利尿作用2)
モザバプタン塩酸塩は、覚醒ラット及びイヌにおいて、用量依存的に尿量を増加させ、尿浸透圧を低下させた。覚醒イヌでは、既存の利尿薬であるフロセミドとは異なり、尿中電解質排泄への影響はみられず、自由水クリアランスの上昇が認められた。
(3) 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群モデル動物における作用3)
モザバプタン塩酸塩は、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群モデルラットにおいて、低ナトリウム血症の改善を示した。
2. 作用機序
モザバプタン塩酸塩は、バソプレシンV2-受容体拮抗作用を薬理学的特徴とする薬剤であり、腎臓集合管でのバソプレシンによる水再吸収を阻害することにより、選択的に水を排泄し、電解質排泄の増加を伴わない利尿作用(水利尿作用)を示す。
有効成分に関する理化学的知見
一般名:モザバプタン塩酸塩〔Mozavaptan Hydrochloride (JAN)〕
化学名:N-(4-{[(5RS)-5-(dimethylamino)-2,3,4,5-tetrahydro-1H-benzo[b]azepin-1-yl]carbonyl}phenyl)-2-methylbenzamide monohydrochloride
構造式:
分子式:C27H29N3O2・HCl
分子量:464.00
性 状:白色の結晶性の粉末である。ジメチルスルホキシドに溶けやすく、酢酸(100)及びメタノールにやや溶けやすく、水にやや溶けにくく、エタノール(99.5)に溶けにくく、ヘキサンにほとんど溶けない。本品のメタノール溶液(1→100)は旋光性を示さない。
融点:約264℃(分解)
承認条件
治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性等に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。
包装
フィズリン錠30mg:[SP]1錠
主要文献及び文献請求先
主要文献
1)
中村茂樹ほか:薬理と治療,34(7),827-834,2006
2)
中村茂樹ほか:薬理と治療,34(7),835-845,2006
3)
宮崎俊樹ほか:薬理と治療,34(7),847-854,2006
文献請求先
※大塚製薬株式会社 医薬情報センター
〒108-8242 東京都港区港南2-16-4 品川グランドセントラルタワー
電話 0120-189-840
FAX 03-6717-1414
製造販売業者等の氏名又は名称及び住所
製造販売元
大塚製薬株式会社
東京都千代田区神田司町2-9
その他の説明
〔参考〕
バソプレシン分泌過剰症(SIADH)の診断の手引き注)より抜粋
※I.主症候
※1.脱水の所見を認めない。
※2.倦怠感、食欲低下、意識障害などの低ナトリウム血症の症状を呈することがある。
II.検査所見
1.低ナトリウム血症:血清ナトリウム濃度は135mEq/Lを下回る。
※2.血漿バソプレシン値:血清ナトリウム濃度が135mEq/L未満で、血漿バソプレシン濃度が測定感度以上である。
3.低浸透圧血症:血漿浸透圧は280mOsm/kgを下回る。
4.高張尿:尿浸透圧は、300mOsm/kgを上回る。
5.ナトリウム利尿の持続:尿中ナトリウム濃度は20mEq/L以上である。
6.腎機能正常:血清クレアチニンは1.2mg/dL以下である。
※7.副腎皮質機能正常:早朝空腹時の血清コルチゾールは6μg/dL以上である。
[診断基準]
※確実例 Iの1およびIIの1~7を満たすもの。
[鑑別診断]低ナトリウム血症をきたす次のものを除外する。
1.細胞外液量の過剰な低ナトリウム血症:心不全、肝硬変の腹水貯留時、ネフローゼ症候群
2.ナトリウム漏出が著明な低ナトリウム血症:腎性ナトリウム喪失、下痢、嘔吐
※注)厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 間脳下垂体機能障害に関する調査研究:平成22年度 総括・分担研究報告書;平成23年3月:p158