
7. 融点
約200℃(分解)
8. 旋光度
メタノール溶液(1→100)は旋光性を示さない。
9. 分配係数
logP′OCT=3.79(測定法:フラスコシェイキング法 n-オクタノール/pH7.4緩衝溶液)
取扱い上の注意
4mg製剤、8mg製剤(割線入り錠剤)は、錠剤半切機には適用できないことがある。[均等に二分割できない場合がある。]
包装
1.
コニール錠2:[PTP]100錠(10錠×10)
2.
コニール錠2